第6話 学校の出来事
和也は唯仲間を守る為に必死になっていた。
あまり経験が無い友達が消える事はある種の恐怖を持っていた。
その人が消えるという瞬間が『あの子』と被る。
第6話 学校の出来事
暗い影が広がる部屋、
そこにあるのは長い机に、
左右に3つずつ置かれた椅子に5人の黒い影。
光りは長机に置いてある一本の蝋燭だけであった。
右端上に座る男が話し始めた。
「さて、どういう事ですか?黒のジョーカー?」
礼儀正しい澄んだ声が鋭く左端下に座っている男に言った。
「そうだ!!G・W 00210が捕まるような事があれば、
貴様が破壊する事になっていただろう!!!」
右端下で座っていた男が力強く立ち上がると、
左端下の男に向かって叫んだ。
左端の男はめんどくさそうに耳を塞いでいた。
「クラブ、うるさーい」
左真ん中に座っていた女性が不満そうに怒鳴った男に言った。
「何だと!!ハートォ!!!」
クラブと呼ばれた男が女性に怒鳴った。
「黒のジョーカーが怖がるでしょォ?ネェ?」
そう言うと黒のジョーカーと呼ばれた男に擦り寄った。
黒のジョーカーはうっとおしそうに女性を無視する。
「キサマァ !!ハート!!潰すぞォ・・・」
クラブの声にドスが聴いた瞬間、クラブの周囲が揺らいだ。
「アラァ・・・あたしと殺る気ィ?一生奴隷にしてやるわぁ・・・」
ハートの周囲の空気も薄く揺らいだ。
「Nonsense…(ナンセンス…)〔馬鹿馬鹿しい…〕」
右端の真ん中の男があきれた様に漏らす。
「まぁまぁ、落ち着きなさい二人とも、」
最初に話出した男が二人を止めに入った。
「ッチ・・・スペードに感謝しな・・・」
吐き捨てるように言うとクラブはすぐに席に戻った。
「フン、命拾いしたねェ…」
ハートも同じ様に吐き捨てるように言うとすぐに座った。
「さて・・・説明して頂けますか?白のジョーカー・・・?」
スペードが目を光らせて黒のジョーカーを睨んだ。
「・・・」
一瞬だけ間を空けて黒のジョーカーは口を開いた。
「中々面白い物を見つけてね、
見つかりそうになったから退場させてもらったよ」
「そんなのいいわけだ!!」
クラブがまた叫ぶ。
「待ちなさい、結果的に上手くいったじゃないですか」
「しかし!!」
クラブは下がらない。
「少し黙りなさい!!」
スペードが声を荒げてクラブを睨んだ。
「ぐぅ・・・」
「ぷぷ、ダサ・・・」
ハートが軽く笑った。
クラブが即座にハートを睨んだ。
「で、面白い物とは?」
スペードがすぐに話を戻す。
「純白の頭に白い眼・・・和也という名前の男」
右端の真ん中の男が名前を聴いた瞬間、ピクッと体を揺らした。
(和也・・・どこかで聞いたような・・・)
スペードが不思議そうに頭をひねった。
「それよりも次の任務も僕にやらせてくれ」
黒のジョーカーが嬉しそうにクラブに言った。
「貴様!!次は俺の仕事のはずだ!!!」
クラブが黒のジョーカーに怒鳴り散らした。
「君・・・僕に指図するなよ、殺すよ?」
黒のジョーカーの漆黒の目が残酷なまでに光っていた。
「な!?」
クラブの背中に気持ち悪い肌寒さが伝った。
(何だコイツ!?)
「いいかげんにしないか!!!」
スペードが大声で怒鳴った。
「解った、次の任務は黒のジョーカーに任そう、」
「そうでなくちゃ」
「なんだと!?」
「いいですね?クラブ?」
スペードはチラッとクラブを見た。
ギリッと歯を噛み締め、クラブは力いっぱい拳を丸めた。
「ああ・・・」
「それじゃあ言ってくるよ」
そう言うと、立ち上がりドアに向かって歩き出した。
ギィィィ…
バタン、
ドアが悲鳴を上げながら閉まった。
クラブがおもいっきり机を叩いた。
ドォン!!!!
