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【書籍化】転生魔女の気ままなグルメ旅~婚約破棄された落ちこぼれ令嬢、実は世界唯一の魔法使いだった「魔物討伐?人助け?いや食材採取です」  作者: 茨木野
二章

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123.無自覚人助け




 スーツの連続で、ちょっと飽きたマリィは、お口直しにしょっぱいものを所望した。

 転移門ゲートを使ってやってきたのは、ゲータ・ニィガ王国の上空。



 マリィはホウキにまたがって、眼下を見下ろしていた。



「さぁカイト。近くに魔物の気配はないかしら? できれば美味しそうな肉を持ってる魔物」

「わかりました! 人助けですね!」




 全然違う。

 しかしマリィ信者カイトは、今回の彼女の行動を、こう解釈してるようだ。



「一足先に現世へ戻ったリアラ皇女殿下さまたちが、心配だから、助太刀にきた……そういうことですよね!」



 全然まったくこれっぽっちも、当たってなかった。

 単にしょっぱい系のご飯を食べたいだけだった。



 カイトの頭に乗ってるオセだけが、この二人の認識の違いに気づいている。

 やれやれとため息をついた。



『おい小僧。さっさと魔物を見つけやがれ。さくっと倒して、さっさと戻るぞ』

「はい! よぉうし……むぅう~~~~~~~~~~」



 カイトが気合いをいれて耳をピコピコ動かす。

 獣人の聴覚は人間より優れ居てる。



 加えて、カイトは神獣フェンリルの力を持っている。

 獣人をも凌駕した超聴覚とでもいうべき、唯一無二の感覚を所有してる。



 それを持ってすれば、この近辺の魔物の気配を辿ることなど造作も無い……。



「射ました! オークです!」

「オーク……かぁ。もう一声!」



 何だよもう一声と……オセはあきれる。競り売りではないのだから。



「あ! オークジェネラル……オークキングもいますね!」

「ふむ……ねえカイト。オークの肉って、ランクが高い方がおいしい?」

「それはもう!」



 にやり、とマリィが不敵に笑う。

 ならば方針は固まった。



『何すんだよ?』

「オークを全部いただくわ」

『さいですか……ん? おい魔女様よ、なーんかオークと誰かが戦ってねえか?』



 マリィはホウキを使って移動。

 眼下ではオークたちの大群と、武装した人間たちが戦っていた。



『ありゃあ……モンスターを討伐するために派遣された騎士だろうな。どうするんだ?』

「決まってるわよ」



 マリィは接骨木ニワトコ神杖つえを取り出して、構える。



「それは……私の得物なのよ。横取りさせてたまるもんですか……!」

『いや横取りしようとしてるのあんたなんだが……てか、騎士を攻撃すんなよ! わかってるな!?』



 マリィは杖を手にして、くるんと中空で動かす。

 すると眼下で戦う騎士、魔物たちを全部覆うような、巨大な魔法陣が出現する。



『おいおいおいおい! まさか本気でやらねえよな!? 殺すんじゃあねえよな!?』

「さぁ……狩りの時間よ。カイト、オセ。耳を塞いでなさい」



 慌てて、カイトは獣耳を抑え、ぎゅっと丸くなる。

 オセもまた自分の身を守る。



 準備を整えたマリィは、その魔法の力を解放する。



「術式、広域展開……! 天裂迅雷剣ディバイン・セイバー……!」



 ズガガガガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!!!!!!!!!!



 ……凄まじい勢いの稲妻が、地上めがけて降り注いだ。

 その轟音のせいで、カイトたちはしばらく、耳が聞こえなくなっていた。



 やがて白煙が晴れ、カイトたちの耳も正常に戻る。



『馬鹿おまえ……! 今の極大魔法じゃあねえか!』


 

 極大魔法。高位の魔法使いが、長い年月をかけて修行し、身に付けることができる魔法の極地。



『皆殺しにしてどーーーーすんだよ!』

「誰が馬鹿よ。アレを見なさいな」

『ああん? って……こりゃ……驚いた……全員無事だと!?』



 眼前にいる魔物達は、確かにしびれてはいるが、しかし生きていた。

 白目を剥いて気絶している。



 また騎士たちは気絶すらしていなかった。



『あの威力の魔法攻撃を受けて、無傷? どうなってんだ……?』

「極大魔法と結界魔法、二つを同時展開したのよ」

『は、な、なあぁ!? 同時展開……いやまて、できるか……その杖があれば……!』



 接骨木ニワトコ神杖つえ

 世界最高の魔法の杖だ。



 これを使えば極大魔法という、凄まじい魔法を撃つ一方で、それを打ち消す結界を構築することくらい可能である。



「極大魔法は私が発動させ、杖には仕込んでおいた結界を展開した。簡単でしょ?」

『いやまあ……あのね、あんたの言う簡単は、簡単だったためしがないんだよ……』



 マリィは言ってなかったが、結界は眼下の騎士たちだけでなく、カイトたちにも包んでやっていた。

 なんだかんだ言って、マリィはカイトたちのことを気に入ってるのである。



『しかし極大魔法を手加減して撃つなんて、神業だぜ? あれは威力が調節できないってのが常識なんだが』

「私に常識が通用するとでも?」

『あんたが言うと説得力がちがうな……』



 マリィは気絶するオークどもを、収納魔法で回収する。



『ちなみにオークを殺さなかった理由は?』

「血抜き作業があるでしょ? 私だって学習するんだから」



 血抜きしないとケモノの肉は臭くて食べれたものではない。

 と、かつてカイトに教えてもらったのだ。



 マリィはどや顔で聞きかじった知識を披露する。

 オセは思い切りため息をついた。



『っと、そういや小僧が黙ったまんまだな。どうした小僧?』

「…………」

『あ、こいつ、気絶してやがる……』



 なに、とマリィが心配そうにカイトを見やる。



「て、手加減したのだけど……大丈夫?」

『ああ、心配すんな。魔女様の行いがすごすぎて、失神するレベルで感動したみたいだぜ』

「…………紛らわしいのよ」



 ふぅ、と安堵の息をつくマリィ。

 それを見てオセはニヤニヤと笑う。



『仲間の身を案じるなんてなぁ。どうしちまったんだい、エゴイストさん?』

「……意地悪ね」

『けけけ、おれぁ悪魔だからなぁ……!』



 そんなこんなあって、マリィはお目当ての肉をゲットしたあと、転移門ゲートを開いて蓬莱山へと蜻蛉がえりするのだった。

 ……だからだろう。



 眼下で、騎士たちが涙を流しながら、マリィに感謝してる姿に、気づかないのだった。

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