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骸骨騎士様、只今異世界へお出掛け中  作者: 秤 猿鬼
第五部 新たな大陸
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港街プリマス2

 まさかトマトを求めてやって来た南の大陸でトウガラシを見つける事が出来るとは思っていなかった。トマトは食材としての利用用途が多いが、トウガラシは香辛料としての用途が多い。

 トマトとトウガラシを使った料理と言えば、やはりアラビアータだろうか。

 頭の中に色々とイタリア料理のレシピなどが浮かび、自然とその料理に必要な他の食材の姿を求めて周囲の露店に視線を彷徨わせる。

 そうしていると後ろから付いて来ていたアリアンが悪魔の爪(レッドネイル)と呼ばれるそれを覗き込みながら、僅かに首を傾けた。


「なに? それも買うつもりなの?」


「うむ、まさかここでコレを見つけるとは思っていなかったが、出来れば買い求めたい」


 そう言って返すと、アリアンは徐に露店の店主に視線を向けて、悪魔の爪(レッドネイル)の値段を尋ねた。

 すると先程の狼人族の男と同じような反応を示した。


「ちょっと、残っている量だけでなんでそんな金額になるのよっ!?」


 相手の熊人族の店主が提示した額に噛みつくアリアンに、並んで同意するように首肯したのはチヨメだった。

 自分はと言えば、相手が提示した金貨の枚数に従って思わず財布に手が伸びている所だった。

 しかし、それを目敏く横目で捉えたアリアンに、伸びていた手を払われて失敗する事になる。


「随分とぼったくりの価格ね?」


 相手の店主を詰め寄りながら、アリアンが此方に非難の視線を投げ掛ける。

 その金色の双眸からは、相手の言い値で買うなんてとんでもない──と言わんばかりの力が込められているように見受けられた。

 ちらりと横を見やれば、これにもチヨメは同意するように力強く頷く。

 どうして女性というのは、これほど値段に対してシビアなのだろうか?

 そんな男女の思考差について考察していると、アリアンに詰め寄られていた店主の男が困った様な顔で口を開いた。


「さっきの兄ちゃんにも言ったが、元々取り扱ってる量が少ない上に、その仕入先である虎人族の連中がここ最近姿を見せないから仕入れる事も出来ないんだよ」


 先程と何ら変わる事のない説明を聞き、相手が価格交渉に応じる事の無い事だけは分かった。

 物が乾物なだけに、早々に腐るという事もないのだから、商人的には物好きが高値で買うのをのんびり待っていても問題ないのだろう。

 アリアンもそれを知ってか、難しい顔して口をへの字に曲げている。

 しかしだからと言って相手の言い値で買うのを良しとしないという顔をしているので、このままではいつまで経っても悪魔の爪(レッドネイル)を買い求める事が出来そうにない。

 少し角度を変えて話を振ってみるか。


「では店主殿、この悪魔の爪(レッドネイル)を他に扱っている店は知らんか?」


 こう言った所で、目の前の商人が商売敵を紹介するとは思ってはいない。

 案の定、店主の男は首を横に振って肩を竦めて見せた。


「この悪魔の爪(レッドネイル)は西の虎人族が最近持ち込みだした代物で、ここいらでも取り扱っている店なんて殆どねぇよ。嘘だと思うなら市場を隅から見て回ったらいいさ」


