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【書籍化】転生魔女の気ままなグルメ旅~婚約破棄された落ちこぼれ令嬢、実は世界唯一の魔法使いだった「魔物討伐?人助け?いや食材採取です」  作者: 茨木野
二章

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118.愚かな妹




 さてリアラ皇女によって、避難民たちは帝国へと誘導させられることになった、一方その頃。

 王国では。



「どうしよう……どうしよう……」



 マリィの妹グリージョが、寝室に引きこもっていた。

 彼女はカタカタ震えて、何度も窓のほうを見ている。



「結界が……展開できない……」



 グリージョは大聖女として周りからチヤホヤされていた。

 彼女には凄い法力(※奇跡の術を使う力)がそなわっている。



 彼女がこの王都を守る結界を創っていた。

 その結界はどんな魔物も寄せ付けず、王都民たちの平穏を守っていた。



 人々はグリージョを賞賛し、彼女はその声を聞いてさらに増長した。

 自分は、凄い聖女なのだと。



 ……しかし姉がいなくなってから、歯車が狂いだした。

 前まで普通に使えていた法術(※奇跡の術)が、上手く使えないようになってきたのである。


 

 結界の構築にかなり時間がかかるようになった。

 しかも、一度創った結界を、長い時間維持できなくなった。



 最初、姉に何か呪い的なものをかけられたのだろうと思った。

 しかし婚約者のルグニスに有名な呪術師を呼んで、グリージョの体を調べてもらったが、呪いはかかっていなかったことが判明した。



 それどころか、姉マリィがグリージョの力を増幅していた、とわかった。

 もちろん、グリージョは呪術師の言葉を信じなかった。



 しかし時間が経つにつれて、だんだんとその言葉に真実味が帯びてきた。

 ……マリィがかけてくれた強化魔法。



 それは器用さと魔力量にプラス補正をかけるものだった。

 しかしその強化魔法が、つい先日完全に切れた。



 わずかにのこっていた強化の力で、なんとか結界を構築・維持していたグリージョだったが……。



「結界が……結界がでない……どうなってるの……?」



 そう、先日からついに、結界が作れなくなったのである。

 何度もタメしたが、今までのやり方で結界が作れないのである。



 さもありなん。

 今まで結界が使えていたのは、マリィがグリージョの器用さを、強化していたからだ。



 グリージョには魔法の才能なんてこれっぽっちもない。

 そんなカノジョが、マリィの補助もなく結界という難易度の高い魔法が、使えるわけがないのだ。



「くそ……くそ! どうしよう……どうすればいいのよ……」



 グリージョは、怯えていた。

 結界術が使えなくなったと知られてしまうことを。



 現在、王都を守る結界は完全に消えている。

 こんな状態でモンスターの襲撃に遭ったらひとたまりも無い。



 そして……審判の時は来た。

 ついさっき、大量のモンスターが王都に押し寄せてきたという情報が入ってきたのである。



 だが……。



「グリージョ」

「っ! ルグニス、殿下……」



 ルグニス王太子の心配そうな声が、ドアの向こうから聞こえてきた。

 とりあえず、怒ってなくてほっとする。


 だが完全に安心できたわけではなかった。



「ど、どうしたのです?」

「いや、ずっと引きこもってると聞いて、心配して様子を見に来たのだ」

「そう……ですか……」



 そんな風に大事にされることは、うれしい。

 だが同時に恐い。



 法術が使えないと彼に知られたら、捨てられてしまう。

 そんなのは嫌だ……!



(あたしは、聖女になったの。あのグズ姉から婚約者の地位を奪い手に入れた、国母となるチャンス! みすみす、逃してたまるものですか……!)



 ……グリージョは、結界が使えなくなることで、王都の、王国の人たちに迷惑かけることなんて、みじんも気にしていなかった。



 彼女は自分の地位を失うこと、それのみに固執していた。

 ……姉もエゴイストなら、妹も同じく自己中心的だった。



 似たもの姉妹、というのだろうか。

 それはさておき。



(とりあえず外の様子を聞いてみましょう)

「ねえ、殿下。魔物はどうなったの?」

「ああ、我らが王国騎士団が追い払ったよ。君の結界の出番はなかった」




 心底、ほっとするグリージョ。

 だがこの均衡がいつ壊れるかわからない。



 早いところ、この状況を打破する手を撃たないと。

 


(……認めましょう。あのグズが、あたしを強化してたってことは)



 そうしないと自尊心を保てなかった。

 ……自分が無能であるということを認めることと、ほぼ同義なのだが。



(ようはあのクズ姉は、いにしえの時代に居た魔法使いたちでいうところの、杖。杖が手に入れば、またあたしも前みたいに、上手に法術が使えるようになる……!)



 ……まあ実際には、触媒というより、マリィそのものが魔法使いなのだが。



「ねえ、殿下。お願いがあるの……」



 グリージョはルグニスを招き入れる。

 わざと薄着となって、彼を誘惑する。



 ルグニスはグリージョの裸体に頬を赤らめ、目をそらしながら尋ねる。



「な、なんだい?」

「姉を探しだしてきてくださらない?」

「マリィを? あの罪人を連れ戻す必要がどこにある?」

「あたし、やっぱりあの姉が呪いをかけたのだと思うの。ずっと体調が悪くて……ごほっごほっごほっ!」



 わざと空咳をしてみせると、ルグニスの顔が怒りで真っ赤に染まる。



「やはりそうか! ちくしょう、妹が美しく有能だからって、呪いなんぞかけよって! ゆるせん!」



 あまりにあっさりと、ルグニスが思い通りに動いてくれて、内心でにやりと嗤う。



「わかったよ、グリージョ。マリィを探す。そしてここに連れてきて、呪いを解く。しかる後に、処刑してみせよう!」


(まあ処刑されると困る。その前に確保すれば良いか)



「ええ、お願いねえ」

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