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ダンジョンブレイクお爺ちゃんズ★  作者: 双葉鳴
四章 お爺ちゃん、町おこしに参加する
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25話

 家に帰り、キャディを椅子に座らせるミッションを終えると、その場で足をワタワタさせるキャディに由香里が声をかける。



「あら、今度は芽が生えたのね。色も緑に変わって脚もすっかり鳥類になっちゃって」


「ペンギンがいたからね。それを参考にした様だ」


「あれ、確か今日は寺井さんのところに行くって言わなかったっけ? あそこは確かオオカミが出るって聞くわ」


「大事な時期だから部外者は門前払いされたよ。私も関係者のつもりでいたのにね」


「きっとお父さんに内緒の企画なのよ。お父さん、それ以上のものすぐ見つけてくるから」



 由香里がキャディを撫でた後、台所へと夕食の支度の続きをしに行った。



「あ、お爺ちゃんおかえり! キャディも色が変わった?」


「くぇ!」


「後で抱っこさせてね!」


「その前に手洗いだ。私もお供しよう」


「もう、お父さんたら。昔の風習を引っ張り出してきちゃって」


「そうかな?」



 昔の、と言われてそうだったかなと眉根を顰める。

 世界にダンジョンが現れて、人々がリアルに適応した。

 様々なウィルスに怯えてきた人類はもういない。

 率先してあたらしい世界に順応しているという。



「でもそれを実行してきて今がある。これを許して仕舞えば際限なく他の要因も認めることになってしまうよ?」



 そう諭すと好きにしたら、と言われたので好きにする。

 孫の美咲と手洗い、うがいを済ませてリビングへ。

 キャディは今日もテレビに夢中だ。

 子供向け番組の醜いアヒルの子のアニメに興味を示している。

 君、アヒルどころじゃないよと突っ込むのは流石に野暮だろう。


 自室に行って着替えてきた孫がキャディに抱きつき、そこで背中からぴょこんと生やした芽を確認する。



「お爺ちゃーん、キャディの背中に何か生えてる!」


「今日生えたんだ。三回目の孵化を終えてね。以前生えてた獣系の足もすっかり変わってしまったよ」


「あ、ほんとだ! 掲示板に載ってた情報と違うねー」



 掲示板、と聞いて今どんな情報が出ているのか気になった。

 私の方でも流したが、世間ではどんな噂に着目してるかさっぱりだったんだよね。



「ふふ、キャディが全国デビューしてる」



 くすくすと笑う孫の様子に、いつ全国デビューしたのか尋ねると。



「これ、お爺ちゃんとキャディだよね?」



 そう言って端末のスクリーンを差し向けた。

 ああ、帰りの電車でやたらキャディを見てたのはこれか。

 珍獣発見! その正体に迫る! だなんてドキュメンタリー風のお題と寄せられたコメントを引用して様々な妄想が掻き立てられている。

 そのうちコメンテーターまで着きそうなその道の自称プロが出張ってきて面白いことになっていた。



「世の中には暇な人がいるもんだね」


「娯楽に飢えてるからだろうね」


「私の時代から見たら今の時代はパラダイスに溢れてるのに?」


「私の時代だと有って当たり前だから、ない状態が考えられないかなー?」



 これが世代の差か、と考えさせられる。



「あ、お義父さんおかえりでしたか。由香里、お土産だ」



 リアルの玄関から秋人君が帰ってくる。

 彼がこっちから帰ってくるのはそう滅多にない。

 第二世代の病弱筆頭がこの世代だからね。うちの娘は適正があったが、秋人君はその兆候が顕著だった。VR世界を一番渇望していたと言っても過言ではない。そんな秋人君がリアルで活動していると知って感慨深い。



「あら、この時期に筍ですか?」



 まだ春先に突入したばかりで筍? いや、時期的に早いが旬ではあるね。しかも水煮になっている。



「例のダンジョンの出土品だ。僕の錬金術で料理しようと買ってきたんだけど、あんまり上手くいかなくてね。きっとこれはこれ以上加工できないと踏んでお土産に持ってきた」


「ここから先は主婦の出番ってわけね?」


「頼めるかい?」


「任せて、久しぶりに一から作ってみるわね」



 今の冷凍食品技術はそこら辺のプロ顔負けの料理がレンジで温めるだけで食べてしまえるからね。だから一から作るのは手間、という理念がこのご時世の総意になりつつある。

 なので一から作るというのは家族からそれなりに腕前を認められてなければ止められるものだが、妻直伝の料理の腕は上達の一方であるとお墨付き。

 今からメニューを作り直しよー、と困った様なそぶりを見せるが、その目だけはワクワクに満ちていた。


 今夜は筍ご飯が食べれるぞ、そう思うと私もワクワクとした気持ちになる。



「私、速度の筍でお願い」


「僕は魔の筍ね」


「任せて。お父さんはどれにする?」



 どれ、と聞かれてまるで知ってて当然でしょみたいな空気に抵抗する様に質問をする。



「ごめん、君たちが一体何について語っているのかわからない。筍は筍でしょ? 何が違うの?」



 何がどう違うの、と尋ねたら「ああ、自分以外の情報には疎いんだった」という顔をされた。酷くない?



