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ダンジョンブレイクお爺ちゃんズ★  作者: 双葉鳴
五章 お爺ちゃん、ブリーダーを目指す
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ブログ ダンジョン散歩道①

 カネミツ君から頼まれて、情報以外の事柄もブログに書いてみてはどうだという事になった。

 もう十分に名は知られてる一方で、AWOの名前も流出。

 そこで破天荒すぎる印象がつけられてしまっているという。

 汚名を返上するには実際のところこんなことをしてますよ、みたいな言い訳が居るとのこと。


 こんな生い先短い老人のことが気になるなんて若い人は余裕がないね。

 まぁ、私もなんだかんだで忘れっぽいから。

 当時を思い出すいいきっかけになるかも、と筆を取った。



 ◇◇◇



 【ダンジョン散歩道_1】


 こんにちは、筆者の笹井裕次郎です。

 ダンジョンがリアルに侵食してきた昨今、皆さまいかがお過ごしでしょうか?

 私は家族からの支えもあって、ようやく地に足がついたと言ったところですね。


 この度は何やら先駆者と呼ばれて妙な期待をされてる私から、ダンジョンを歩く上でのちょっとしたコツをご教授したいと思います。


 あれは今から二週間前のこと。

 ダンジョンがこの世に現れるきっかけになった事柄でもありますね。

 友人から頼まれてパターゴルフのお付き合いをしていた頃です。


 いかに自分の使っているパターがブランドものであるとを主張してきた相手に気持ちでは負けないぞ、と思ってる時に地震が起きたんですよね。

 立ってられないほどの地震で、芝生にしがみついてやり過ごしたら、なーんか見しらぬ穴ができてたんですよね。

 友人が自慢していたブランド物のゴルフボールをその穴に落として見たのがきっかけ。


 まぁその時は何もせずに帰ったんですけど、翌日その友人からコールがありまして。

 急いでこ来いと言うから顔を洗って歯を磨き、朝食を食べて、シャワーを浴び、ゆっくり外着に着替えて場所に向かったんです。

 遅刻した事に最初は怒ってましたが、それ以上のニュースで怒りは綺麗さっぱり吹き飛びましたよね。

 こりゃあ大変だ、あの人が私にめくじら立てないなんて明日は槍が降るんじゃないか? なんて思っているとおかしなことを言い出したんです。


 ステータスが開ける。

 最初聞いた時は指さして笑いましたよ。

 耄碌したんじゃないかって。いやぁ、こうはなりたくないですよね。

 しかしゲームさながらのステータスが開けてしまった。

 

 きっかけはなんだ?

 話し合ってるうちに、昨日の地震の後に出来た穴ボコだと当たりをつけました。じゃあ潜ってみようか、とも。


 ロッククライミングさながらに降りる事一時間。

 ボールを落としても反応が返ってこない竪穴です。

 自殺行為だと分かっていながらも、心の中から冒険心が溢れてきて止まりませんでした。


 ワクワク、ドキドキ。そう言ったミラクルアドベンチャーに期待する世代柄というのでしょうか。

 私は一般家庭の生まれなので何でもかんでもは体験してませんでしたが、ゲームやコミックでの追求は人一倍する方でした。

 もう絶版して久しいですが、AWOのプレイヤーネームの元になった『少年探偵アキカゼ』の熱狂的なファンである私と友人は、悪に立ち向かう正義のヒーローのつもりで乗り込みましたよ。


 懐中電灯も何もない真っ黒闇に当時はビクビクしながら、それでも光源となるスライム……正式名称はブルーゼリーでしたか。

 不定形なのは全部スライムとします。


 その青いのが湧いて出てきた時は、私は衝撃を受けました。

 だってAWOにそんなモンスター居ませんでしたから。

 類似性があるとすれば胞子種族のショゴスくらいでしょうか。


 私は魔導書_ルルイエ異本の持ち主としてAWOを遊んでたので馴染みの顔なんですよね。友人は自分の奉仕種族なのに冒涜的と喩えてました。

 身内への評価が厳しすぎるんですよねあの人。


 それはさておき、ゲームでもそれなりに戦闘をしてきた私たちな物ですから、スライム程度にビビっていられません。

 スライムをボールに見立ててゴルフクラブをブンブン振り回して討伐。

 最初はうまくいかなかったんですが、熱中していくうちにコツを覚えましてね。


 レベルが上がった時の達成感というか、疲労感に随分とくたびれた気分でいましたよ。皆さんも慣れない暗闇で手こずってると思いますが、私達も手こずりました。あんなの誰だって手こずる。それが正解です。


 正直私がへこたれなかったのって、友人にだけは負けたくないという反発精神だけで無理してただけなんですよね。

 あの人何かにつけて私にドヤ顔してくるので。相手してやってるだけだっていい加減気づいて欲しい物です。これを言ったら機嫌を損ねるので言いませんが、ゲームのことを今でも根に持っているんですよね、あの人。


 閑話休題。


 さて、前置きはこれくらいにしてダンジョンを歩く上でのコツですが、それはあらゆる点をゲーム的に捉えないで全てを疑ってかかる事です。

 例えば光苔。

 私達って、VRでそれを外部要因、背景として認識したらそういう物であると勝手に思い込むじゃないですか?


