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【書籍化】転生魔女の気ままなグルメ旅~婚約破棄された落ちこぼれ令嬢、実は世界唯一の魔法使いだった「魔物討伐?人助け?いや食材採取です」  作者: 茨木野
二章

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114/142

114.フルーツタルト




 マリィは農園を潰して回り、蓬莱山の果実を集めまくった。

 集めたそれらをその都度、カイトのもとへと送る。



 ややあって。



「魔女様! 完成しました!」

「でかしたわカイト!」



 カイトが空間の穴を通り、マリィのもとへとやってきた。

 そこは最初に襲撃をかけた桃園。



 カイトの手には、巨大なフルーツタルトがあった。



「おっきぃけ~~~~~~~~~きっ!」



 テンション爆上がりのマリィ。

 その目は夜の星空よりも美しく、真昼の太陽よりもさんさんと輝いていた。


「良い仕事っぷりよカイトぉ!」



 もうこの興奮具合である。

 食べずともわかる、絶対に美味い……!



 レジャーシートを広げ、そこに座るマリィ。

 カイトはケーキを切り分けようとしたのだが……。



「いい! 私が自分で切るわ! ぜぇんぶ私のものよ!」

『強欲すぎんだろこいつ……』



 隣にちょこんと座る黒猫のオセ。

 マリィは風の魔法で作った刃を、スッ……とケーキに入刀。



 綺麗に切り分けた巨大フルーツタルト。

 マリィはフォークでぷすっ、とそれを刺して、口に運ぶ。



「ん~~~~~~~~~! まいっ!」



 口の中に広がるのは、たくさんの果物たちが織りなす、種類の違った甘み、そして酸味。



「クリームの甘みと、たくさんの果実の酸味などが合わさって! 最高に美味しいわ!」

「ありがとうございます!」



 もっもっもっ、とマリィは凄まじい勢いでタルトを食べていく。



「この……しっとりとしたタルト生地もまたいいわ。果実がなくてもこれだけでいけちゃうっ」

 


 マリィは恍惚とした笑みを浮かべながら、爆速でケーキを食べていた。

 その間に……カイトは別のものを用意する。



「むぐむぐ……それはなぁに?」

「フルーツサンドです!」

「! 馬鹿な……まださらなる別のおいしいを、よういしていただとっ!」



 カイトが取り出したのは、たくさんのバスケット。

 蓋を開けると、ぎっしりフルーツサンドが詰まっていた。



「え、ええっと……これは、魔女さま以外の人たちの分で……」



 この優しい少年は、マリィのおやつを用意する一方、リアラ皇女たちもお腹すかせてるだろうと思い、フルーツサンドも用意していたのだ。



「なにぃい~? 私にだす以外のご飯を、作ってたですってぇ……!」



 ごごご、とマリィの体から魔力が吹き出す。

 どうやらマリィもフルーツサンドを食べたいようだ。



 自分の分がないことに、憤りを感じてるのだろう。



『あんま食い意地はんなよ……そんなうまそうなタルト、自分だけ作ってもらっといて……』

「それはそれ、これはこれ、でしょう! カイト……!」


 

 するとカイトは笑顔で言う。



「魔女さまの分も、あります!」

「ん、じゃあいいわ」



 オセは小さくため息をつく。

 子供かこいつは……と。



「クッキー人形さんたちの分もありますよ!」

『おお、ありがてええ!』



 拉致され、農園で働かされていたクッキー人形の奴隷達が涙を流す。



『なんて優しいんだ……』『こんなちっこいのに人間ができててすげえ……』



 てれっ、とカイトが頭をかく。



『あんがとな、坊主。でも……おれらはこの体じゃ、食べたくても食べれないんだ。気持ちだけもらっとくわ』

「そう……ですか。せっかく一杯作ったんですけどね……」



 マリィがタルトを全て食べ終える。

 ちょっと自分のお腹をさすったあと……。



 ぱちんっ、とマリィが指を鳴らす。

 頭上に魔法陣が展開し、そこから接骨木ニワトコ神杖つえが出現した。



『なにすんだよ、魔女様? 接骨木ニワトコ神杖つえなんて取り出して』

「別に。そこのクッキー人形のあなた、ちょっとこっちおいで」



 リーダー格らしき人形が、とことこと近づいてくる。



「悪いようにしないから、少し、あなたのクッキーの一部ちょうだい」

『ちょ、おま……! 食い意地はりすぎだろ! 相手は元人間だぜ!』

「真面目な話よ」



 クッキー人形はためらいもせず、右腕を自分でおって、差し出した。



『あんたに命を助けてもらったんだ、腕の一本くらい、わけないさ』

「そう……ありがと」



 マリィはツンツンッ、と杖でクッキーをつつく。

 幾重もの魔法陣が展開する。



「解析完了。もう良いわよ」



 マリィが杖を振るうと、折れたクッキーを修復魔法で元通りにする。

 そして空中に魔法陣を、新たに描く。



解呪ディスペルの魔法か?』

「少し手を加えた、オリジナルの解呪ディスペルよ」



 マリィは魔法陣を即興で完成させる。 そして、頭上に掲げた。



大解呪グレーター・ディスペル



 するとクッキー人形たちの頭に、それぞれ、魔法陣が浮かび上がる。

 魔法陣が頭の上から足下へと降りる……。



 すると、クッキー人形たちの体が光り出した。

 みるみるうちに、彼らの体が大きくなっていく。



「「「うぉおおおお! 元に戻ったぁあああああああああ!?」」」



 マリィの魔法によって、クッキー人形だった彼らが、元の、人間の姿に戻ったのである。

 彼ら驚き、そして……人間になれたことを、泣いて喜ぶ。



「奇跡だ!」「すげええ!」「人間に戻れたぞぉ!」「うぉおおおん!」



 感涙にむせるクッキー人形たち。

 そして全員が、マリィに頭を下げた。



「「「ありがとうございます、魔女様!」」」



 マリィは一瞥すると、すっ、と杖でフルーツサンドを指す。



「勘違いしないで。私はただ、カイトがせっかく作ったフルーツサンドが、傷んで駄目になって、捨てるのがもったいなかっただけ。さっさと食べなさいな」



 マリィがそういうと、みんなポカンとした表情になる。

 カイトがもう泣きながら、手を叩きながら言う。



「魔女様……ほんとうにおやさしいおかたです! 100%善意で治したとなったら、みんなが気にしてしまうからと、無理くり理由をつけて、治してくださるなんて!」



 とカイトがまたしてもインフルエンサー(駄目な方の)っぷりを発揮。

 みなが勘違いし、大泣きしながら、マリィに頭を下げる。



 ……まあ、マリィの言ったことは100%本心なのだが。

 


「ちょっと食べ過ぎて、お腹いっぱいになったからね」



 みんなが涙を流しながら、カイトの作ったフルーツサンドをほおばる。

 再び人間に戻れたことを、魔女に感謝しながら。



『残すのもったいないからみんな人間に戻したっていうがよぉ、異空間にでも保存しておけばよかったんじゃね?』

「……!」


 

 マリィはくわっと目を見開いた。

 その考えは……思いつかなかったようだった。



 こういうところ、ちょっと抜けてる、魔女なのだった。 

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