「あの野郎、新入りのクセに…」
「でも腕は確かです、予定どうりG・W00210が毒を入れてくれたんです、
これで簡単に『神風』の妹を殺す事が出来るでしょう」
右端の真ん中の男はジッと押し黙っていた。
(和也・・・)
男の脳裏には純白白眼の男、和也が写っていた。
が、
今とは違い少し若く、獰猛な鋭い目を光らせていた。
真っ暗の薄暗い居間に電話の音が響いていた。
プルルルル!!プルルルル!!プルルルル!!
ガチャッ、
ドアの開く音と同時に和也が居間に入ってきた。
「・・・」
眠そうな目で電話を見るとため息を付いた。
プル!
和也が受話器を取ると電話の音が止まった。
「もしもし・・・」
和也の眠たそうな声が受話器に漏れた。
『・・・君は和也君かい?』
和也には聞き覚えのない声、
「・・・ああ」
『私の名前は風間、君に頼みがある』
(風間・・・?ああ、水音の兄貴か)
和也が不信そうに声を出す。
「で、水音の兄貴が何の様だ」
『水音が狙われている、水音の護衛をして頂きたい』
「どういう事だ・・・?」
和也の顔色は変わらない。
『解らないが、情報屋から手に入れた情報だ、
私は仕事が忙しくてね、そこで水音の護衛を頼みたい』
和也の右眉が少し動いた。
「妹より仕事が大切なのか?」
和也の声に薄らと怒りが見える。
『・・・完全な情報じゃない』
電話の先で一瞬、戸惑った様な声が出た。
「それでも水音を守るのが優先だろう?」
ふつふつと和也に怒りが芽生えてきた。
「貴様は水音が大切じゃないのか!!!」
和也の怒りの声が暗い居間に響いた。
『すまない・・・頼んだぞ・・・』
ガチャッ、ッツーッツーッツー
和也は受話器を睨むと、電話に投げつけた。
ガッシャーン!!!
(・・・水音は絶対に俺が守る、もう同じお気持ちはしたくない!!)
和也の脳裏にストレートの赤髪の女性が笑いかけていた。
ットットットット
誰かが階段を下りてくる音が聞こえた。
「!!」
「なんがぁ〜?うるせぇぞぉ〜」
寝ぼけた声で現れたのは怜次だった。
「和也?何やってんだ?」
怜次が不思議そうに和也を見た。
「い、嫌、何でもない」
そう言うと和也は慌てて階段の方へ向かった。
(この事は俺で片付けよう、あいつを巻き込みたくない)
「・・・・和也?」
怜次は逃げるように去っていった和也を、
もう一度、不思議そうに見た。
夜は明け、
「うー!ン!」
朝日の帯びる部屋で、パジャマ姿の女性、水音が伸びをしていた。
「いい天気だ」
ジッと窓の外の光に目をやった。
ズキン…
「・・・?」
前日の依頼で負った傷、黒猫にひっかかれた傷が包帯の下で疼いた。
「う・・・あ」
一瞬の眩暈と共に水音が膝から崩れた。
ドクン、ドクン
包帯の下からでも傷口が脈打ているのが解った。
「何・・・こ・・・れ?」
水音はゆっくりと倒れていった。
「くぁ〜眠ぃ、」
欠伸と共に部屋を出た怜次は水音の部屋の前で妙な物を見た。
「・・・?」
それは毛布に包まれた和也がジッと水音の部屋のドアで座っていた。
「何やってんだ?お前」
怜次が近づいて和也に話しかけた。
「・・・む、もう朝か」
和也はそう言うと、毛布を剥いで立ち上がった。
「何で刀持ってんだ?」
怜次が眠そうな目を擦りながら言う。
「水音はまだ起きてないのか?」
和也はジッと扉を見つめた。
「無視かよ・・・」
「おい、水音?」
和也がドアに不安そうに声を掛けた。
ガチャッ
ギィィ〜〜