 そう言って腕を組んで鼻息を荒くする店主から視線を外して、隣に立つアリアンへと向ける。

 店主の言葉に同意する様に、アリアンも相槌を打つようにして頷いた。


「あたしも今迄見た事の無い物よ。少なくともカナダの里で見かけた事はないわね……」


「ふむ、ではこの悪魔の爪(レッドネイル)を持ち込むという虎人族に会うには何処へ行けば会えるのだ?」


 市場の中をざっと見回してみても、虎人族と思われる種族は見つけられない。

 とりあえず店主には虎人族と会える場所を教えて貰おうかと話を向けてみるが、店主はそれにも口を噤んで視線を彷徨わせた。

 客が直接、店を跨いで生産者と渡りをつけたいと言えば、渋るのも当然と言えば当然か。

 しかし、何もそれは目の前の店主にだけ答えを求める必要のない話だ。


 少し店主の男を揺さぶってみようかと思っていると、その機先を制するように脇からアリアンが口を挟んだ。


「アーク、そんなの買ってどうする気なの? さっき聞いた話だと死ぬほど辛いんでしょ、それ? クラーケンといい、それといい、なんで変な物ばかりに関心がいくのよ」


 やや呆れた様にするアリアンだったが、その言葉に異議を唱えたのは自分ではなく、チヨメとポンタだった。


「……クラーケンは美味しいです!」「きゅん!」


 蒼く透き通るような瞳を真剣な眼差しにして、小さくもはっきりと力説するチヨメに、頭の上で立ち上がりながら同意の鳴き声を上げる一匹の毛玉。

 少々的を外した援護だったが、自分も一つ頷いて悪魔の爪(レッドネイル)の利用法を語った。


「これとトマトを利用すれば、なかなか美味い物が出来る──と思う。だからせめて、もう少し安く、安定して買い付ける事が出来ればと思ってな」


 そう言って返すと、アリアンが疑わしげに眉を顰める。そうして彼女が口を開くより先に反応したのは店主の方だった。


悪魔の爪(レッドネイル)を料理に使う気なのか!? 確かに虎人族は戦意高揚の際に、これを使って料理するらしいが、ここらじゃあまりそんな使い方する奴はいねぇぞ?」


 そう言って驚く店主に、逆に此方の方が驚いて首を捻る事になる。


「ではこの悪魔の爪(レッドネイル)を料理以外にどうやって使っているのだ?」


 むしろ自分は料理以外の用途の方がすぐに思いつかない。

 その自分の言葉に、アリアンもチヨメも興味があるのか、店主の方へと視線を向けた。


「ここいらじゃ、もっぱら煮出した汁を使って虫除けや、魔獣に対しての目潰しに使ってるな。あとは鼻にそのまま詰めると力が湧くという話も聞いたな」


 確かトウガラシの辛さの素となるカプサイシンには防腐や防虫の効果があったように思うが、最後の鼻に詰めるというのは何だ? (まじな)いの類だろうか?

 しかし、成程。どうやら虎人族は料理に使うようだが、まだこの辺りでは悪魔の爪(レッドネイル)の有効性にあまり注目されていないようだ。


悪魔の爪(レッドネイル)を利用する者が物好きの極一部だけならば、それ程仕入れ元を隠す必要もあるまい。それに虎人族と会いたいというだけならば、他の者に尋ねるだけでも事足りるしな」


 最近虎人族の姿を見掛けなくなったという言には、何処か引っ掛かるものがあるが、上手くすれば悪魔の爪(レッドネイル)を直接虎人族から買い付ける事が出来る。

 そう思って周囲の市場で買い物に来ている他の客へと視線を移した。

 すると、熊人族の店主が後ろ頭を掻きながら、大きく溜め息を吐く。


「ちっ、まぁ確かにそうだけどよ。虎人族が売りに来る品の大半は魔獣の革やら牙が大半だしな。連中の多くはシンガリーカ平原を越えた先、クワナ平原を縄張りにしている。ファブナッハで最も多く連中が出入りする街と言えば、西のドジャス川近くのフェルナンデスだろうな」


 渋々といった感じだったが、店主が虎人族が出入りしているという街の名を口にした。

 自分は南の大陸の地理に疎いので、アリアンへと視線を向けてフェルナンデスなる街の所在について目で尋ねるが、彼女もそれ程地理に明るくないのか、首を横に振ってそれに応えた。


「フェルナンデスはここから乗騎(あし)があれば十日程、歩きなら二十日は確実だ。そんで、ここからそのフェルナンデスまで行く気か?」


 店主の親父が含むような笑みを浮かべるのを、アリアンは黙ってそれを見返す。

 どうやらこの街から随分と距離があるようだ。店主が余裕の笑みを浮かべているのは、それだけ苦労して街へと足を運んでも確実にここより安く買える保証がないのと、その街でも虎人族がいるかどうかも分からないからだろう。


 距離に関しては短距離転移魔法である【次元歩法(ディメンションムーヴ)】があればその距離もだいぶ縮める事は出来る。見通しにもよるが、三日あればフェルナンデスなる街へと移動する事も可能な筈だ。

