表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/18

第13話 早くも、新たなステータス項目の恩恵を受けちゃえばよくない?



「お疲れさん。……大丈夫か?」


 

 西園寺が落ち着いたところで、手の紐を解きにかかる。



「ありがとう。……うん、全然大丈夫だよ」


 

 拘束がなくなり、西園寺はゆっくりと手首の感触を確かめていた。

  

       

「……そっか、そりゃよかった」


 

 正に直前まで、ゴブリンの欲望むき出しな性的視線にさらされていたのである。

 しかし西園寺がそれを引きずったり、気にしているような感じは全く見受けられなかった。

 

 今の短いやり取りだけで。

 むしろ芯の強さというか、心の成長みたいなものを感じる。 



「――さっきの言葉、凄く頼もしくて、凄く嬉しかった。とっても怖かったはずなのに、雨咲君が傍にいてくれるって思うだけで、それを乗り越える勇気が湧いてきたっていうのかな? ……だからありがとう、雨咲君」


 

 照れ臭そうにはにかみながらも。

 西園寺はとても真っすぐに言葉を伝えてきた。

   


「うぃ~……【調教ツリー】に、ちゃんと〈調教〉の枝が増えてたぞ」 

  


 それがとても気恥ずかしく。

 何でもないことだと返すように、早々とミッション成功の報酬へと話題を移した。


 しゃがんで。

 いつも通り、紙に【調教ツリー】の枝を書き写し、西園寺へと見せる。

    


「わっ、本当!? ……お~凄い凄い! 〈基礎〉と〈ジョブ〉に続いて3つ目の枝だね雨咲君!!」



 西園寺もそれに乗っかってはくれたが、肩に手とあごを乗せてくるのは聞いてない。


 あっ、ちょっ、近い近い近い。

 みつです。


 良い香りに、何ならちょっとエッチな匂いまで漂わせてくるざい

 および童貞を無自覚誘惑たぶらかしざいで現行犯逮捕。

 俺の脳内で無期懲役(ちょうえき)の刑を言い渡す!

 


「……そうだな」



 紙は渡すって。

 だから、真横から顔を覗き込ませて来ないでください!

 

 距離感バグってませんか西園寺さん?

 むしろそっちの方が心配になってくるわ。



「“調教Lv.”ってあるね。これは何なのかな?」



 このままでは、西園寺の声もいやらしく聞こえるざいで再逮捕しなければならなくなる。

 凶悪犯罪者に更生の機会を与えるためにも、そっと立ち上がって【調教ツリー】を確認した。

 

  

[調教ツリー 従者:西園寺耀] 



“〈調教〉:調教Lv.”

 ステータスに、調教Lv.の項目が解放される。

 レベルが高いほど、調教スキルや調教ミッションなどで得られる恩恵が増えるようになる。


 保有調教ポイント:100

 必要調教ポイント:0


  

 ●〈調教〉―【調教Lv.】



 ― ― ― ― ―

  


「――おっ? この【調教Lv.】っての、“必要調教ポイント:0”ってなってるぞ!?」



【調教Lv.】の説明文よりも、そちらの方に驚いてしまう。

 


「えっ!? ってことは、今すぐにでも獲得できちゃうってことだよね!?」



 西園寺もすぐにそれが意味することを理解し、感動と驚きの混じったような声を上げている。

 


「――雨咲先生。私、自分が怖いの。どんどん強くなっていくのが、自分じゃなくなっていく気がして。……先生だけは、どんな私になっても味方でいてくれるよね?」


 

 今回は先生設定らしい。

 茶目っ気を効かせたような西園寺の軽い調子に、思わず優しい笑みがこぼれそうになる。

 

 ……だがすまない、西園寺君。 

西園寺さいおんじ耀ひかり 陽キャ化け物計画”の真の黒幕は他でもない――私なのだよ。 

 

 計画通り。

 ニチャリ。

   


「当たり前じゃないか。どんな生徒でも、見捨てず導く。それが俺、熱血教師“雨咲あめざき颯翔はやと”の信条だ! ――天才と美少女こそ、冒険者学校へ行け!!」


「ねっ、熱血教師? 雨咲君が!? ふふっ、ふふふっ……おかしい、おかしいよぉ~っ」 



 何か凄いバカウケしてる。


 あっれぇ~。

 そんなお腹抱えて声引きつらせて涙にじむほど、俺が熱血キャラっておかしかったですかねぇ?

