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第23話 ハートのキング

暗がりの部屋、2人の人間。

2人の人間は首謀者。

そして生徒達を操っている人間。



片方は3人の少年少女。

一人の少女は、大切な者を守るため決意する。

決意は怒りへ、平穏を奪った首謀者達へ。

「イヤァァァ!!」

大声と共に、仰向けで倒れている女が起き上がった。

その声に多少驚いたのか、薄暗い中でも魔方陣の上に座る人間が振り向いた。


女は顔を青ざめ、その美しい顔立ちは恐怖で埋め尽くしていた。

顔からドッ!汗が流れ、化粧も崩れている。


何故こうなったか、暗闇の人間は解っていた。

女はこの学校の生徒同士の戦いを見る為に、自分が操っている男に乗り移ったのだ。

人間も最後まで見ていたが、確かに目の前であのような巨大な炎の刀が自分に振り翳されれば恐怖は植え付けられるだろう。

しかも、それは戦闘要員でない女にとっては尚更恐ろしいものだったのだ。


「興味本位で見に行くからそうなる」

暗い中、ハッキリと人間は言った。

その美しい声には侮辱が含まれている。

未だ恐怖で動かない女に向かってバカにしたように続けた。


「『殺し合い』を観客気分で見ていたのだ、貴様があの男を甘く見た結果だ」


人間の声は女には届いていないかった。

だが、女はようやく動き出すと、床に転がっている細長い四角い者を手に取った。


連絡用のトランシーバー。


震える手でそれを掴むと、全員に通達するようにボタンを押した。

「作戦の変更よ・・・」


震える声は続ける。


「操られて居ない者達を探し出し、殺しなさい。これはハートのキングとしての命令よ・・・命令に応じない者は、殺すわ」

そう言い切ると、トランシーバーは手から離され、床に落ちる。

バキッ!という音と共にトランシーバーは硬いコンクリートに打ち付けられ、暫くバチバチと音を立てるもそのまま煙を上げる。

確実に壊れた。もう命令を変えることは出来ない。


「いいのか・・・?」

人間は指して気にもとめない。

「元々の命令はこの学校に存在する『ある物』を手に入れる為の作戦…我らの同胞である0能力者達に危害を加えない予定では無かったか」


「・・・・知らないわよ」

自らをハートのキングと名乗った女は暗闇の人間の言葉を無視する。

「あんたは仮にもハートのクイーン・・・私に従いなさい」

その声は恐怖で震えながらも怒りが見える。


暗闇の人間、もといクイーンは何も言わず、監視カメラの画面に向き直った。

ハートのキングは、そんな自らの部下の筈のクイーンに殺意を込めた視線を投げると暗闇の部屋のドアを開けた。


「あのガキは殺す・・・。そしてあんたもこの作戦中に殺すわ」

そう言うと、化粧の崩れた顔のまま、不気味な笑みを向ける。

「偶然死んだら仕方ないもの・・・あんたも、あのガキも!!」

その言葉を聞いてもクイーンは微動だにしない。


だが、一言だけ言葉を漏らした。

「『アレ』を使うのか?」


「ええ!」

キングはそう言いながらゾッとする笑みを浮かべた。

「最強を使う!唯のガキじゃ一瞬で殺されるでしょうね!!」


最後に「あんたもね」と、憎憎しげに言うと、ドアを閉めた。

暗がりの中、クイーンはポツリと零す。

「唯のガキだったらな・・・」

その言葉に深い意味を込めて。




所々から血を流しながらも美奈はいつもの笑みを向けていた。


「な、何で?」

今井は困惑の表情で美奈を見つめた。


「あたしにも解んないけどさ、自分が何をしたかは解ってるよ」

そう言うと悲しそうな笑みを浮かべた。


赤い瞳から、元の黒い瞳に戻っているが、その目を辛そうに歪める。

「謝んないとね…今井にも、水音にも…」

その辛そうな声と、困ったように向ける笑みに、本当にマインドが解けたのがわかった気がした。


「水音ちゃんは…痛ッ!!」

直ぐに飛ばされた水音のことを思い出した今井は慌てて立ち上がろうとするも、アバラの痛みが体中に響いた。

(そうだ…俺、アバラが…)


それを見た美奈は、今井に近づくとしゃがみ込んだ。


(…?)