開く音と、ドアが小さな悲鳴を漏らす。
「ふぁい?」
水音がボサボサ頭のまま、眠そうな声を出した。
和也はほっとした様に胸を撫で下ろす。
ドタドタドタ
3人の乱暴な階段を下りる足音が聞こえた。
居間には食卓がすでに並べられていた。
「いや〜今日起きたら窓際のすぐ横で寝てたんだぁ〜
変な物だねぇ〜」
食卓に付いた水音が眠そうな声で言った。
「あー俺もあるよ、起きたら屋根の上に居たんだよ!アレはビビったな〜」
「怜次君・・・道に迷う夢見たでしょ・・・」
水音は眠そうな目でチラッと怜次を見た。
「ウェ!?何で知ってんの!?エスパー!?」
「怜次君知ってる人なら大体解るよ、ねぇ和也、」
そう言って水音は和也を見ると、和也はジッと水音の方を見ていた。
「・・・?何か付いてる?」
水音が右手で顔を触ってみる。
「あ?ああ、嫌、なんでもない」
そう言うとすぐに顔を伏せた。
「・・・・?」
水音が頭を傾げる。
「・・・」
怜次が不安そうに和也を見た。
「ヤッホー!皆!」
玄関に出た少し先にブンブンと手を振った女性が見えた。。
「おぅ・・・」
眠そうな声
「ヤッホー、美奈!」
朝から元気な声
「美奈ちゃん!!」
突然の嬉しそうな声が水音と和也の後ろから聞こえた。
「美奈!!ちゅわーーん!!」
怜次がら抱きつこうと一直線に走り出した。
ドドドドドドドド!!!
すさまじい勢いで美奈に向かって両手を広げた。
「・・・フゥ」
美奈は一息付くと右手を後ろにおもいっきり振りかぶった。
「せーのぉ!!」
声と共に右手を一気に前に出した。
ドガァァァ!!
怜次の顔面に美奈の鉄建がめり込む。
「ぐへぁ!?」
怜次がもの凄い勢いで吹っ飛び、寮の近くの壁にぶつかった。
ドギャァ!!
「美奈ー今日も見事な一発だねー!」
水音が怜次を無視して美奈に近寄った。
和也は無言で粉砕した壁の所で倒れている怜次に近づくと、しゃがんで言った。
「お前さ・・・そろそろ諦めろよ・・・」
「ッフ、毎日殴られようが、俺の愛は不滅さ」
怜次は和也が見た中で一番いい顔をした。
「・・・・・・アホ」
そう言うと和也はサッサと先を歩き始めた。
「ああ!ちょ!待って!瓦礫で足抜けな…いや本当待って!!ちょ!!和也サァァァァァァァン!!!!」
怜次の叫び声が木霊する。
●学校●
「おー!和也、おはよー!」
二人は部屋に入るとすぐにさなぎと出会った。
「で、何で二人揃って血流してんの?」
さなぎは顔面から血を流している怜次と頭から血を流している和也を不信そうに見た。
「美奈ちゃんに殴られた!!」
怜次がビッと親指を突き立てた。
「・・・轢かれた」
怜次は無表情に答える。
「君達、本当に毎日がループしてるんやな・・・」
さなぎが呆れたように言った。
「おー怜次、和也、おはよう相変わらず血流してるな」
今井が当たり前の様に2人に言った。
「相変わらずとは何だ・・・」
和也が血を流したまま今井に言った。
「だってそうだろーが」
ガラッ
その時ドアが開き、きよ先生が入ってきた。
「はーい!席につかないと撃つよー!」
マシンガンを片手にきよ先生が物騒な事を言う。
「うわ!やっべ!」
怜次はそう言うと慌てて机に向かった。
「おう、今井、後で聞きたいことあるんだけどいいか?」
和也がドクドクと血を流しながら言った。
「?、OK、今は席に付けよ、殺されんぞ」
「はい、和也、遅い」
きよ先生がマシンガンを構えた。
ドガガガガガ!!