 そう考えを巡らす自分と視線を交えた彼女は、此方が背負っている荷物へとその視線を移した。


「アーク。確か、あなた荷物の中に魔晶石入れてたわよね?」


 その彼女の質問に、以前地下の大空洞で見つけた魔晶石を幾つか拾って里へと持ち帰った残りがある事を思い出した。それに、あの地下の大空洞は特徴的な風景なので、この南の大陸までの距離が問題なければ、【転移門(ゲート)】を使って今すぐに必要数を集めて来る事も可能だ。

 なので彼女の質問に肯定するように首を縦に振った。


「うむ、確かに手荷物に幾つかと、要り用なら数を用立てる事も出来るが?」


 彼女の質問の意図が掴めないまま問われた事に対して素直に返事をすると、彼女は艶のある唇に笑みをのせて微笑んだ。 

 どうやら考えがあるらしい──。


「付いて来て。アーク。ここまで来たなら少し足を伸ばすのも変わらないでしょ」


 そう言って踵を返すと、アリアンは露店を背に歩き出した。


「あ、おい!」


 店主の親父が立ち去ろうとする彼女に慌てて声を掛けるが、自分は手に持った財布の中から一枚の金貨を取り出してそれを制した。


「すまぬ、店主殿。これで買えるだけの悪魔の爪(レッドネイル)を譲ってくれぬか?」


 それは悪魔の爪(レッドネイル)の味見用の購入と、虎人族の居所に関する情報料といった二つの意味での提示だ。

 店主の男は遠ざかるアリアンの背と、此方の手元にある金貨とを視線を行き来させたが、これ以上交渉の余地はないと見たのか、渋々といった形で金貨一枚を受け取った。

 受け取り時に金貨に描かれた紋様を見て怪訝な顔をされて偽貨かと疑われ、北の大陸で人族が扱っている貨幣だと説明する一幕もあったが、何とか事無きを得て交渉が成立する。

 代わりに渡された悪魔の爪(レッドネイル)は数にして数本といった程度──成程、まとめて買うと感覚が麻痺するが、金貨一枚で換算するとかなりの割高な支払いを求められた事が分かる。

 金貨の両替手数料が含まれていると考えても、手渡された悪魔の爪(レッドネイル)の分量で言えば、スーパーの小袋パック程度の量しかない。

 それが金貨一枚の値段となると、その昔、胡椒と金が同等の重さで取引されたという有名な話を思い出さずにはいられない。


「いや、この分量だと金貨一枚にも足りないだろうな……」


 手の中にある悪魔の爪(レッドネイル)を眺めつつ、それを手元の小袋へと移す。

 先へと歩くアリアンの背にチヨメと一緒に追いつくと、彼女の向かう先について尋ねた。


「何処へ向かっているのだ?」


「こっちに来る前に話したでしょ? 数は少ないながら、この国にはエルフの里と同じ”転移の祠”があるのよ。フェルナンデスという街まで直接飛べるかは分からないけど、街道を行くよりは早いでしょ?」


 そう言ってアリアンが此方に若干呆れたような視線を向けて眉根を寄せる。その隣を行くチヨメも、彼女の言葉にその存在を思い出して手を打った。

 確かにそのような話をしていたな、と自分も以前の会話を思い出すように唸る。


「ふむ、なるほど。では、こちらの国でも”転移の祠”は一般に開放されておるのか」


「里の方は使う前に長老の許可を得る必要があるから、一般に開放されているのはこっちのファブナッハの”転移の祠”の方よ?」


 どうやら里の祠を利用するのは長老の許可が必要だったようだが、アリアンが長老の娘である事もあってか、その辺りはかなり手続きなどが簡略されていたのだろう。

 そうすると一般に開放されているというこちらの”転移の祠”はかなり管理が緩いのか。


 そんな事を思いながら溢れる人並みを掻き分けて一本の大通りへと出た。両脇には三階建て以上の建物が立ち並ぶその通りは多くの人や物が流れる街の目抜き通りのようで、様々な姿をした獣人や珍しい動物などが行き交っていた。

 特に目を引くのが、馬車だろう。否、あれを馬車と言っていいのだろうか?

