14.語句選びから表現方法の具体例
今回は具体例を挙げてみます。
例えば、女性の友人への贈り物として書作品を書くことにしたとします。
彼女は、綺麗でとても可愛らしい女性です。
そこで、「うつくしい」という意味のある漢字一文字の色紙にしようと考えました。
「うつくしい」という意味のある漢字は、数多く存在します。
「美」「麗」「佳」「英」「華」「花」「香」「秀」「良」「純」など。
彼女のイメージに合う「うつくしい」を選びます。
彼女は可愛らしい感じの「うつくしい」だから、「花」が良いかな? といった感じです。
「花」に決めたら、今度は表現を考えます。
色々な書体の「花」
可愛らしい感じにするなら、行書が良いかな?
濃墨にすると、大地にしっかりと根付いた力強い感じになるかな?
淡墨にすると、少し儚い感じになるかな?
彼女は芯がしっかりした女性だから、濃墨の方が良いかな?
これをさらに変化を付けてもっと私の作品らしくなるように書こう。
納得のいくものが書けたら、落款を入れて、裏打ちして、額に入れれば完成です。
(完成作品は、そのうち納得のいくものが書けたら挿入します。たぶん……)
今回は、分かりやすいものを選びましたが、普段はもう少し捻るようにしているつもりです。
五箇山に縁のある友人の結婚祝いには、五箇山和紙に麦屋節の一節を書いて贈りました。
おわら風の盆が好きな友人の結婚祝いには、おわらの歌詞を選んで八尾和紙に書きました。
すごくお世話になった方の還暦のお祝いには、感謝の気持ちを込めて、色紙に「感」を行書で書いて贈りました。
それほど捻ってもいませんが、全部贈る相手のことを自分なりに考えて書いています。
自己満足の品ですが、世界に一つだけの贈り物です。
例え私の作品が気に入らなくても、それなりの額に入れて贈っているので、額を活用してもらえれば良いかなという気楽な気持ちで贈っています。
今回は贈り物を例にしましたけど、展示会に出品する作品も私なりに色々な想いを込めて書いています。
先生に勧められた言葉も自分なりに消化して書いているつもりです。
なので、今まで書いた作品はどれも思い入れがあります。
それが観た人に伝わっているかは分かりませんが、前に展示会で感想を話して下さった方が、私の意図通りの答えを下さって、とても嬉しく思いました。
中には、意図以上に良い方に解釈して下さった方もいて、驚かされたこともありました。
その方々のように、他の方にも伝わっているとすれば、書の素晴らしさを感じずにはいられません。
もちろん、どう受け取るかは自由です。
伝わらないのは、私が未熟だということもあるでしょう。
それでも、何かを感じ取ってもらえるだけの作品を書けるようになりたいと思っています。
お読み下さり、有り難うございます。
今回の例は、すべて同じ筆を使用しましたが、筆を変えるとまた違った表現になります。




