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島の元気は良いことばかりではありません?



「めんどくさい…」

「頑張ってください」


私は今、新たな問題に直面している。

そう…………雑草だ。


「土が豊かな証拠ですよ」

「ぎゃああああああああ! み、みみずぅぅーーー!」

「…土が豊かな証拠ですよ…」


アリンコはまだいいの!

でもみみず!

みみずは無理!

コンクリの上で夏場のたうち回って干からびるあの惨たらしい姿…!

それがみずみずしくピチピチ生きて地上に現れる!

嫌! 無理! キモい!

永遠に土の中で果てろ!


「うえええん、虫が! 虫が〜! いろんな虫が〜っ」

「いろんな虫が増えて良かったではないですか。ほら、鳥も増えましたし、猪や鹿や熊や狼や猿らしき動物も現れ始めましたよ」

「ちょっと待ってください! 鳥はともかく動物は害獣と猛獣の類いじゃないですか⁉︎ 動物園で見るやつですよそれら!」

「俺の実家には普通にうろついていましたよ」

「水守さんの実家ってそんな山奥なんですか⁉︎」

「いや、山は近くにありましたが、狼以外、山の食糧不足で降りてくるんですよ。そして畑を荒らし我が物顔で闊歩しています」

「こ、怖!」


た、確かに自然が豊かになるのはいい事なんだけどー…!

そういう生き物とは出来れば遭遇したくなーい!


「大丈夫です! 森の動物たちも姫さまがこの世界にどれほど大切なお方なのかを知っておりますです!」

「ミュー」

「お茶をお持ちしました!」

「ありがとう。では、一休みしましょうか」

「は、はい」


と、いうことで神殿入り口の階段に座って一休み。

腐墨亡者をやっつけて、島の調査が終わると水守さんは畑のお世話と神殿の掃除、ご飯作り等…完全に主夫状態。

お祈りパワーがアップしてから森の回復は順調で、残るは東と西の山のみだ。

今日は午後、そのどちらかに行ってみようかなと思う。

でも、ほぼ座りっぱなしの接客業にあの山を登るのは…。

べ、別に歳があれだからとかではなく!

そうよ、歳のせいで体力と足腰が弱ってるとかじゃないわよ!

自転車通勤だし!


「…それにしても、農業って結構大変なんですね。私、種を蒔いたらそれで終わりだと思ってました…」

「その偏見は逆にすごいですね…。小学生の頃に朝顔とか育てなかったんですか?」

「いやまあ、朝顔やミニトマトは育てましたけど……気付いたら親が水をあげててくれたりですね…」

「……そういうのって子供のためにならないんですね…」

「そうですね…」


いや、きっと私の親は私なんかに育てられる朝顔とミニトマトに同情して水を与えていたんだろーなー…。

観察日記?

ふふふ、もちろん現実を見ないで妄想でそれっぽい感じに育てて書いたわよ。

え? みんなそうするでしょ? 普通。

けど、そのおかげでこのように畑は種を蒔けば勝手に育つと勘違いする大人に仕上がります。

親御さんはきちんとお子さんに朝顔やミニトマトを育てさせてください。

大人になってから恥かきますよ……。


「……けど、そう考えると昨今ニュースになっている野菜や果物の盗難ってマジで許せねぇ犯罪ですね…!」


種を蒔いて、草をむしって、毎日ちゃんとお水をあげて…。

やっと出てきた芽がすくすく伸びていくのを眺めるのは楽しいけど、野菜を育てるのがこんなに大変だったなんて!

それなのに、それが実ったら横から掻っ攫うとか…万死に値するわ!


「うちの実家もさくらんぼを育てているんですが、去年やられました」

「ええ⁉︎」

「………犯人は捕まっていないんです。地元県警にそれとなく聞いても手が回っていないらしくて…。……犯罪というのは誰かの幸せや努力を奪います。何故減らないのでしょうね…」

「…自己中が増えすぎなんですよね!」

「遊ぶ金欲しさやスリル感を求めて窃盗を行う者は確かに許し難いです。反社会勢力も農作物盗難、密猟を良く行うんですが…」

「許し難いやつですね!」

「最近は外国人が知らずに行うケースや、儲けてそのまま自国にトンズラするケースもあり…三課は本当に大変なんだそうです」

「…腹ァ立ちますね! 泥棒はもっと厳罰化されるべきですよ!」

「犯罪者に更生の機会を与える事が日本の方針ですから…厳罰化が良いかどうかは分かりかねます。それで犯罪が減るのであればそれもいいとは思いますが…。…まず良心や犯罪を行う事を踏みとどまる理性、反省する心がなければ厳罰化しても意味はないでしょうね」

「う…うーん…」


私は犯罪だけはしないように生きてきたからよく分からないなー。

いや、まあ、軽犯罪的なものは覚えがあるけど…。

自転車で一時停止守らなかったり、左側通行を右側で通ったり深夜だからって赤信号止まらなかったり?


「つーかお巡りさんがそれ言うのはいいんですか」


厳罰化意味なしとか。

お巡りさん的には犯罪は減って欲しいんじゃないの?


「…この辺りは教育現場が担当だと思うので、畑違いです」

「そ、そうか…問題は教育現場にありなのか…」

「教育現場は教育現場で地獄のようですがね。知り合いに教員になった奴がいますが、親が乗り込んでくるってテレビじゃなくマジだからと真顔で言っていました」

「ひ、ひええ…」


テレビじゃないんだ。

マジなんだ…。


「…うにゃー…」

「あ、ミューごめんね、訳分かんない話して」

「にゃー…いえいえ…姫さまの世界のことはわたくしめはよく分からなくて……でも、なんだか大変そうですにゃ」

「そうね…どの世界でも生きるって大変なのよ…」

「にゃあ…」

「ミュー、洗い物は頼んでいいか?」

「! はい! お任せください!」


……なんか、やっぱりミューと水守さんの方が距離が近い気がする。

敬語かな…?

