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曹操が死んだ日、俺は『曹昂』になった。─『宛城の戦い』で死んだのは曹昂じゃなくて曹操だったけど、これから俺はどう生き残れば良いですか?─  作者: 久保カズヤ@試験に出る三国志
第三章 曹昂の嫁取り

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46話 昔の結婚


「お相手は、袁本初殿がご長女である瑛様です。ご年齢は殿のお一つ上です」


「うーん……」


「殿、あの、もう少し良い顔をなされませ。お相手の関係者に見られれば、怒られますぞ」


 今回の婚約に関して、荀彧から仲人に推挙されたのがこの「楊彪」であった。

 弘農郡の楊氏といえば、袁紹や袁術に代表される汝南袁氏にも並ぶ超名門である。


 そんな名門の現当主である楊彪も、これまで朝廷の重職を歴任してきた人物だ。

 ただ、曹操による許昌への遷都や、献帝の傀儡化に難色を示したことで罪に問われていた。


 おまけに楊彪の妻は、袁術の叔母でもあったので、更に曹操の癪に触ったのだろう。

 まぁ、この婚姻が決まったことで楊彪の罪も不問となって、仲人として抜擢しないといけなくなったんだが。


「もう少しさぁ、期限を伸ばしたりできないかなぁ」


「本初殿は要求を上回る兵糧の供出を確約され、婚礼に関する費用を百万銭、更に結納の品まで準備しております」


「え、ひゃ、百万? もはや王侯の格式じゃないか」


「漢王朝を牽引する両家の婚姻です。本来であれば婿側はこれを上回る費用を負担するのが通例ですが」


「無理を言わないでくれよ。戦や諸将への褒賞で家にはほとんど残ってない」


「分かっております。いくらかは私や荀彧殿がお貸ししますので。せめて見劣りしないくらいは揃えるべきかと」


「なんとも情けない話だな」


 そもそもそんだけ金があれば、さっさと兵糧を買い漁って徐州を攻めてるわい。

 いや、農地の開拓や民に支給する農具なんかに使うほうが先か。


 それにしてもこの乱世の中、それも全国が飢饉に喘いでいる中、ポンと大金を出せるのか。

 勢力の差が大きすぎるなこれは。こんなの相手にどう渡り合っていきゃいいんだよ。


「何というか、荀彧殿とも最近この件について色々と話しますが、こと婚姻の話になると殿は弱られますな」


「いや、だって、相手は袁紹の娘だよ?」


「果断に董承を斬り、劉備に隙を見せず、陳宮を捕らえ、自ら城を防衛し、呂布を退けた。その殿が、婚姻の話になると途端に対応が後手に回る。らしくないと、皆が申しております」


 現代日本に生きていたころの俺は、そういった浮いた経験を一切持っていなかった。

 それに曹昂も儒教の価値観に則って嫁を取っていない。男は三十で結婚が理想ってやつ。


 また、曹操の死に方があれだ。張繍の叔父の未亡人に手を出して、その隙を突かれて戦死。

 息子として、後継者として、こればっかりはどうにも擁護がしづらいというのもある。


 恐らくだがそういった心理的な要因が、俺から婚姻を無意識に遠ざけているんだろう。

 英雄色を好むとは言うが、正直さぁ、女にうつつ抜かして失敗を犯す偉人がなんと多いことか。


「はぁ……気が進まん。それで、他にやることは?」


「納采の品は既に私の手からお渡ししました。次は婚姻を占い、その結果を祖廟とお相手にご報告。そして結納の品を交わし、婚姻の日時を決め、花嫁を出迎える運びとなります」


「俺が、冀州まで迎えに行くのか」


「それが理想ですが、お立場のこともあります。無理にとは申しません。仲人として私がお出迎えに上がります」


「そうか、まぁ、そうだなぁ」


「いつまでうだうだしておるのですか。決まったことなのですから、腰を据えてください」


 名門生まれという出自がそうさせるのか、楊彪は正論をまっすぐにぶつけてくる。

 悪い人じゃないんだが、曹操が苦手になるっていう理由も、何となくだが分かる気がした。


 とりあえず、婚姻の面倒事は聞くだけ聞いといて、丁沖さんに押し付けよう。

 人間ね、不得手なことを無理にやるもんじゃないと思うんだ!


「花嫁を迎えた後も、歓待の宴席を開くためその手配もせねばなりません。加えて殿はお世継ぎも考えねばなりませんので、房中術に長けた仙人の教えも受けたほうがよろしいでしょう。そうですね、他には易の様式ですが」


「もういい! 頭が痛くなる! 細かい話は丁沖に通してくれ!」


「ごく一般的な儀礼の段取りの話ですぞ!? 特段、難しい話はしておりません!」


「分かったから、だがお前の話だけを聞いてるわけにはいかんのだ。ほら、はやく行ってくれ!」


「業務が終わり次第、儀礼の諸々の取り決めを行うべく、再度お伺いいたします。この楊彪、与えられた任務を中途半端に終わらせるわけにはいきませんので」


 完全に駄々をこねる子供と、それをしかりつける先生だ。

 名門の家柄になればなるほど、君主に対して堂々とした物言いをするんだよなぁ。


 そりゃあ、臣下としてはうっとおしいことこの上ない。

 楊彪はまだ出来る人間だから良いけどさぁ。人の上に立つ気苦労は凄まじい。


 きびきびと、礼儀正しく、楊彪は俺の居室から出ていった。

 楊彪の置いていった山積みの書簡の数々。一つを手に取って開き、めまいがしてまた閉じる。


「こんなんで本当に、結婚とか……」


 しかも相手は、あの袁紹だ。絶対にただでは済まない。

 どこまで耐えれば俺の人生は、軌道に乗ることが出来るんだろうなぁ……



・楊彪

超名門である功農楊氏の出身。三公を務めたこともある重鎮。楊脩の父。

袁術の叔母が妻であった為か、めちゃんこ曹操に嫌われてた。

曹操は楊脩を処刑すると、ウキウキで楊彪の様子を見に行った。流石、曹丕の父親。


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