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【第十四章開始】人の才能が見えるようになりました。~幸運な俺はいい才能を持つみんなと一緒に世界を救う~  作者: 犬型大
第四章

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ゴーレム製作者の望み6

「これはなんだ?」


「ポーション! ケガナオス!」


「ポーション?」


『治療ポーション


 ケルテンが独自配合したポーション。

 残された素材の中でも効果を最大限に発揮できるように開発された。

 怪我を治療し、痛みを和らげてくれるけれどものすごく不味い』


 圭がフィーネの持つ小瓶を受け取って真実の目で見てみた。

 確かにポーションのようである。


「一応いるか? 本当にポーションで効果はあるみたいだけど」


「……もらうよ」


 死にはしなかったけれど未だに重たいダメージがある。

 鈍い痛みも強いので早く治るのならその方がいいに決まっているのでカレンは小瓶を受け取った。


「あっ……でも」


「うええっ! まずぅ!」

 

 小瓶の中身を一気に飲み干したカレンは涙目になって顔をしかめた。

 不味いということを忠告するか迷ったが忠告する前に飲み干してしまった。


 真実の目に偽りなくポーションは不味かったようだ。


「うううう〜いいいい〜! 全然口の中の不味さが消えねぇ!」


「ほれ、私のチョコ食べるかい?」


「うぅぅ……ありがとう」


 夜滝がポケットからチョコを取り出して渡すとすぐさまカレンは口に放り込んだ。

 ゆっくりと口の中で溶かして味をリセットしようとする。


「まじぃ……」


「効果はどうだ?」


「ん〜、まあ効果はありそうだな」


 不味さに隠れていたが鈍い痛みがだいぶマシになっていた。

 もう少し休めば動けそうである。


「それでこれはなんだよ?」


 カレンはフィーネに目を向けた。


「なんだと言われてもな」


「フィーネ」


 圭が少し困った表情を浮かべ、フィーネも答える。


「だからフィーネがなんだか……」


「うーん、そもそもその前の話もなんだか複雑だねぇ。一から整理してしてみようか」


 ケルテンの話を推測を交えながら整理する。


「つまりここはどこかの終末の世界で、ゴーレム製作者は何かと戦うためにゴーレムを作っていた。フィーネもその中の一つだったけれど娘のように愛着が湧いてしまった。そしてゴーレム製作者はフィーネを置いて最後の戦いに行って……帰ってこなかった」


「……マスター」


 夜滝がざっくりまとめた話を聞いてフィーネはうなだれたような体勢を取る。


「その世界がどういうわけか塔の中にあって、たまたま俺たちが見つけて、たまたまフィーネの友達になった?」


「結局わけわかんないな」


「そうだねぇ」


 どこから突っ込んでいけばいいのかも分からない。

 そもそもこの塔の中の世界は何なのか、誰も答えを持っていない。


「滅んだ世界の一部を再現した? だとしたらフィーネの存在はおかしい……滅んだ世界が塔の中に?」


 夜滝もつぶやきながら考えてみるけれど今得られた情報だって少なくて考えるのにも限界がある。


『貢献度


 1位村雨圭』


「また圭さん? しかも1人だけ?」


 カレンの回復を待ちながらもみんなで頭を悩ませているとまた表示が現れた。

 大王ゴブリンの時のようにシークレットクエストを達成した貢献度が表示される。


 今回は特定の相手を倒すクエストではなかった。

 そのためにフィーネを説得した圭のみが貢献度に換算されたようだった。


 光が差してその中に宝箱が現れる。


「……なんだこれ?」


 宝箱の中にはゴーレムの核のような丸い水晶が入っていた。

 ただゴーレムの核よりは少し小さい。


「あれじゃない?」


「あれ?」


「あの録音機ってやつ」


「あー、確かに」


 波瑠が録音機の方を見た。

 録音機の真ん中に嵌め込まれている音声スフィアはちょうど圭が持っている水晶と同じくらいの大きさだった。


 圭は録音機に近づくと録音機に嵌め込まれた音声スフィアを取った。

 思っていたよりも簡単にスポッと取れた。


 そして代わりに手に持った水晶を嵌め込んでみると綺麗に録音機にハマった。

 やはり水晶は音声スフィアで正解だったようだ。


『この音声を聞いているということはフィーネと友達になってくれたということだな。そしてフィーネもそれを受け入れた。きっと良い人なんだろうな』


 圭が録音機に魔力を込めると音声が流れ始めた。

 低くて心地のいいケルテンの声だ。


『フィーネを破壊すれば……もっと良いものが貰えたというのに、奇特な者もいるのだな』


 多分フィーネを倒すという選択もあったのは圭たちもうっすらとは理解していた。

 結果的に倒すことは厳しかったので名前を呼んで友達になることにはなった。


 倒すのと倒さないのでは貰えたものが違うようでもあるのは少し意外であったが後悔はない。


『だがその選択を感謝する。……私に与えられた時間は少ない。早速本題に入ろう。きっとフィーネ、君もそばにいるのだろう。君を残していくことになったことを謝ろう。どうしても君を死なせたくはなかったのだ』


「マスター……」


 フィーネは録音機の側に寄って声を聞いている。


『フィーネ、君を外に連れ出してくれる人を大切な人だと思いなさい。君に色々と教えてくれる先生であり、友であり……新しいマスターだ。

 フィーネと共存する道を選んでくれた優しい人よ。どうかフィーネに色々と教えてやってほしい。賢い子だから何でもできるだろう。戦いも家事も出来るだろう』


 本当に娘に向けてのメッセージのように声は優しい。


『改めてフィーネをよろしく頼む。フィーネ、ありがとう。君のおかげで楽しかったよ。悲しまないでほしい。楽しく生きるんだ、強く生きるんだ。愛する娘よ』


「何かは知らねえが……良い話だな」


 不思議なメッセージ。

 父から子に向けての最後の言葉。


 カレンはケルテンのメッセージに涙を流していた。

 波瑠と夜滝もうるっと来ていた。


 ケルテンの声も染み入るようで圭も少し危なかった。

 事情とかそんなものは一切わからないけれどもただケルテンがフィーネに愛を持っていたのだということだけは分かった。

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