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【第十四章開始】人の才能が見えるようになりました。~幸運な俺はいい才能を持つみんなと一緒に世界を救う~  作者: 犬型大
第四章

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大王ゴブリン戦2

「何か弱点のようなものはないのか……?」


 攻める手立ては頭の中にある。

 けれど出来るだけ一回で終わらせたいので確実なところを狙いたい。


 通常ならば心臓や頭を狙うべきである。

 相手もゴブリンな以上弱点が大きく変わることはないと思うけれど攻めやすい弱点がある可能性もある。


『真実の目が発動しました。

 類い稀なる幸運の効果が発動しました』


「圭!」


「助かったカレン!」


「ぼけっとするな!」


「悪い!」


 圭は大王ゴブリンを良く観察していた。

 やはり狙うのなら頭かなと思っていると視界の端に表示が現れた。


 表示に気を取られて危ないところ、カレンが盾で大王ゴブリンに体当たりして気を逸らしてくれた。


「王冠……」


 表示を手で振り払うようにして消して改めてゴブリンを見ると圭の目には大王ゴブリンの変化が見えていた。

 頭の上に乗っている古びた王冠はただ乗っているだけのように見えるのに激しく動き回っても落ちない不思議な王冠であった。


 今圭の目には王冠が鈍く光って見えていた。

 真実の目が何を見抜いたのか、圭にはなんとなく理解できた。


 弱点を探して大王ゴブリンを観察していた。

 その時に真実の目が反応を示した。


 つまり大王ゴブリンの弱点があの王冠なのではないかと圭は思ったのである。


「狙いは王冠だ!」


 どっちにしろ頭は狙うつもりだった。

 王冠を狙うのも頭を狙うのも大きな違いはない。


「まずは足だ!」


 デカいモンスターを相手にする時、頭など有効打を与えられそうな部位が遠いことも多い。

 そんな時には相手の機動力を奪いつつ頭を近くに下げさせればいい。


 つまりは足を狙うのである。

 これも和輝の教えであって、圭の短い指示でみんなが狙いを理解する。


「波瑠頼むぞ!」


「おっけー!」


 足を狙うのは大王ゴブリンの警戒から外れがちな波瑠に任せる。

 カレンが魔力で挑発してメインで大王ゴブリンを引きつけつつ圭と夜滝で攻撃してさらに波瑠から意識を外させる。


「いくよー!」


 波瑠がスキル風の導きを発動させる。

 静かな部屋の中に風が起こり松明の炎が揺れる。


 波瑠の髪が風でふわりと巻き上がり、ナイフが風に包まれる。

 グッと上半身を捻りながら足に力を蓄える。


 地面を蹴って大王ゴブリンに向かって波瑠が駆け出した。

 まさしく一陣の風になった。

 

 気にしていなかったのか、あるいは大王ゴブリンには反応すらできなかったのか。

 足首の付け根、人でいえばアキレス腱に当たるところを波瑠は一瞬で切り裂いた。


「ナイスだ、波瑠!」


 パワーは多少足りないけれどその分波瑠には恐ろしいほどの鋭さがある。

 急に足を切り裂かれてバランスを崩し、大王ゴブリンが呻き声をあげて倒れた。


「大地の力!」


 けれどこれではまだ倒れただけ。

 カレンが盾を床に叩きつけてスキルを発動させる。


 床が盛り上がり大王ゴブリンの体を拘束する。


「王冠だね?」


 夜滝が杖を振り上げて魔力を集中させる。

 大きな水の塊が細く伸びていき、巨大な水の槍を形作る。


「はあっ!」


 夜滝が杖を振り下ろすと槍が大王ゴブリンの頭を目がけて飛んでいく。

 王冠どころか頭をごと潰せそうな威力がある魔法。


 大王ゴブリンは雄叫びをあげながら拘束の甘かった左腕を振り上げて魔法を殴り飛ばした。

 流石の大王ゴブリンも素手で魔法に対抗することは出来ない。


 魔法によって左腕がズタズタに吹き飛ばされるがなんとか頭に魔法が直撃することだけは防いだ。


「クソッ!」


 痛みで大きな声を上げる大王ゴブリン。

 魔法でトドメを刺すことは失敗したがまだカレンのスキルによる拘束は続いているし早く決着をつけねばならない。


 圭とカレンが大王ゴブリンに向かって走り出した瞬間、大王ゴブリンの目が赤く染まった。


「なっ……!」


 耳をつん裂くような叫び声を上げながら大王ゴブリンが拘束を破壊して立ち上がる。


「カレン!」


 剣を手放したままの大王ゴブリンはカレンを盾ごと殴りつけた。

 大王ゴブリンの拳が潰れるほどの力で殴りつけられた一撃にカレンが勢いよくぶっ飛んでいく。


「圭、前だ!」


 カレンのことも気になるが確認している余裕はない。

 カレンの次は圭に大王ゴブリンが襲いかかる。


 残った右腕をめちゃくちゃに振り回して圭を攻撃する。

 風を切る音だけで耳が切れそうなぐらいで圭はなんとか拳をかわす。


 凶暴化と呼ばれる現象がある。

 追い詰められたモンスターが己の命もかえりみずに限界を超えた力を引き出して戦う最後の足掻きのことである。


「クッ……波瑠、もう一度足を!」


 ただ凶暴化したということは大王ゴブリンが追い詰められたということだ。


「やらなきゃやられる……」


『スキル導く者が発動しました。

 闇を払い、守るべきものを守るため眠っていた力が一時的に解放されます』


 集中力を高める圭の前にまた表示が現れた。

 その瞬間に体が軽くなる。


「いい加減にしてよ!」


 波瑠が先ほど狙ったのとは違う足を切り裂いた。

 しかし凶暴化で痛みを感じなくなっている大王ゴブリンはそれを無視して圭に拳を振り下ろす。


「さっさと倒れてほしいねぇ」


 今度は大きな水の玉。

 拳を振り下ろした体勢の大王ゴブリンに魔法が直撃した。

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