「くわー」



 ほら、キャディも酷いって言ってる。

 ちなみにキャディの言ってる言葉はダンジョン以外で聴くことはできないのでそう思ってくれてるといいな、という思い込みだ。

 私のキャディなら、多分庇ってくれる……はず!

 


「だめよー、キャディ。お爺ちゃんを甘やかしちゃ」


「くわー」



 孫の美咲がキャディをギュッと握り、キャディは明日をバタバタさせた。

 可愛い、和む。じゃなくて!



「説明をお願い」


「先ほど秋人さんが言った様に、この筍はプレイヤー、もとい私たちの身体スペックを強化するバフアイテムなの。今はゴールド筍ライセンスを持つAXSHというライバーが一大勢力を持つのよ」


「僕はその公式と協賛して試供品をいくつかもらってきたわけだね」


「協賛というとこっちのアイテムも何個か卸したり?」


「試供品という体でね。ちなみにこれも試供品。一切の手を加えずにここまでの加工はこの真空パックにも別の効果があるんじゃないかと僕は踏んでいます」


「なるほどねぇ、餅は餅屋という事か。それで筍の効能は?」


「一つは力の筍、一つは魔の筍、最後に速度の筍」


「力と速度はわかるけど、魔というのは?」


「手のひらからエネルギー弾を放てる! というのが今最も勢いを増してる勢力ですね」


「効果はわかった。秋人君は手のひらからエネルギー弾を放ちたいのかい?」


「それについての研究を進めています」


「美咲はわかりやすいくらいにVRと同じビルドだねぇ、速度を上げすぎて逆にデメリットにならなきゃいいけど」


「だから私もキャディの様な相棒が欲しいの!」



 つまり今度の休みの日にはエッグダンジョンに連れて行くことが確定した訳か。回転氏にはアカウントバレしてるし、孫も芋蔓式でバレそうだな。



「分かった分かった。では私は……」



 好みの筍をチョイスして、夕食を迎える。

 出てきたのはそれぞれがチョイスした筍ご飯。炊き立ての批判に混ぜるだけ、というお手軽さで今日のメインを飾る。

 おかずは一口サイズの煮込みハンバーグと、グラタンがついた。汁物はコンソメスープ。そこにサラダと完全に洋食なのにご飯だけが和食と浮き立っている。

 後から一品付け足すとこの様な悲劇が起きるのだな、という様相を醸し出していた。


 でもそれはそれとして美味しい。冷凍食品とは偉大なのだ。これは手作りの食品がおちぶれるのもわかるというものだ。妻は悲しがってたけどね。その分、VRで思う様発信してるが。


 食事を終えて、それぞれの体調の変化を見守る。

 私の前で反復横跳びをする孫が「どう、早くなった?」と聞いてくる。

 私とキャディは当たり障りのない返事をして彼女が傷つかない言葉を投げかける。まぁ、食べてすぐに効果が出るもんでもないからね。



「秋人君、どう? エネルギー弾でそう?」


「うんともすんとも言いませんね。試供品一個程度でどうにかなるわけではないのか」


「私もだ」


「お義父さんも魔の筍を選んでたんですね。どうしてまた?」


「壁を掘り出しすぎても芸がないと思ってね。手元から無限に出せるボール状のものを探していた」


「パタークラブのままで戦おうとしないでください! 他にもっと戦い方があるでしょうに」


「これがまた手に馴染むんだからしょうがない。欽治さんに誘われて始めた私だけど、案外性に合ってた様に思う。だからエネルギー弾の方もぜひモノにしたい。こっちの武器は撃ったら打ちっぱなしで緊急時には何もできないからね」


「なるほど、つまりエネルギー弾は緊急回避の為の措置だと?」


「いや、普通に不意打ちを打たれた時の迎撃用。壁を掘らせてもらえない場合を考慮しての第二の武器、切り札かな」



 なんだか秋人君が疲れた様な顔をしてしまった。

 写真も使いたいけどね。どうにも太陽光や電気の系統を受け付けない仕様だからダンジョンで役に立ちそうじゃないんだよ。

 そろそろ割り切って欲しいよね。


 そして次の週末まで暇だ。

 翌日、私は孫や秋人君が夢中になる筍の出土品に興味を惹かれて件のダンジョンへと明日を向けることにした。電車の中で注目を浴びるキャディは、隠すだけ無駄だろうと私の席の横に置いた。

 より注目を浴びたが「逆に可愛いでしょ」と迫ったらドン引きされた。

 このかわいさがわからないなんて可哀想な人たちだ。


 インタビューの様な質問は筍ダンジョンの最寄駅に到着するまで続いた。

 そんなに気になるのなら自分もテイマーになればいいのにね。

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