 あれ、大間違いです。

 レベルが上がるまでは気づきもしなかった仕掛けがあると知ったのはレベルが4以上になってから。

 あの時散らばった体表がアイテムだと気づいた時、ああこれはそういう物なんだと認識した瞬間からダンジョンに試されてる気がしてならなかった。


 何事にもチャレンジ精神で私は挑戦してます。

 ブルーコアを最初口にしたのも私ですし、スライムドリンクだって口にしました。光苔、金塊。

 ドロップした物を何に使えるかの検証だって怠りません。


 まさか光苔が武器のグレードアップに関与する物だと知った時は目から鱗が落ちる思いでした。

 ああ、ここでこうくるのか。

 じゃあこれは? あれは?


 まるでバラバラだったパズルのピースがかちりとハマる感覚。

 一度あの興奮を知ってしまったら止められませんよ。

 もう情報は出てると思いますが、金塊はスキルグレード+です。


 スキルの右についてる英数字を上昇させる効果があるんですね。

 通常武器よりも明らかに攻撃力が増すので上げておくことをお勧めします。


 それとこれももう出てると思いますが、武器グレードを上昇させると壁が掘れます。床も、天井も。


 そう、水晶や宝石の欠片なんかは壁や床、天井から採掘可能です。

 水晶はグレードⅠ以上。

 宝石のかけらはグレードⅢ以上(ここから壁が掘れる)

 黄水晶、紫水晶はグレードⅤ以上(ここからロックスライムの防御貫通)


 こんな感じですね。

 今一番需要が伸びてるのが戦わずともそれなりに貢献できる光苔、水晶採掘くらいでしょうか。

 私達は自業自得で光源潰しをしてましたが、他人のいるところで採掘するのはお勧めしないよ?

 要らぬ誤解を受けるもの。


 自分が稼ぐ為に他人の安全性を削るっていうのは一番愚かしい行為だということを胸に刻んで欲しい。

 チュートリアルはあくまでダンジョンの空気感を掴むための延命措置。

 その上であぐらをかくことは推奨できないな。


 だって、チュートリアル中の警察官の多くが安全神話に過度な期待をかけ過ぎて行方不明になってるんだ。

 じっとしてれば大丈夫なんて保証はどこにもない。


 誰かがやれてるんだから自分も! と思うのは勝手さ。

 正直警察だって手が足りてない所がある。

 探索者なんて仕事は聞こえはいいけど要はいつ死んでもおかしくない危険な場所に身を置く行為。

 お金の為、という気持ちはわからなくもないけど他人を追い落とさないと這い上がれないようではその他人がいなくなった後に困る。

 これを見ている誰か、心当たりがあると思った人は心に刻んで欲しい。


 ダンジョンを決して甘く見ないで。

 多少の安全は考慮されてるけど、いつどんなトラブルが起きるか予想がつかない場所なんだ。

 だから口を酸っぱくして自己責任と警察の人たちは言う。

 ゲーム感覚でこられるのは迷惑だ。


 と、話が逸れたね。


 私としたってどこかの誰かの行動によって新しい発見が出てくるのは大歓迎さ。私のテイムモンスターと全く異なるモンスターが誕生したら触らせてもらいにいくくらいはする。

 けど他人の不幸の上に成り立つビジネスだけは遠慮願いたいね。


 だって知れは回り回って自分の首を絞めるんだ。

 私には愛する家族がいる。

 彼らはもう私の力なんて必要ないくらいに大きくなったけど、私がきっかけで不幸になって欲しくないからね。


 だから他人に迷惑をかけないように心がけてるんだ。




 ◇◇◇



 いい感じに第一歩が踏み出せた。

 しかしこの原稿を見せたカネミツ君が、



「それをあなたが言いますか?」



 だなんて難しい顔をしていた。



「どうした、笹井君。お、例のアレができたんだな、では拝見しよう」


「あ!」



 親友の長井君がカネミツ君から奪い取った原稿に視線を落とした。流し読みしてすぐにプッと吹き出す。



「笹井君、それを君がいうかー?」


「私はなんらおかしなことは書いてないと思うんですがね?」


「この自覚のなさ。父さん、これはもっとはっきり言ってあげたほうがいいと思います。あと黄水晶と紫水晶は非公開データです。あとで削除してください」


「えー?」



 こうして私のブログはカネミツ君の手に渡り、検閲され、なんの面白みもない穴開きばかりの文章に置き換えられた。

 最初の欽治さんの下りは全カット。

 なぜか後半のマナーのお話は私の口調で大幅加筆されていた。


 これじゃあ私が口うるさいだけのお爺さんみたいじゃないの!

 もっとユーモアを出してくれていいのに!

 なんだかなぁと思いつつ、私のブログが世間の注目を浴びた。

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