 

 ……まあ西園寺が楽しんでくれてるんなら良いけどさ。


 

◆ ◆ ◆ ◆


   

「じゃあ【調教Lv.】、解放するぞ?」    



 ひとしきり会話で和んだ後。

 早速お待ちかねの【調教ツリー】解放へ。

 

 

「うん。お願いします」



 西園寺も準備が整ったと示すように、そっと目を閉じた。

 それを確認し、西園寺の【調教ツリー】画面を操作。


 先ほども見た通り。

 やはり【調教Lv.】解放に、調教ポイントは必要なかった。

 

 特別な【調教ミッション】をクリアしたご褒美みたいなもんなんだろう。

 そう推測し、【調教Lv.】を解放する。



「あっ――」



 ――直後、西園寺の周りに、魔力の鎖が出現する。



 両腕は頭上、両足は地にい付けられるように。

 西園寺の四肢はそうして、瞬く間に鎖で絡めとられていった。


 身動きが封じられた西園寺は、表情に羞恥心が出るのを何とか堪えようとしている。

  

 眉を寄せ頬を赤らめ、少し困ったような顔。

 見ている側には、とても魅惑的な異性の表情に映った。

 

 

「えっ――」 

 

 

 ――そして空中に、今度は帯状の布が現れた。    

  


 黒色をしたそれは鈍い輝きを放ち、ユラユラと浮遊する。


 あらかじめ行き先が定まっていたかのように。

 動きを封じられた西園寺へ目掛けて、ゆっくりと漂っていった。

 


「あっ、んっ、何、これ――」



 西園寺がそれに気づき、戸惑う様子を見せる。

 だが黒い布はそれに全く構うことなく、ジワジワと距離を縮めた。

     

 そして西園寺の顔付近までやってくると、ピタリとその両目を覆ったのである。

  


「えっ!? あっ、これ、目隠し!? うぅっ~真っ暗になっちゃって、全然、見えないよぉ」



 西園寺が少し焦ったような声を出す。

 その間にも黒い眼帯には、ピンク色をした怪しく光る紋様が浮かび上がっていた。

 

 神官をイメージした白い服を着る、清楚で穢れない西園寺が。

 身動きを封じられ。

 その上、黒く怪しい魔道具のような布で目隠しをされている。


 その姿はとても蠱惑こわく的で、異性の本能を嫌でも刺激した。


 

「あっ、んんっ、んぁ――」


 

 さらに、ふさがれてしまった視界に息苦しさを覚えたみたいに。

 西園寺は、あえぐような短い呼吸を繰り返す。


 その音もまるで異性の劣情を誘うようで、とても誘惑的だった。

     

  

 ――そこにようやく、黒色をした錠前と鍵が出現する。


 

 対応した穴に刺さった鍵はカチャリと音を鳴らし、90度だけ回った。



「あっ――」



 すると最初に。

 視界を覆っていた黒い眼帯が真っ二つに切られたように、中央からスパンと分離した。


 そして連鎖するようにして。

 西園寺の身体を縛り付けていた魔力鎖も、ボロボロと崩れ去っていったのだった。



◆ ◆ ◆ ◆


  

[調教ツリー 従者:西園寺耀] 



 保有調教ポイント:100


  

 ●〈調教〉―調教Lv.○―調教(バンド)×2



 ― ― ― ― ―


[ステータス]

●基礎情報


 名前:西園寺さいおんじ耀ひかり

 年齢:17歳 

 性別:女性

 ジョブ:神官Lv.1 

 支配関係:主人 雨咲あめざき颯翔はやと

  ―保有調教ポイント:100  


●調教Lv.1 New!

     



【調教ツリー】、そしてステータス共に【調教Lv.】が反映されていた。

 当たり前だがLv.1からスタートするようだ。


   

「はぁ、はぁ……」


 

 西園寺は未だ呼吸も少し荒く、顔を火照らせていた。

 じんわりと汗もかいているようで、どこかなまめかしい。

 


「あ、あはは。結局は目隠しも体験しちゃうことになったね~」


 

 西園寺は恥ずかし気で、どこか自虐的な感じだった。


 そうやって何でもないように振る舞っていることが。

 かえって、さっきの刺激的な姿の印象を少しでも薄めようとしているのだと思えてしまう。

 

 それはつまり。

 西園寺が“目隠し+拘束された自分の姿”に羞恥心を抱いているということで。

 それはやっぱり、こう、グッと来ちゃうわけですよ……。


 AHジャパンは、この活動を支援しています!!