疑問に思う今井を無視して美奈は右手を今井の折れているアバラの所を触った。

「!?、いって!」


「アッハッハ!ジッとしてくんない?」


「おい、今の何処に笑う所があったんだよ!」

今井の激怒の声に美奈は笑顔で対応する。

「あんたの男としての無さによ」


「…お前謝る気、…おごぉ!?」

言い切る前に、美奈は思いっきり折れている部分を押した。


「よっし!折れてる部分を (むりやり)元の位置に戻したから暫くはいけるはず!」



「ちょ…おまっ…」

痛みに悶える今井を無視して美奈は水音の所まで歩き出す。

倒れている水音をソッと起き上がらせて、水音の顔を見つめる。


小さく、小さく、しかし、力いっぱい悲しみを込めた声を出す。

「ごめんね…ごめんねェ…」


「・・・」

今井からは美奈の後姿から見えず、表情は見えないまでも。

その声に先程までのお茶らけた様子は無いと思えた。


(俺にもあれぐらいしてくれてもいいんじゃ・・・)

等と思ったが口には出さないことにした。


美奈は突然、ッバ!と顔を挙げた。

水音を優しく、寝かせると直ぐに立ち上がった。

何事か理解出来ない今井の方に向いた表情は、笑顔では無く真剣な面持ち。


「今井!立てる!?」


「え?あ!ああ!痛みは引いたと思う!」

お前のせいでな、という言葉は伏せて置くことにした。


「水音を連れて逃げて!!早く!!」


わけもわからないままも、今井は言われた通りにすることにした。

美奈の慌てようが尋常では無かったからだ。


今井の行動を確認した美奈は壁に耳を付けた。

(振動がこっちに向かってる…!幾つかの足音もする。何人かの人数がこっちに向かってる…?操られてる時の記憶はハッキリしてる!状況は大体掴めてる!問題は、この状況で沢山の通路の中何でハッキリとココに向かってる…!?)

美奈の考えは瞬間的に答えをだした。

(間違いない!向かっているのは、この状況を作り出した本人達!!目的は、水音や今井と考えていい!)


「おい、一体何なんだ?」

眠っている水音を肩で持ち上げながら今井は困惑した表情を向けた。


ギン!と突然美奈の視線が険しくなった。

「へいへい!今井!!美奈に手ェ出したら殺すからね!!」

今井が水音に肩を貸している状態で、奇しくもベッタリとくっ付いた状態が気に入らなかったのか、美奈の声に殺意が沸いていた。

飛んできた美奈の膝が先程のアバラに減り込む。

メキョッという小気味の良い音。

「ごほぁ!?」

強烈な痛みが今井を襲うが、水音に肩を貸している状態で倒れるに倒れることが出来ない。


「お…ま…またアバラいったぞコレ」

泣きそうな声を出している今井に向かって美奈は満面の笑みを向ける。


「アッハッハ!じゃぁまた戻せばいいじゃん」

そう言って当り前のようにアバラに手をやると思いっきり押した。

「ぼほぁ!?」

今井等気にせず、よっし!と呟いていた。


「敵がこっちに向かってる」


「え?いきなり?俺に対する何かは無いの?」

今井の突っ込みを無視して話を進める。

「多分3人以上はいると思う。」


「おい無視かコラ、今シリアスかネタかどっちだ」


「アッハッハ!黙って話し聞け。またアバラやるわよ」

笑顔だがその表情に今井は確かに殺意を感じた。

(大人しく聞くことにしよう・・・)