「あ、すんません」
マシンガンを食らった和也は体中から血を流しながら席に付いた。
(何であんだけ血流して死なないんだろう・・・・)
クラスの8割以上がそう思った。
●休み時間●
今井と和也は屋上に来ていた。
「で?話って?」
今井が屋上のポールにもたれて腕組みをしていた。
「ああ・・・実は・・・」
和也の言葉に今井が割って入った。
「おっと、告白はゴメンだぜ、俺にそんな趣味は無ェ」
「情報で聞きたい事がある」
和也は完全にスルーした。
「・・・・・たまにはボケに回ってみたい俺を察してくれよ」
今井が悲しそうな声を上げた。
「で?何の情報だ?情報によっちゃ金取るからな」
「水音の情報で何かないか?」
「・・・個人的情報があるのはAクラス以上の請負人だけと考えていい、
残念ながら水音ちゃんの情報は無い」
「そう・・・か・・・」
和也は肩を落とした。
「・・・情報屋っつーのはこういう詳細しないのが普通だが・・・水音ちゃんに何かあったのか?」
今井はジッと和也の目を見た。
「いや・・・別に」
和也は自分でも目が泳いでいるのが解った。
「ッハ嘘が下手だな、無理に詳細はしないさ、
でもな、何かあったら言えよ」
今井はニッと笑った。
「ああ、ありがとう」
「であるからこの代名詞は…」
厳しそうな若い男が机の間を歩きながら教科書を片手に朗読をしている。
最初に和也にこの学校の説明をした男だ。
男はある机の前で立ち止まった。
「・・・」
男のこめかみに青筋が浮いている。
机に突っ伏して軽い寝息をたてている白髪頭。
「ぅ!わ…おい!起きろよ!和也」
隣りの席の怜次が慌てて和也を小声で起こそうとした。
男はゆっくりと教科書の角を和也の脳天にロックオン。
そのまま思いっきり振りかぶった。
ドォォン!!
クラスの隣り、水音のクラスから銃撃音が響いた。
「水音ェ!!」
和也は椅子から飛び起きた。
ガターン
その拍子に椅子が飛ぶ。
同時に教科書と和也の頭の上下のクロスカウンター、
男の顔面に、立ち上がった和也の脳天がアッパー気味にクリーンヒット。
「ぐへぁ!?」
男の短いうめき声、これだけでもかなりのダメージを食らったのが、鼻から出る鮮血で伺える。
それを無視してすぐに和也はドアに向かって走り出した。
廊下に出るとすぐに隣りのクラスの前まで来るとドアにおもいっきり力を加える。
ガターン!!
大きなドアの開く音と共に部屋に飛び込む。
「水音!!!」
「・・・ん?」
和也が不思議そうにクラス中を見渡す。
特に変わった事のないクラス、変わった所と言えば
全員が呆然と飛び込んできた和也を見ていた。
「へ?は?和也??」
窓際の真ん中あたりにいる水音が目を丸くして和也を見ていた。
「何やってんのよアンタ」
教壇に立っているのはきよ先生、片手に教科書、片手に拳銃、
拳銃の口先から煙が出ている所を見ると、銃撃音はきよ先生の拳銃からのようだ。
「ああ・・・あーあー」
頭を掻きながら目がみるみると眠そうな顔になる。
「邪魔したな」
ビッと右手を上げてすぐにクラスを出た。
「はい、さいなら」
きよ先生も同じように右手をビッと上げた。
「????」
水音は訳がわからないという顔で去って行ったドアを見ていた。
クラスの殆どが水音と同じ行為をしていた。
ガラッ
無表情でクラスに戻ってきた和也。
「おかえり!」
ドア際近くのさなぎのあっけらかんとした無頓着な声。
「ただいま」
無表情の同じような無頓着な声。
「ん?」
和也が遠くで座っている怜次と今井に気付いた。
二人はとても慌てた様に両手をあげたりさげたり、している。
(何やってんだ・・・?)
怜次が右手の人差し指で後ろを何度も指差した。
(後ろ?)
