表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】転生魔女の気ままなグルメ旅~婚約破棄された落ちこぼれ令嬢、実は世界唯一の魔法使いだった「魔物討伐?人助け?いや食材採取です」  作者: 茨木野
二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

125/142

125.悔しがる、聖女さま




 マリィがマーサとの決戦へと赴いた、一方そのころ。

 マリィの妹、グリージョは大量のお供、およびルグニス王太子を率いて、城の外へとやってきていた。



 本当だったら、外になんて絶対に出たくなかった。

 現在、グリージョはマリィの強化付与魔法がきれて、本来の弱い姿に戻ってしまっているからだ。



 だが周りはグリージョの事情なんて知らない。

 聖女グリージョに、この事態をどうにかしてもらいたい。いや、高い金を聖女に貢いでいるのだから、その金の分働けと……。



 そのプレッシャーに耐え切れなくなり、グリージョはしぶしぶと城の外へ出て、結界をかけなおそうとした。

 グリージョが結界を張るためには、被対象者(物)を目視せねばならなかったからだ。



 無論、それは単にグリージョの結界術師としての技術が未熟だから、必要な工程だった。

 真に実力のある結界術師は、対象を見ずとも、結界を対象に張ることができる。マリィもまたしかり。



 さて、城の外に出たグリージョは信じられないものを目撃していた。



「なんなの……?」

「どういうことなんだ……?」



 グリージョ、そしてルグニス、そしてそのほか多くの騎士たちは、目のあたりにしたのだ。

 ……大量のオークどもを、一撃のもと葬り去った、魔法使い。

 魔女……マリィの存在、そして魔法を。



「うそ……うそうそうそ! ありえないわ! なんで、マリィが魔法なんて!!!!!」



 魔法。はるか昔に存在した、奇跡の技。

 一瞬で森を焼き、大雨を降らせ、嵐を巻き起こし、そして雷で竜すら一撃で黒焦げにしたという。



 だが長い時間を経て魔法の技術は衰退し、ついにはこの世界で魔法を使える存在は、いないとされていた。

 ……そんな奇跡の技を、あろうことか、出来損ないと蔑まれていた姉が使って見せたのだ。



 グリージョの衝撃は相当なものだった。



「あたしは信じない……信じないんだから……」



 だが、その声は弱弱しかった。

 伝聞ではなく、その目で直接、姉が魔法を行使した場面を見たのだ。



 人は見たいものしか見ない生き物だ。

 とはいえ、こんな目の前で真実を突きつけられては、認めざるを得ない。



「マリィが……魔法使いだったなんて!」



 ルグニスの言葉は不思議と、その場にいた騎士たちに一瞬で広がっていった。



「マリィ様が魔女?」「ゴルドー公爵の御令嬢さまが?」「まさか」「だが見ただろう、あの黒髪の美女が、魔法を使うさまを!」



 ざわ……ざわ……。

 騎士たちはすっかり、マリィの魔法に魅入られていた。



 しかたないことだ。

 さきほどまで、オークの大軍に襲われて、絶体絶命のピンチを迎えていたのだ。



 その窮地から一瞬で、鮮やかに、王都の民たちを救ってみせた。

 聖女グリージョではなく、魔女マリィが。



 優秀な妹ではなく、劣等なはずの姉が。

 ……グリージョの中に、姉に対する嫉妬心が芽生える。



「うおお! すげええ!」「魔女様すごい!」「聖女様なんかよりよっぽど頼りになるなぁ!」「まったくだ! 魔女様ばんざい!」「ばんざーい!」



 嫉妬の芽は、マリィをたたえる大歓声という水を浴びて、むくむくと育っていく。

 グリージョは怒りで肩を震わせると……。



「馬鹿にするんじゃあないわよ! あんたら!」



 顔を真っ赤にしたグリージョが叫ぶ。

 勝利に浮足立っていた騎士たちは、一瞬で静かになる。



 感情的になったグリージョは声を荒らげる。



「なにが聖女より魔女よ! ふざけんな! 今まで守ってやってた恩義も忘れやがって!」

「ぐ、グリージョ……落ち着いて。淑女がそんなハシタナイ言葉を使ってはならぬ……」



 いきり立つグリージョをルグニスがなだめようとする。

 だがグリージョは気づいていた。ルグニスの目に、彼女に対する畏敬の念が、消えていることに。



 それは聖女という、奇跡の技を使う選ばれた存在に向ける目ではなかった。

 単なる、恋人に向けるだけの目。……気に食わない。



 姉より優れていなきゃいけない。

 姉より神聖な力を持っていないといけない。



 姉が魔法という、希少な、そして奇跡の力持ってることが……ゆるせない。

 姉より下に思われてるのが、気に食わない。



「ねえルグニス! この不敬な騎士たちをとっつ捕まえて死刑にしてよ!」

「なっ!? 何を馬鹿なことを言うんだ君は!」



 騎士とは民を守る盾だ。

 この魔物が氾濫し、暴れまわってる事態において、必要不可欠な存在。



 それを捕まえる? 死刑にする?



「できるわけないだろ!」

「なんでよ! やってよ! あんた、あたしにほれてんだろ! 恋人がやれつってんだから、やれよ!」



 ……グリージョは聖女の仮面を脱ぎ捨てて、エゴをむき出しにしていた。

 わがままを言って、無理を押し通そうとする。



 今がそんな状況ではないと理解してながら……。

所詮、偽の聖女の実態なんてこんなものである。



「あのくそ姉をほめてやつみーーーーんな死刑! 死ね死ね死ね! あたしを馬鹿にするやつはみんな死んじゃえばいいのよぉ! ねえ、ルグニスぅ!」

「…………」

「ルグニス?」

 


 もはや、彼の目には、グリージョが聖女に映っていなかった。

 単なるわがままな、女だと……。



 惚れてる、という魔法が解けた。

その目の前にいるのは、たんなる性格の悪いわがまま女にしか見えなかった。



「おい、誰でもいい。この女を捕まえて牢屋に入れておけ」

「………………………………………………………………は?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

★1巻10/20発売!★



https://26847.mitemin.net/i766904/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