109.嫉妬の魔女
マリィが再出発した一方その頃。
蓬莱山の中央にある、不死の山。
その頂には1つの城があった。
だが見た目が通常の、レンガなどで作られる城とは、違っていた。
お菓子の城、とでもいえばいいのか。
城を構成するもの全てが、クッキーやクリームなどのお菓子で作られているのである。
お菓子で城なんて作れば、自重に耐えきれなくなり崩れるはず。
だが彼女が特別な呪いをかけてるので、城は崩壊せずに建っていられていた。
さて、そんな城の玉座には一人の美しい女が座っていた。
年齢は18くらい、つまりマリィと同じくらいだろう。
だがマリィと違い、妖艶な大人の雰囲気を醸し出してる。
背は高く、胸は豊満で、髪の毛はふわふわとした金髪。
彼女を魔女たらしめる象徴として、頭には三角帽子が乗せられていた。
『マーサさま! 嫉妬の魔女、マーサさま!』
てこてこ、とマーサの前に1枚の人の形をしたクッキーがやってくる。
人形ほどの大きさのクッキーは、意思を持ってるようで、マーサに向かってしゃべりかけてきてる。
マーサと呼ばれた魔女は……、玉座に座りながら棒付きキャンディをなめていた。
『マーサさま大変です! 蓬莱山に侵入者が……』
するとマーサは加えていたキャンディを引き抜いて、それをクッキー兵士に向ける。
そして、棒をくいっ、と自分の方に向けると……。
『うわぁああああああああああ!』
クッキー兵士は強い力で引き寄せられる。
マーサはクッキーを手に取ると、ぐっ、と力を込める。
「あんた、何様? アタシが発言を許してないのにしゃべるとか、良い度胸ね?」
ぐっ……と少し力を込めるだけで、クッキー兵士の身体にひびが入る。
『ひいぃい! すみませんでした、マーサ様!』
「それと、嫉妬の魔女とかだっさいなまえで呼ばないでくれない? それ、ヴリミルのババアが勝手に付けたあだ名だし、きらいなのよね、アタシ」
『すみませんでした、マーサ様!』
ぱっ、とマーサが手を離す。
クッキー兵士はマーサから距離を取って、地に頭を着ける。
「いいわよ、しゃべって」
『は、はい……マーサ様、蓬莱山に侵入者です』
「知ってる。しかも魔法使いでしょ?」
蓬莱山全体にかけていたまじないが、解除された。
こんな芸当ができるのは魔法使いだけである。
「呪いを解くとか結構高位の魔法使いね……。で、そいつの正体はわかってるの?」
『は、はい……マリィとか呼ばれておりました』
「んなっ!? ま、マリィ……それで魔法使い……まさか、暴食の魔女ですって!」
『ぼ、暴食の魔女……?』
マーサが師匠から嫉妬の魔女と名を付けられたように、マリィにも名前があった。
暴食の魔女、ラブマリィ。
「あいつが……どうしてここに!? くそったれ!」
マーサの美しい顔が憤怒の色に染まる。
どうやらマーサとマリィの間には、少なからず因縁があるようだ。
「いやでも……マリィのやつは死んだって……まさか転生? いやでも……とにかく今は情報が足りないわ。おいおまえ」
『は、はい! なんでしょう!』
「マリィが本当に暴食の魔女なのか、確かめてきなさい。兵士は貸してあげる」
『は、はい……! すぐに!』
クッキー兵士が出て行く。
マーサはいらだちげにキャンディーをかみ砕いた。
「もしもマリィが転生してきたとしたら……ふっ、いいわよ。今度はあたしがぶっ殺してやるわ。どっちが上か、今度こそ決着つけてやるんだから!」
マーサはマリィにたいして、対抗意識をもやしていた。
だが残念なことに……マリィはそのことをまるで知らないのだった。