和也はゆっくりと後ろを振り向いた。
後ろには、すざまじい男の顔があった。
右手に丸めた教科書で肩をポンポンと叩いていた。
先ほどの国語教師だ。
「・・・・・」
一瞬沈黙が流れる。
「あー・・・すんません」
悪気も無さそうに右手で頭を掻きながら愛嬌一つ作らすに言った。
「廊下に立ってろォォォォォ!!!」
すざまじい怒鳴り声が和也の耳を劈く。
「先生、大変です、どこら辺の廊下で立てばいいかわかりません」←火に油
「〜〜〜〜〜!!」←声にならない叫び。
●休み時間●
「いっつ・・・あのヤローおもいっきり殴りやがって・・・」
和也は痛そうに右頬を摩った。
「いや、アレはお前が悪い」
怜次が即座に突っ込む。
「ああ、お前が悪い」
今井も追い討ちをかける。
「そうか?」
和也が首を傾げる
「そこで、そうか?って思える和也が凄いわー」
さなぎが関心した様に頷く。
「・・・そうか?」
もう一度首をかしげる。
(馬鹿だ)
(馬鹿だ)
(アホや)
3人が完全に同じ事を考えていた。
●3時間目 体育●
体育は2組と1組との合同授業、和也達は2組のクラスで体操服に着替えていた。
和也はフラフラと体を揺らしながら、上半身の服を脱いでいた。
「かーずや!!」
ドン!!
さなぎが思いっきり背中を叩いた。
背中にもの凄い激痛と重みが重なった。
和也は体にみをまかせ、見事に吹っ飛び、机の中に飛び込んだ。
ガシャーン!!
「ほわぁぁぁあ!?」
さなぎが驚きの声を上げて慌てて和也に近づく。
「ご!ごめん!そんな吹っ飛ぶとは思わんかったんや!!」
「大丈夫だ・・・気にするな」
無表情のまま和也は立ち上がった。
「!?」
立ち上がると同時に足がふらついた。
「わ!と!」
さなぎが慌てて和也を支える。
「悪い・・・」
和也の顔にはあまり生気を感じられない。
「和也・・・疲れてるんか?」
さなぎが心配そうに言った。
「問題ない・・・」
声にも若干、力が無い。
「和也・・・どうしたんや?
めっちゃ神経質になっとんで?
授業終わったらすぐに隣りのクラスに行くし・・・相談乗るで?」
さなぎが更に心配そうに和也を見た。
「いや、大丈夫だ・・・」
そう言うとすぐにクラスを出た。
「・・・・」
さなぎが困ったような心配した様な複雑な顔で和也を見送った。
(出来るだけ水音の近くに居なければ・・・いつ狙われるか解らない・・・)
和也が水音の居るクラスのドアに手を掛けた。
ガラッ
ドアの開く音と共に男にとってのパラダイスが和也の目の前に広がった。
「ん?」
和也の目にはまだ着替えている途中の女性の方々が見て取れた。
「キ・・・」
「キャァァァァァァァァァァ」
耳を劈くような叫び声にとっさに和也は目と耳を塞ぐ。
「ァァァァァァ・・・・」
声がゆっくりと小さくなっていった。
(・・・?)
和也が不思議そうに目と耳を空けた。
目の前には『能力者』の女性達がすざまじい顔で睨んでいた。
ある女性は手に木刀、ある女性は手に電気ノコギリ、ある女性は両手を頭上に上げ、黒い禍々しい球体が浮いている。
「ここまで堂々とよく入ってこれるよ」
その先頭にツインテールの燃える様な赤髪をした女性が立っていた。
「お、水音」
和也は無頓着な顔で軽く下着姿の水音に挨拶した。
水音は顔は笑っているが青筋が弱冠浮いている、禍々しいオーラが見える。
「ざ・ん・げ・は?」
水音は微笑みながら言った。
「あー・・・」
頭を掻いていた時、偶然、水音の胸が目に入った。
この時、ある女の子の言葉が和也の頭に浮かんだ。
『女の人がキゲン悪いときは誉めてあげるのがいいよ』
(うむ・・・何やらキゲンが良くない様だ、ここはキゲンを損なわせない様にせねば)
そう考えた和也は顔を上げて水音を見た。
「?」
水音の顔はまだ笑っているがすざまじく恐ろしい。
「胸小さいな」
誉め言葉と認識したのか、完全に勘違いしている。
「!!!」
水音が顔を真っ赤に染めた後頭の中で何かが切れる音がした。
プッツン…
「和也の馬鹿ァァァァァァァァ!!!!」
水音の掛け声と共に女性達が和也に一斉に襲い掛かった。
「ぬぉぁぁ!?」
―10分後
「・・・・」
教室の前に人の形では無い、見るに耐えない物がグロテスクに転がっていた。
「なぁ、これ何かな・・・」
怜次は目の前の見るに耐えない物体を指差した。
「和也ー…だった物体?」
「今井、嫌な事言わんといてや」
さなぎも顔を青くして言った。
「ゲッホゲッホ!イッテェ・・・流石に死ぬと思ったな」
和也は血だらけのまま、よろよろと立ち上がった。
「・・・・・」
(ええ〜立ち上がっちゃったよこの人〜てか人間?)
