10.「落款」って?
落款とは、落成款識の略で、書画が完成したとき、作者が署名し、または押印することやその署名や印のことを言います。
作品の最後の仕上げとも言えるでしょう。
これを失敗すると、作品が台無しになります。
綺麗な顔に、下手な化粧を施すような惨状となるでしょう。
(綺麗な顔じゃなかった場合は、さらに悲惨な状況に……)
特にやりがちな失敗が、押印する時に向きを間違えて、上下が反対だったり横になっていたりすることです。
押す時は、何度も何度も正しい向きかを確認します。
そして、押す場所ですが、署名する場合はその下に押すので大丈夫ですが、一文字の作品に印だけ押す場合は、どこに押したら良いのかが未だによく分かりません。
自分がまだまだヒヨコだなと実感する瞬間です。
情けないことですが、先生に聞いて押しています。
この時に押す印ですが、これも作品によって使い分けなければなりません。
作品のサイズや雰囲気などに合わせて選びます。
私は、先生に彫っていただいた印と、自分で彫って先生に手直ししていただいた印の二タイプの印、数点を使い分けています。
篆刻を専門にしている先生に作っていただく方もおられますが、私は、今、師事している先生が篆刻も勉強されていたので、色々と教えていただいています。
印を彫るのも楽しいです。
漢字作品の印は篆刻作品と同じで、篆書にします。
大篆なら大篆、小篆なら小篆に揃えなければなりません。
印の種類ですが、一個の印だけを作品に押す時は、雅号が彫られた「雅号印」を押すのが普通です。
その他に、「遊印」と言って、好みの一文字を彫って使うこともあります。
それから、漢字作品の右上に押す細めの印を「冠帽印」や「引首印」と言います。
これは、座右の銘などを用いる事が多いそうですが、最近はあまり押さないのが主流みたいです。
署名の下に二個押す場合は、上は姓名か名前だけを白文(字が白色)の印、下は雅号を朱文(字が赤色)の印にします。
漢字作品は、四角い形の印が多いですが、かな作品だと楕円やひょうたん型などの変わった形の印も結構あります。
そして、「雅号」という言葉が出てきましたが、作品に署名する、文人・画家・書家などが、本名以外につける風雅な名のことを言います。
私の雅号は、師範試験に合格した時に、今は亡き最初の先生が付けて下さいました。
人によっては師匠から一文字いただいて付けてもらうことや本名のままの場合もありますが、私は私の本名から漢字一文字と、先生が選んだ漢字を合わせた二文字の雅号です。
正直とても気に入っています。
素敵な雅号を付けて下さった先生には、本当に感謝しています。
この雅号を、胸を張って堂々と落款で示せるように、精進して良い作品を書きたいです。
ちなみに、ここのユーザネームとは全く違います。
本名はよくある名前ですが、それもそれなりに気に入っています。
付けてくれた両親にも感謝しています。
それから、古典の臨書作品には、雅号の後に「臨」、それ以外の作品には、雅号の後に「書」と書いたり書かなかったりします。
落款が本体の邪魔をせず、目立たずに調和している作品が良い作品なんだそうです。
ぜひ作品鑑賞をする時は、落款にも注目してみて下さい。
お読み下さり、有難うございます。
私がヒヨコから成長して、飛び立つ巣立ちの日はまだまだ遠そうです……。