 荷車を牽いているのは間違いなく馬ではない。

 姿形だけで言えば山羊だろう。二本の大きな巻き角に全身白い毛、しかし顔だけは黒い毛に覆われていて、何処か墨汁に先を浸けた筆のような配色だ。

 しかしその身体の大きさは馬ほどもあり、後ろに牽引された多くの荷物を載せた荷車を難なく牽いている姿が見受けられる。


 そして通りの各所には揃いの制服に袖を通し、剣を腰に差した衛兵らしき獣人が二組、大きな二本脚で立つ体長二メートル程ある巨鳥に騎乗している。頭を持ち上げた高さはかなり高く、その姿は人々で溢れる通りの中でもよく目立つ。羽はやや退化しているのか、腕のような先に小さな羽が折り畳まれるようにして収まっており、全身焦げ茶色の羽毛に頭だけは白く、黄色の嘴が特徴的なその姿は、何処かハクトウワシに似た雰囲気を持っている。


「う~む、何やら見た事のない動物があちこちにおるな」「きゅん!」


「あの大きな鳥のような馬、かなり足が速そうですね」


 自分とポンタ、チヨメがその光景に感想を述べていると、アリアンは通行人の一人を掴まえて何やら道を尋ねていた。


「アーク、チヨメちゃん。早くしないと日が暮れるわよ!」


 そうして目的地の確認を終えたのか、未だ行き交う通りの人々の姿に目を奪われていた此方に先を促すように声を掛けて来た。


 やがて小一時間程歩いただろうか、街の中心近くへとやって来ると、そこには開けた大きな広場が広がっており、その中心に大きな荘厳な建物が聳え立っていた。

 色とりどりの細工模様の施された壁に幾つもの尖塔、どこか中東のモスクを思わせる雰囲気の建物の周りにはぐるりと城壁のようなものが設けられている。その正面には出入りの為の門が置かれ、そこに多くの衛兵らしき者の姿と荷物を抱えた多くの人々の姿があった。


「あれがこの国の”転移の祠”らしいわね」


 アリアンがそう言って門の方へと近づいて行くのを、後ろから遅れないようについて行く。

 目の前に聳えるそれは祠というよりは神殿といった方がいい規模だ。

 その”転移の神殿”を見上げながら門へと近づいていくと、一人の獣人の衛兵がダークエルフのアリアンを物珍し気な視線を向けて声を掛けて来た。


「ここらでダークエルフ族の女性を見るのは珍しいな、転移陣を利用か?」


 その衛兵の質問にアリアンは頷いて返した。


「ええ、フェルナンデスって街に行きたいのだけど、最寄りはあるかしら?」


「西のフェルナンデスか、そこなら直接飛べるが、今日は無理だぞ。今日の転移陣は首都のガラパゴスまでの二本で終わりだ」


 衛兵はそう言って、門の前に並んで検閲のような物を受けている者達の姿を顎で示した。

 彼の話によれば、どうやら利用頻度の多い首都へと飛ぶ転移便(?)は定期で出ているようだが、その他地方都市へと向かう便は一定数が確保されるまで転移陣を開かないそうだ。

 それにしても、首都の名がガラパゴスとは、進化論関係なのだろうか。


「おまえ達三人を入れて定数を超えたから、明日はフェルナンデスへの転移を告知する事になる。よって転移陣の開通はその次の日、今から二日後になる。それで良ければ名簿に記載して、転移陣利用料の半額を前払いだ」


 それにアリアンは首肯して応えた。

 提示された金額は金貨の枚数からしてかなりの額だ。しかも運び込む荷物の量によっても金額が跳ね上がっていくようで、おいそれと流通に使えるような代物ではない。

 昭和初期の海外渡航費用額を提示されている気分だ。


「支払いは魔石の類でも構わないって聞いたのだけど?」


「あぁ、なら門前横の詰所で魔石の鑑定をしているから、そっちで勘定して貰いな」


 衛兵の男は門横にある詰所を示すと、また持ち場へと戻って行った。

 彼の指示した先の詰所では、こちらが提出した魔晶石の鑑定をして、その価値で転移陣の利用料金を算出するような仕組みらしく、幸いに持ち込んだ魔晶石のみで渡航費用が賄えると言われた。