「ここはあたしが食い止めるから水音を連れて逃げて」


「…?」

今井には言葉の意味が解らなかった。

「何でだよ?敵が来てるなら一緒に来た方がいい!それに和也も心配だ!美奈ちゃんが来れば和也を助け出せる!」

美奈の実力は目の前で見ていた。彼女が居れば、今倒れているかもしれない和也を助け出せる。

それほどの実力が美奈にはあった。


「ごめん」

そう言うと、美奈は今井に背を向ける。

そこで今井は気づいた。

美奈の肩から流れる血が止まらないのだ。

つい、目をそむけた。

逃げる体力すらすでに無いのだ。


「・・・この先にコンピューターの部屋があったよね?」

背を向けながら了承の意を向ける美奈に、慌てて今井は短く「ああ」と、答えた。

「そこから外に連絡出来るかもしれない」

今はそこで、その言葉の意図が読めた。

この一方通行しかない廊下で、しかも最も助かる可能性。

携帯も繋がらない、何故か窓も割れない、誰と出会うか解らない学校内をうろつくよりも遥かに可能性は在る。

しかも今井はその系統のエキスパートだ。

可能性はッグ!と上がる。

(そうか!それだったら時間稼ぎをしてくれる美奈にだって助かる可能性もある!!)


「解った?」

そう言って、満面の笑みで美奈は振り向いた。


「…死なないよな?」

そう聞かずにいられなかった、その表情がいつもと違った気がしたから。

「死ぬ気は無いよ!私は絶対に死なない!!」

そう言ってくれた。


「・・・行って」

そう言った美奈は視線を前に向け、再び背を見せた。

「解った」

今井も決意を決める。

自分の出来ることえおするしかないのだから。

水音を肩に担ぎ直すと、出来るだけ急ぐように早歩きで急いだ。




美奈は、今井達が見えなくなる所まで行くと、少しだけ後ろを向いた。

すでにいないのは解っていたが、少し、寂しく感じていた。


「アッハッハ・・・弱くなったもんだ」

そう悲しそうに零すと、パン!パン!と顔を弾いた。

手の振るえが止まる。


「あたしは死なない・・・あたしは死なない!!」

声を上げて自らを奮い立たせる。

そうでもしないと折れそうに、心はボロボロだった。

すでに大切な友を傷つけた時点で、美奈は打ちひしがれているのだ。


表情はしっかりと廊下の先を見る。

薄暗い廊下の中、数人の人数がハッキリと見える。


足元は自らの血で小さな水溜りを作っている。

「水音・・・昔からずっと一緒だった・・・」

今井には悪いが、水音のことが心配で仕方が無かった。

だからこそ、ずっと守ると、自分が、

それを傷つけてしまった。


感情は怒りへと変わる。




お前らが・・・


笑顔は崩れ、ギラつく視線は、こちらに向かう敵へ。



お前らが!!


始めてみせる怒りの表情は、殺意を込めて。



「この平穏を崩したお前らは・・・」


もう震え等存在しない。自らが死ぬことすら頭にはもう無い。

頭にあるのは直線的な、憤怒。



「潰す!」


その声と共に走り出した美奈の表情に、笑みは無い。

獲物を狩る獣のように目を光らせ、獣の上下の顎のように力強い拳を握り締める。


デストロイヤー(破壊で示す者)は自らの意思で壊す。


大切な友の為に。

これ以上傷つけさせない大切な者の為に。


久々の更新です。

もう一つの話を毎日更新していると何だか楽しくなってきてついつい、アッチの方を優先してしまいます・・・

最早もう片方をこのペースで終わらしたほうが無難な気だしてきましたよ。

アウトサイダーは私の予想じゃメッチャ!長くなりますが、更新を出来るだけ早くしたいです、

無謀にもランキングなるものに挑戦してみました!面白ければ押してやってください!


それではまた次回でお会いしましょう!

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