122.異変
マリィたちは打倒マーサのため、不死の山へと向かう。
馬車に乗って蓬莱山のなかを進んでいく。
椅子に座るマリィは物憂げな表情で窓の外を見て言う。
「おなかすいたわ」
『あんだけ散々食っといて、まーだ腹減ってるのかよ……』
蓬莱山に到着してからというものの、スイーツ三昧であった。
あの量のお菓子を食っていたらあっという間にデ(自主規制)。
「魔法使うとおなかがすくのよ」
「わっかりました! すぐに蓬莱山の果物でおいしいスイーツでも!」
蓬莱山にとらわれ、無理矢理働かされていた奴隷たちから、スイーツを山盛りに分けてもらってるのだ。
カイトはそれを使ったお菓子を作ろうとする。
「待って。私は今……しょっぱいものが食べたいわ」
「しょっぱいもの……ですか?」
「ええ。ちょっと甘い物連続はさすがに飽きたの。一回くらい食休みに、しょっぱくてがっつりしたものが食べたいわ」
オセがあきれたように『食休みって意味知ってる?』と聞いてくる。
マリィは胸を張ってどや顔で答えた。
「食事と食事の間の休みのことでしょ? 馬鹿にしないでちょうだい」
『ああ、言葉の意味は知ってるんだな。すまん』
「甘い物と甘い物の間に、しょっぱい物を挟むことで、甘い物連続で疲れてる舌を休ませるってやつね」
『おれの謝罪を返しやがれこんちくしょう……!』
何はともあれ、マリィは腹が減っていた。
「カイト。ご飯」
『赤ん坊かおまえは……』
「赤ん坊はご飯欲しいときに、ご飯なんて言わないわ」
どやぁあ……とマリィが得意げに笑う。
オセはあきれかえっていった。
「魔女様すみません。お肉を切らしてまして……」
「適当に魔物を狩れば良いじゃない?」
「それが……どうにも魔物の気配を感じないのです」
カイトは鋭敏な聴覚を持っている。
近くに魔物がいればすぐにわかるのだ。
しかし彼の耳に、魔物の声が聞こえてこないのである。
『小僧、ほんとか?』
「はい。ちょっと遠くまで耳を澄ませてみたんですけど……やっぱり、魔物の声は聞こえません」
『おかしいな……魔物がいないなんて不自然じゃあねえか?』
ここへ来たばかりの時には、魔物が普通にいたのだが。
しかし急に消えるなんておかしい。
『魔女様よ、マーサが何か企んでるんじゃあねえのか?』
かもしれないが、マリィはどうでもよかった。
彼女にとって最も重要なことは……。
「おなかが……すいた!」
マリィはだんだん不機嫌になっていった。
おなかがすいて仕方ないのである。
マリィは早く魔物を倒したくて仕方ないのに……!
「近くに魔物の気配がないなんて……! もう! オセ! 何か良いアイディアは!?」
『あー……一旦元に戻るのはどうだ? 転移門使って現世に戻る。向こうなら魔物くらいたくさんいるだろ?』
「ナイス、あいでぃーあ! カイト!」
マリィは窓から顔覗かせて言う。
「ちょっと魔物ぶっ倒してすぐ戻ってくるわ。座標をこの馬車に設定しておくから、あなたは馬車を進めておくこと」
「わかりました! リアラ皇女殿下の助太刀に行くのですね! お気を付けて!」
……どうやらカイトは、マリィが現世にいるリアラを、助けに行ってると勘違いしたらしい。
ま、どうでもよかった。
マリィは転移門を開いて、一旦現世へと向かうのだった。




