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身勝手な人間

作者: めるむる
掲載日:2026/01/24


友達に彼氏ができたと聞いた時、私はノワを思い出した。

ノワというのは私と小中学校が同じ女の子だ。


彼女がどんな人間なのか、そう問われた際私は真っ先に

「頭がいいけど、人間味が薄い。」

そう答える。

ノワの話は面白く、見た目も綺麗だ。

これだけの要素が並べば彼女がさぞかし異性に人気があっても不思議ではない。

しかし、彼女には変わったところがあった。

例えば、クラスで腫れ物扱いされている人や逆にとても人気がある男子。

ノワはそういう人たちに対して態度を変えない。

片田舎の閉鎖的な小中学校で彼女は異質過ぎたのだ。

多くの人に遠巻きにされていた。

私も元は遠巻きにしていた人間のうちの1人だ。


しかし、転機が訪れた。

中学校の入学式でノワが目の前で倒れた。

その時の私は、ドラマみたいだと心の中で思いながら、「ノワちゃん!ノワちゃん!」と友達ヅラして叫んでいた。

そして面白いことにそれをきっかけに私たちは友達になったのだ。

私はノワに誘われるままソフトテニス部に入った。

初めの頃は彼女とダブルスを組んでいたが、気づいた時には彼女はシングルスで表彰されていた。


「えい!」

「ちょっとー、やめてよ。」

ノワは頭からつま先までびしょ濡れで、一方私はほとんど濡れていなかった。

二人でした真夏日の水遊びも私の楽しい思い出だ。


私は多くの点がノワに劣っていたが、彼女にとっての同性の友達は私だけだろう。

というのは、ノワには仲の良い男友達がいる。

そのうちの1人にネーロがいた。

ネーロは元々私と仲良くなり、その後ノワと仲良くなった。

ノワはよく「ネーロはきっと貴女のことが好きなんじゃないかな」と笑っていた。

「ノワ、こいつだけは絶対ない。」

そう言ってネーロは深いため息をついていた。


中3になって私たちは初めてクラスが別れた。

「ノワ!私、毎日話にいくからね!待っててね!」

「来なくていいよ。貴女はネーロと一緒のクラスなんだから二人で仲良くしとけばいいよ。」

彼女は微笑んでいた。


「私、彼氏できた。」

最後の大会が終わったときノワは言った。

「えっ、誰?私が知ってる人?ノワが人を好きになるなんて!」

自分でもわざとらしいと感じるくらい、ハイテンションで言った。

「ネーロ。」

そう、はにかむ彼女をみて私は。

「えっ、うそー!ネーロなの!?どこが好きなの?」

はしゃいだふりをした。


ノワは全くネーロの話をしなかったが、ネーロは私によくノワの話をした。

その度に私はノワのことをバカだと思った。

なんで、ネーロみたいなやつと付き合ったんだろう。せっかく、綺麗で頭もいいのに。

そもそも、私と仲良くしたこと自体もバカだ。

あの子はあんなに優れているのに、全くもってつり合っていない。


しかし、ノワとネーロはすぐに別れた。たった一ヶ月。中学生であれば当たり前なのかもしれない。

だが、ノワもネーロも互いに付き合う前と全く様子が変わらないのだ。

2人はとても仲の良い友達だ。


「ネーロ!なんでノワと別れたのさ?振られたの?」

「えっー、聞いちゃう?そうだよ、振られた。受験に集中しろって親から言われたらしーよ。」

「けど、まぁ、多分俺に気を遣ってくれたんだろうな。別れても気まずくないように」

ネーロはあっけらかんとそう言った。

あんな優れた子のことは手放していいはずない。

あの子以上の子はこの先の人生出会えるわけないのだ。

けど私はそのことを深くは聞かなかった。

いくら友達だとしてもあのノワのことを理解したいと思うことすら烏滸がましいのだ。


やがて卒業式を迎えた。ノワは私が知る中で最も頭の良い高校を受験した。結果はまだ出ていないらしいが、落ちている訳がない。

卒業式の最中、大半の人間は泣いていた。

しかし、ふと見えたノワの顔に涙はなかった。


卒業式が終わり、ノワのクラスに向かう。

「ノワー!来たよー!」

しかし、そこにノワはいなかった。

急いで校門に向かう。

ノワは両親の間に立って、校門を出ていた。

「ノワっ!!もう帰っちゃうの?もう今日で中学終わりだよ。もう、学校別々になっちゃうんだよ!」

大きな声で叫ぶ。

「うん、帰る。バイバイ。」

私の必死さなんて意に介さずノワは手を振る。

とっても大きく。

にこやかに。

私と会いづらくなることなんて少しも気にしていないみたいに。

少なくとも、そう見えた。


そこで私は気づいた。

いや、気づいていることを自覚してしまった。


『所詮、ノワにとって私は友達ではなかった。』


ノワは、たぶん他人に興味がない。

ネーロに関してさえも。

彼氏などと言ってはいたがノワは一度も彼のことを好きだと言っていない。

大丈夫、ノワはきっとこの学校の誰一人として友達と認識していない。

やっぱりノワは特別だ。


校門に1人残された極ありふれた、その他大勢の私は教室に戻り、同じくその他大勢の友達と一緒に卒業を喜んだ。


今、目の前にいるこの友人を見て思う。

彼氏ができたことを喜ぶ彼女はやはり私と同じ凡人だ。


きっと私はこれから先もノワより浮世離れした人には会えない。

きっと、彼女はこれからも友達一人作らず生きていく。


そう思っていた矢先、スマホが揺れる。

どうやらネーロから写真が送られて来たようだ。

開くとそこには汗に塗れて笑うノワの姿があった。

隣にはどこにでもいそうな女子。

続けてネーロからメッセージが入る。

「高校でのノワ。知り合いから送られて来た。随分楽しそうだよな。俺らの前でこんな顔したことないのに」


突如、私の視界は歪んだ。

こんな平凡な子、ノワにつり合ってない!

私と何が違うの?

そこで私は自分が泣いていることに気づいた。

私がはなから周囲の人間を見下していることに。

そして自分の本当の気持ちにも。


きっと私は、ノワが遠い方が楽だったのだ。

自分の醜さを自覚せずにいれたから。


ねぇ、ノワ。もしかして私の醜さに気づいてたのかな?


私は涙で汚れた画面をスカートで拭いた。


そんなことをしたってスカートは汚れるし、画面も綺麗にならないのに。

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― 新着の感想 ―
スペックの高いノアの唯一の同性の友達というポジションでいたいだけだった。 そんな心を見透かされたと。 個人的には主人公の気持ちもわかる。 人間らしくて自分は好きです。
主人公の、どこかノワを見下しているような、距離を取っているような、傍観しているような語り口の違和感。 ノワはきっとそれに気付いていたのですね… お互いに仲の良いフリをして、お互いを傍観し、利用していた…
主人公が自分を卑下しつつも、ノワを神聖視することで自分も非凡であろうとする。こういう考え方は、だれでもしてしまいそうですね。
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