表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
曹操が死んだ日、俺は『曹昂』になった。─『宛城の戦い』で死んだのは曹昂じゃなくて曹操だったけど、これから俺はどう生き残れば良いですか?─  作者: 久保カズヤ@試験に出る三国志
第三章 曹昂の嫁取り

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/115

43話 功労者


 まだ残る反抗勢力を掃討しながら、軍吏の報告をまとめ、将兵の軍功を記録していく。

 まぁ、これが実に大変だ。官僚は直接戦わなくていいから楽だなんて言う軍人も居るが、んなこたぁない。


 どの兵士がどれほどの軍功を上げ、逆にどの兵士がどれほどの軍律を破ったのか。

 そういう報告書を一つ一つ精査して、寸分の狂いもなく賞与を決めていかないといけない。


 史上初めて中華を統一した秦王朝の軍規は特に厳しく、戦場から後退した歩数までも精査したらしい。

 これだけ厳格に統制されていたからこそ、史上初の中華統一を成すことが出来たという話もある。


 ここを疎かにすると将兵からの信望が失われ、もう協力してくれなくなる。だから気を抜けない。

 命を懸けて戦ったのに、それが正しく報われなければ誰だって失望するからな。


「殿、こちらが将校以上の功労者達の名簿と賞与内容になります。ご査収ください」


「これを俺が代表して、陛下に上奏するのね?」


「そうですね。こちらを確認の上、尚書台に提出いただき、尚書台から陛下に渡されます」


「ややこしいな……」


「もう慣れてください」


 兗州の統括を夏侯惇、于禁、荀攸、董昭に預け、俺はそのまま曹仁と共に許昌へ帰還。

 本当だったらちょっと屋敷に戻ってゆっくりしたかったけど、すぐに荀彧から呼び出しをくらう。


 もうそこから何日も宮廷で仕事に追われる日々であり、休む暇もない。

 おまけにそういえば、今の俺は「司法長官」的な立場だから、そっちの仕事も山積みらしい。


「えっと、それで、今回の戦役での筆頭功労者は……え、劉延将軍なの?」


「はい。内応があったとはいえ、たった千の兵で数万の敵軍を大破し、おまけに陳宮と侯成を捕縛。後世に渡って語り継がれるべき軍功に御座います」


「あ、まぁ、いや、そうなるのかぁ、確かになぁ」


 本当は調略を行った董昭の功績なのだが、まぁ、ヤツは法に触るようなことも裏でやっている。

 それに董昭自身が、表彰されるのを頑なに拒むのだ。恐らくだがこれは荀彧への配慮だろう。


 そうなると今回の戦で、実際に兵を率いた劉延将軍の手柄が第一になるわけだ。

 いやぁ、そうなったかぁ。史実での記述は少ない人だけど、こういう転び方もあるのかぁ。


「殿の後ろ盾となり得る将軍です。兵や民の信望も厚い方ですので、これより先はもっと大きな任務を担っていただいてもよろしいでしょう。洛陽の管轄とか」


「うん? 劉延将軍が、後ろ盾?」


「……将軍は沛国劉氏のご出身。殿の母君のご一族ですよ?」


「え」


「まぁ、劉夫人は若くして亡くなられましたし、将軍も外にずっと居た人なので記憶に薄いのは仕方ないですが。くれぐれも、軽々しい態度を取ってはなりませんよ」


 だって史実での劉夫人とか劉延の記述って少ないんだもん。確かに姓は同じだけど。

 まさかそんな繋がりがあったとは……となると俺にとってめちゃくちゃ重要な人じゃない?


「それで、此度の戦はどうでしたか」


「苦しかった。俺のせいで、失わなくても良い忠臣を失った」


「朱霊将軍ですね。彼ほど、忠烈という言葉が似合う将も居ないでしょう」


「他にも多くの将兵を失った。確かに俺は呂布を退けたが、ただ、幸運だったんだ」


「勝利を前にして浮かれてはいないのですね。それなら言うことは御座いません」


「俺も父上や呂布みたいに、戦況を変えれる軍才があれば」


「人には得意と不得意があります。それに君主の成すべきは戦ではありません」


「そうだな」


 荀彧も荀彧なりに俺を慰めようとしてくれてるのかな?

 いや、違うわコイツ。どんどん俺の机の上に書類を山のように積んでいきやがる。


 頼むからもう仕事を増やしてほしくない俺と、やるべきことをやってほしい荀彧。

 もはや朝廷の日常行事となった喧嘩を繰り広げている中で、俺の居室に従者が一人入ってくる。


「あ、あの、車騎将軍に客人で御座います」


「うん? 誰だ? 荀彧、訪問の予定とかあった?」


「いえ、聞いていませんが。それで、その客人とは誰ですか?」


「丁宮様です」


 元は政界の大物だが、今や隠居生活をしている大叔父殿がなぜ仕事場に?

 ここが気軽に訪れられるような場所でないことくらい、百も承知のような人なんだが。


 とりあえず客間に通してもらい、たまたま居合わせたわけだし、荀彧も連れていく。

 すると杖を片手に、少し乱れた息をしながら大叔父殿は椅子に腰を掛けていた。



「どうなされたのですか、かように慌てて。用であれば従者にお伝えいただければよかったものを」


「え、えらいことになったんだ。儂一人の手には負えんと思うてだな。そなたは、確か、荀彧殿じゃな。丁度良かった、一緒に聞いてくれい」


「お初にお目にかかります」


「それで大叔父殿、要件とは」


「戦の前に、言っておいたな。お前の嫁を探すと」


「あぁ……」


 もう俺も二十五だ。とっくに結婚適齢期に入っているし、何なら遅いくらいだ。

 すっかり忘れていたが、どうしたものか。うーん、興味ないんだよなぁ。


「そんな中で儂のところに、お前に娘を嫁がせたいと、今しがた使者を送ってきた者がおるのだ」


「その差出人は、誰なのですか」



「──袁本初。河北を統べし、大将軍、その人じゃ」




・褒賞

一般兵士は戦功があれば、食料の支給や、爵位の昇進といった恩恵が受けられた。

爵位が上がれば田畑が増えたり、税が減ったり、罰則が軽くなったりする。

でも一般兵はその恩恵もほぼ体感できないレベル。なのに軍規は厳しい。世知辛いね。


---------------------------------------------------------


面白いと思っていただけましたら、レビュー、ブクマ、評価など、よろしくお願いします。

評価は広告の下の「☆☆☆☆☆」を押せば出来るらしいです(*'ω'*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 爵位って三国志モノの中ではあんま語られないよね。 霊帝がいろいろ言われる売官だってほんとは売位売官なのにね。 官職には限りがあるけど爵位だったら幾らでも売れるやでって。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