怜次が頭の中で突っ込んだ。
「イテテ…」
流石に痛そうに顔をしかめている。
(なんでコイツ生きてんだろ)
(なんでコイツ生きてんだろ)
(なんでコイツ生きれんのやろ)
本日2度目のシンクロとなった。
●SHR後、●
廊下を水音が歩いていると、前方に和也が壁にもたれ掛かっていた。
「水音!」
和也は水音に気が付くと水音に駆け寄った。
「・・・・」
水音は和也を無視してサッサと先に進んだ。
「おい、水音」
和也も慌てて水音の後を追う。
「・・・・」
水音は足を速めた。
「ちょっと待てよ」
和也も同時に足を速める。
水音は更に足を速めた。
「おい!待てって!」
和也が水音の腕を取ると無理矢理せき止めた。
「何よ!!」
水音がキッと和也を睨んだ。
「いいか、帰るときは絶対に俺を呼べよ」
和也が真剣な面持ちで言った。
「何で!?和也今日おかしいって解ってる!?
授業中乱入したり、私の後ろを何度も付いてきたり!!私の保護者にでもなったつもり!?
馬鹿にしないで!!!」
水音は手を思いっきり払い除けると廊下を走り出した。
その後ろ姿をジッと見つめている和也の目はうっすらと悲しそうな目の色をしていた。
「ほんっと!!和也って最低!!あんな人だなんて思わなかったよ!!!」
学校の帰り道、憤慨した様子の水音は美奈と並んで歩いていた。
「アッハッハ!!水音が怒るのもなぁ〜んか久々だな〜」
美奈は楽しそうに笑った。
「え?そっかな?」
「そうだよ、前は怒っても感情に出す事は無かったからね〜」
美奈の顔がフッと和らいだ。
(これも和也のおかげ・・・かな)
「それより和也、何か言ってたけどいいの?」
「へ?見てたの?」
水音が驚いた様に目を丸めた。
「アッハッハ、噂になってるよ、公衆の面前で水音が大声で激怒してたってね」
美奈はニコニコと笑いながら言った。
水音の顔がみるみる赤くなっていく。
「そうだっけ・・・和也の馬鹿・・・・」
美奈はそんな水音の横顔を見つめた。
「あーのさ、そこまで怒んなくていーんじゃない?」
「あたしから見るとさ、確かに変な行動ばっかだけど、なーんか必死に見えるんだよね」
「必死?」
水音が首を傾げて美奈を見た。
「うん、よくわかんないけど、何か考えがあるんじゃないかなぁ?」
「そかな・・・」
水音が和也の行動を改めて思い返した。
「ま、なんにしても帰ったら話あってみたら?あたしは仲悪いまんまの二人何て見たかぁないよ」
美奈はニコニコと笑っていたが、目は真剣な目つきであった。
「わかった」
水音も美奈を見返すとニコッと笑った。
「じゃーね!また明日!」
美奈は分かれ道で水音と分かれた。
美奈は何度も振り返って手を振っていた。
水音も美奈が見えなくなるまで見送った。
「心配してくれてたんだろなぁ、ありがと美奈」
見えなくなった美奈に聞こえるはずのない御礼をもらした。
「さってと!さすがに言い過ぎたし、帰ったら和也に謝ろっと!!」
水音はいつもの様にグッと伸びをして歩き出した。
だが、
物陰に隠れている、残酷な漆黒の目を光らせている何かに気づく事はなかった。
第6話 学校の出来事 ―完―
遅くなった第六話!!
機械の心に繋がる話はとうとう敵の面影が・・・?
ヤー長かった
あ、誤字チェックとかしてませんからあったら言ってもらえます?
眠いのであとがきは後に追加するかも、では次回の話でまた会いましょう




