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偽物の魔法使いは大魔法使いと魔法開発史を再現する  作者: 雲居 残月
第19章 学年末試験

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19.4 体術試験の対策

 ――五月下旬。


 試験勉強の最後の追い込みが始まった。いつものようにグラノーラの部屋に集まって机を囲む。

 過去問を手に入れたおかげで、筆記試験は目処が立った。ウルミの魔法を修理して発動率の問題も解消した。残る懸念点は、ニーナとウルミの体術だ。


「そもそも、ニーナとウルミはどれぐらい体力があるんだ? 何時間ぐらいなら走り続けられる?」


「そうですね、五分ぐらいなら大丈夫だと思います」


「走るって疲れますよね。だから部屋で作業をしていた方がいいと思います!」


 ニーナとウルミの答えを聞いて、俺とグラノーラは顔を見合わせる。

 田舎育ちの俺たちは、朝から晩まで走り続けることが多かった。都会育ちでは、そもそも走ることが特別なことなのだと知る。


「体術の過去のテストは、十分間のランニング、格闘術の教師を相手にした徒手格闘、剣術の教師を相手にした木剣での模擬戦闘だ。この三つをクリアできる自信はあるか?」


 ニーナとウルミは、ぶんぶんと首を横に振る。


「ランニングは毎日走り込みをしてくれ。十分ぐらいなら、死ぬ気で走ればどうにかなる」


 二人は絶望の顔でうなずく。


「格闘術と剣術は、別に先生に勝つ必要はない。合格と言われればいいんだから。先生が教えた正しい動きをおこなえればいい。構えだけでいいから、ちょっとやってみてくれ」


 ニーナとウルミは、徒手格闘の構えをする。グラノーラが渋い顔をする。俺も苦い顔をした。


「お嬢、ちょっとポーズを取ってみてくれ」


「いいわよ」


 グラノーラは軽く腰を落とす。両手を軽く前に出して、臨機応変に対応できるようにする。


「今からお嬢の胸部を拳で突く。お嬢、払い落としてくれ」


「こっちから殴ってもいい?」


「そういうのは求めていないから、払い落としてくれ」


 グラノーラは頬を膨らませる。


 俺はグラノーラの正面に立ち、正拳を打ち込む。パンッと乾いた音がした。グラノーラは半身になり、俺の拳を払ってそらした。


「すごい」


 ニーナが感動したように言う。ウルミは目をパチパチして驚いている。


「グラノーラさんって、ガチに強い人ですか?」


「ちなみにお嬢は、徒手格闘は俺よりも強いぞ。剣術は俺の方が上だが」


 グラノーラは、得意げにピースをする。


「うちのフルール家は、武闘派貴族なのよね。戦争にもよく行くわよ。剣は、アステルのランドール家がガチで強いから敵わないんだけどね」


 グラノーラは、俺の家のことを言うときに、かなり自慢げだった。


「あの、アステルさんの方が体格がいいのに、なぜグラノーラさんの方が格闘が強いのですか?」


 ニーナは不思議そうに尋ねる。俺はため息をついたあと答える。


「そりゃあ、お嬢のやつは、自分の骨が折れようが、肉がえぐられようが関係なく攻めてくるからな。『癒やしの手』ですぐに治せるから、それ前提で戦う。武器を持って距離を置かないと、正直に言って相手をしたくない」


 俺が説明すると、グラノーラは得意げになった。いや、褒めていないぞ。おまえの狂戦士っぷりを非難しているだけだぞ。

 俺は、ニーナとウルミに顔を向ける。


「今の攻防で重要だったのは、構えて動き終わるまで体が一切ぶれなかったことだ。

 そもそもニーナとウルミはまっすぐ立てていない。だから構えも動きもおかしいんだ。


 正しい姿勢をするには、まず筋力と体力が必要だ。そして自分の体のイメージも大切だ。筋力、体力は今からでは難しいから、イメージの方を補正していく。

 俺とグラノーラで、姿勢を細かく直すから、なるべく正確に記憶してくれ。姿勢が正しければ無駄がなくなり、動きもおのずとよくなる。質問は?」


 特にないようだ。それから三十分ほど、徹底的に姿勢を修正して、それっぽく見えるようにしていった。


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