 ただ魔晶石の場合は鑑定後に料金分の全額分を供出してから、半額分だけお金で払い戻されるという事だったので、それではついでとばかりに手持ちの魔晶石やら魔石を全部荷物袋から取り出し、査定して換金して貰う事にした。

 そして転移陣の利用の際に提示するという木製の割符も渡された。旅券のような物なのだろう。


「これでこの国での路銀も暫くはなんとかなるだろう……」


 手元にあった革袋の一つに、先程受け取った魔晶石の代金と人数分の旅券を入れてから、後ろについていたアリアンとチヨメを振り返る。


「とりあえずフェルナンデスへと向かう転移陣の告知が明日の正午らしいから、それまではこの街で足止めね。まずは何処かに宿を見つけないと」


 アリアンは広場の周囲に広がる街並みを眺めながら、今後の予定を口にして腕を組む。

 その隣ではチヨメが僅かにそわそわとした様子で立っていた。


「どうしたのだ、チヨメ殿?」


「あ、いえ。噂に聞いた虎人族に会えるかも、と思いまして。聞いた話に拠ると、虎人族は特に武勇に優れた一族だとか。北の方では見かけた事がないので、実は少し楽しみだったりするのです」


 と、少し少年が憧れの存在を語るような面持ちで、チヨメが僅かに頬を緩めた。

 その様子を眺めながら、彼女の傍に立って剥き出しの筋肉を晒している巨漢を想像して、何やら何処かで見た既視感を覚えて眉間に皺を寄せる。


「あの店主殿の話に拠れば、最近はめっきり姿を見せなくなっているという話だが……チヨメ殿の願いが叶うとよいな。我も悪魔の爪(レッドネイル)を直接買い付ける為には会っておきたいゆえな」


 そう言って笑うと、アリアンが何かに気付いたかのような顔で此方を指差した。


「そう言えばアーク、あの吹っかけてきた露店で悪魔の爪(レッドネイル)買ったでしょ? これからその悪魔の爪(レッドネイル)を卸しに来る虎人族に会いに行くって言ったのに」


 大きな胸を組んだ腕で押し上げながら、アリアンは何やら不満そうに口を尖らせる。

 先に立って行ったので気付いていないと思っていたのだが、やはり周囲の気配を察するのが得意なのは彼女が優秀な戦士だからなのだろう。


「あれは味見用に少量買ったのみであるよ。この街で逗留するならば丁度良い、市場で必要な材料を集めて悪魔の爪(レッドネイル)を使った料理を試そうと思うのだ」


 そう言って拳を握ると、アリアンとチヨメが此方を見上げて意外そうな顔をした。


「アーク、あなた料理なんて出来るの?」


 彼女のその質問は至極尤もな話だ。

 自分もこちらの世界へと来てから、自分で料理らしい料理は作っていなかった。しかし、長年独り暮らしをしていればある程度は作れる──それに、料理をするのは割と好きな方でもあった。


「ふふふ、ならば見せて進ぜよう。我が料理の腕を!」


 久しぶりの自分での料理だ、とりあえずは悪魔の爪(レッドネイル)とトマトを使ったアラビアータを作ろう。ニンニクと玉ねぎは以前人族の街の市場でもそれらしき物を見た覚えがあるから、この辺りでも入手する事は出来る筈だ。


「きゅん! きゅん!」


 頭の上ではそんな此方の様子を察してか、ポンタが大きな尻尾を振って嬉しそうに鳴いた。

 さすがにポンタに悪魔の爪(レッドネイル)は刺激が強いだろうから、悪魔の爪(レッドネイル)を抜いて作った物を出すとするか。

書籍版のⅣ巻が発売となりました。

先に活動報告やツイッターでも上げましたが、今回は「ガイコツ書店員本田さん」という漫画を描かれている著者の本田さんから推薦帯を頂きました。

本田さんとポンタのコラボイラストが目印ですので、書店にお立ち寄りの際は是非探してみて下さい(*'ω'*)


※「ガイコツ書店員本田さん」は書店員の日常を描く、お仕事エッセイ風漫画です。

興味のある方はpixivの方でも公開されているので覗いてみて下さい^^

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