  

 

「そうだなぁ~。でも、ちゃんと【調教Lv.】は追加されてるから。それはよかったな」


 

 だがもちろん表に出さず、何でもないように返した。


 

「そっか! なら……うん。これからも【調教ツリー】、よろしくお願いします、雨咲君」



 西園寺も。


 俺があまり気にしてないとわかったからか、それ以上は深追いしてこず。

【調教ツリー】を今後も使って欲しいという意思表示で、自分も気にしてないんだと伝えてきた。

 

 

「ん~了解」 



 軽い返事の仕方で。

 できるだけ何でもない出来事だったんだというシグナルを送る。

 

 そうして西園寺が落ち着くまでの間、自分の確認時間にあてることに。



 


[ステータス]

●基礎情報


 名前:雨咲あめざき颯翔はやと

 年齢:17歳 

 性別:男性

 ジョブ:ヒロインテイマーLv.2 


         


●スキル

【調教】

  ■調教スキル     

  【テイム】

  【調教ツリー】

  【従者果実】 

  【調教才能Lv.1】 New!! 


【マジックショット】 





「あれ? 何か【調教】スキルが増えてる……」 

   


【調教才能Lv.1】というスキルを目にするも、身に覚えがなくて首をひねる。

 




[調教スキル 能力UP画面]



“調教スキル:調教才能Lv.1 ※取得済み”

 調教Lv.を持つ従者に対してのみ発動する。

 調教ツリーを解放する際、必要な調教ポイントが50ポイント減る。



 保有調教ポイント:100


 必要調教ポイント:――

 

 

 指導 負荷 …… 調教ツリー○……【調教才能Lv.1】○

 


― ― ― ― ― 



 今回の特別な【調教ミッション】で、西園寺が〈調教〉の枝を得た。

【調教才能Lv.1】はつまりそれに対応する、俺用の報酬ってことだろう。

  

 出所不明じゃないとわかってホッとする。

 そうすると、効果の方に意識が向いた。



「これ……もしかして――」



 頭の中で反射的に計算した通りなら。


 西園寺に。

 特別な【調教ミッション】を頑張った、さらなるご褒美をあげられるかもしれない。

 

 


[調教ツリー 従者:西園寺耀] 

“〈ジョブ〉:ヒール”

 対象者を治癒する魔法を使えるようになる。 


 保有調教ポイント:100

 必要調教ポイント:100(※調教才能Lv.1:150-50) 


 ●〈ジョブ〉―強撃

     

       ―マジックショット ○

       |

        ―ジョブ 魔法使い

        

        ―ジョブ 神官 ○

        |

         ―【ヒール】 

   

  

 ●〈調教〉―調教レベル○―調教(ベルト)×2



 ― ― ― ― ―



「――西園寺。早速【調教Lv.1】の恩恵を体験できると言ったら、どうする?」

  

「えっと~?」


 

 意味深な笑みを浮かべた俺に、西園寺はどういうことかと先を促すような顔を返してきた。

 


「……なんと【ヒール】に必要な調教ポイント。50ポイント減っちゃいました!」


「えっ? ――嘘っ!? 本当に、雨咲君!?」

   


 しゃがみ休んでいた西園寺も、凄い勢いで立ち上がる。

 興奮した様子を隠そうともせず、キラキラした目で顔を近づけてきた。


 うわっ、近い可愛い良い匂い可愛い可愛いぃぃ!! 

 


「本当。アメザキ、嘘つかない」



 想像上の宇宙人のような片言、そしてドヤ顔で応じる。


 西園寺はそこにはツッコまず。

 むしろ、より尊敬したような眼差しになっていた。



「おお~! 雨咲君、あなたが神でしたか!!」

  


 神官ジョブということもあり。

 西園寺が両手を合わせて祈るようなポーズをすると、とても様になっていた。


 あ~。

 俺が神だったのか~。

  


「で、どうする? 今すぐにでも【ヒール】解放できちゃうけど」


「もちろん! お願いします雨咲君――いいえ、ゴッド雨咲様!」



 先生からゴッドに昇進させてもらった。

 なんと早く壮大な出世だろう。

 本当にノリ良いなぁ~西園寺は。 

 



[ステータス]

●基礎情報


 名前:西園寺さいおんじ耀ひかり

 年齢:17歳 

 性別:女性

 ジョブ:神官Lv.1

 支配関係:主人 雨咲あめざき颯翔はやと

  ―保有調教ポイント:0  


●能力値


 Lv.3 

 HP:11/11(8+3) 

 MP:6/7(4+3) 

 筋力:6(3+3)

 耐久:6(3+3) 

 魔力:5(2+3) 

 魔耐:7(4+3) 

 敏捷:7(4+3) 

 器用:9(6+3) 


※(+3)=【全能力値+3】

 


●スキル


【ホーリーショットLv.1】 

【ヒールLv.1】 New!!





 その後。


 本日2度目の、ちょっぴりエッチな解放過程を経て。

 西園寺は遂に、【ヒール】の魔法を習得したのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