いやー、それだけではないようなー?


「水守さんって猫派ですか?」

「俺はどちらも好きです」

「………そうですかー…」


犬飼ってたっていうから犬派かと思った。

…いや、正直動物好きにも見えないけど。


「そういえば幸坂さん、午後はどの辺りの回復に行かれるんですか?」

「山の方に行くつもりですけど」

「…………。今日はやめておいた方がいいのでは? 道があるわけではないですし、ここから山まで二キロほどありますよ。女性の足ではそれなりにかかります。野生動物も増えてきましたし……」

「やめます」


徒歩で山まで二キロ。

野生動物出没注意。

ふふ、やめるわ!


「水守さんついて来てください!」

「では明日」

「よろしくお願いします!」

「じゃあ、ミューめが明日の畑の水やりを行います!」

「よろしく頼む」

「…あ、そうなると…今日の午後はなにしましょう?」

「薪拾いを手伝ってください」

「あ、はーい…」


やる事はあるんですね…。







********




というわけで薪拾いに森へとやってきた。

落ちている枝を拾うのだが、正直ついこの間まで焼けた森だったんだもん……全然落ちてないわ。


「薪って足りない感じなんですか?」

「今すぐにどうこうではないんですが…使い続ければいずれなくなります」

「そ、それもそうか…」

「木を切るのも一つの手ですが、かなりの重労働なので拾った方が簡単ですね」

「……そうですね」


うーん、本当にどこの世界だろうと生活するのって大変だなぁ。

最近は食材も支援物資で送ってもらえるからご飯は充実してきたけど…。


「はっ!」

「どうしました?」

「きのこ! きのこですよ水守さん!」

「……これは…」


不思議手帳さんの出番だ!

鑑定の結果なんとかっていう名前で毒はない、食べられるきのこらしい。

木の根元に生えていたのでごっそり採取していくことにした。


「きのこのクリームパスタにしましょうか」

「美味しそう! 楽しみにしてますー!」


水守さんマジ料理上手!

不思議手帳さんから牛乳や卵が送られてくるようになってからよりバリエーションも増えて、毎日ご飯が超楽しみ!

この生活の唯一の楽しみでありお風呂と共に癒しの瞬間よー!


「そういえば…部長から支援物資に関して相談がありました」

「はい?」

「水や食糧の確保が安定してきたら、物資の支援は最低限のものに控えて欲しいと。…これまでは人道的支援として行われていましたが、物資購入資金的な問題でこれまでの様な支援は難しいそうです」

「な! なんですと!」


でも納得は出来る!

水守さんも水守さんの部署もお巡りさんであり警察であり、何でも屋さんじゃないもんね!

お金だってきっと部署の予算で出してくれていたんだろうし…。

それはイコール税金……。


「…そ、そうですね、分かりました…」

「ご理解ありがとうございます」

「……なら、最後にビールだけでも…!」

「諦めませんね」



がさ。



「?」

「! 幸坂さん、俺から離れないで下さい」


な、に?

草を踏む大きな足音。

手帳さんが銃に変形し、水守さんがそれを構える。

足音の方向を見据える水守さんの後ろに庇われて、その背中にキュンとしてしまう。

ほ、ほんといい背中してるよねぇ!

今日は朝から農作業だったからこの世界の作業着風だけど、それでも肩甲骨が浮き出てて…。

さ、さわ…触ってもいいかなぁ…!

セクハラになるかな?

で、でもしがみつくふりをして…は、はぁはぁ…!


「! あれは……!」

「え!」


水守さんの驚いたような声。

こっそり背中から顔を覗かせてみるとそこには!


「ンモォォ…」

「う、牛!」

「しかも群…!」


や、野生の牛ぃぃい⁉︎










********




「……なんと! それで牛さんから牛乳を分けていただいたんですね!」

「ああ、どうやら島の中の草を食べているらしいが…柵が必要だな」

「せっかく育ってきた野菜を食べられたくないですもんね」

「…やはり明日は木を切ります。柵以外にとうもろこしの添え木が必要なので。確か…外の納屋に農具以外も入っていたな」

「はい! ニンゲンが昔使っていたものをアーナロゼ様のお力で新しくして入れておきました!」

「………部長に新しく大工作業の資料も送ってもらおう…」


頭を抱える水守さん。

それもそのはず、牛以外に…森の中を駆け巡る鶏を発見したのだ。

あれは取っ捕まえて是非飼いたい。

正直牛の世話なんて無理なので、野生の牛さんに必要になったらミルクを貰いに行くという方向で話はまとまったが…卵は鶏を捕獲して小屋で飼わないと得られない。

その小屋を作るのだ。

そうすれば卵と牛乳は今後こちらの世界で普通に手に入るようになる!

…とは言え、さすがの水守さんも大工作業的経験はないらしく、初のチャレンジに頭を抱えているのだ。

木を切るところからなんだもん…そりゃ頭も抱えるし資料も欲しいよね……。


「そういえばミューもさっきお洗濯していた時に気付きました!」

「何に気付いたの?」

「北の川にお魚がいたんです! ミモリさま! 明日釣ってください!」


…と、ものすごいキラキラした眼差し…。

さ、魚が好きなのって日本の猫だけだと思ってたけど…そ、そういうわけでもないのか?

というかミューは妖精なのでは…。


「…………。とりあえず今夜はきのこのクリームパスタだ。…作るのを手伝え」

「んにゃーあい!」


……水守さん明日からめちゃくちゃ忙しくなりそうだな…。

山、行けるのいつになるだろう…。

まあいい…それより今夜はきのこのクリームパスタだ!



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