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偽物の魔法使いは大魔法使いと魔法開発史を再現する  作者: 雲居 残月
第18章 隠された歴史

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18.3 挿話:サンチェス・テレス

 魔法学校に入学するときに父親から言われた。高位の貴族に仕えろ。家督を継いだときに、その縁が役に立つと。

 父親自身が、そうして王国で地位を保ち続けた。同じことを繰り返すことを、父親は自分に期待していた。


 サンチェス・テレスは魔法学校に入ったあと、誰に仕えるべきか考えた。答えはすぐに分かった。メザリア・ダンロスだ。

 彼女は同じ一年生の中で、最も身分が高く、能力が高かった。派閥を作ることに熱心で、入学式の前から活動を開始していた。


 メザリアは入学者名簿を持っており、有望な貴族には入学前から声をかけていた。

 サンチェスはそうした勧誘は受けていない。テレス家は子爵であり、高位の貴族ではなかったからだ。


 メザリアのもとには、上級生も含めて多くの生徒が集まった。メザリアは、それぞれの者に貢ぎ物を要求した。どれほど本気なのかを測るためだ。

 サンチェスは実家に相談して、美しい布や宝石をメザリアに贈った。その甲斐あり、メザリアから直接命令を受けて、雑用をこなす係に任命された。


 メザリアは命令を出すときに、二人ずつ組ませることが多かった。競争心を煽るためと、嘘の報告をさせないためだ。

 何か命令を出したときには、それぞれ別に報告を受ける。より的確な報告をした方が評価されるために、互いに口裏合わせをすることもできない。


 サンチェスは、ムジカ・フロアと組まされることが多かった。子爵の子息という同じ身分のため、上下関係が生じにくいと判断されたのだと思う。

 あと、ムジカは筋肉質の男で、サンチェスは小太りで背が高い。二人が並ぶと、威圧感が半端ない。そうした点も、組まされる理由だったのだろう。


 その日サンチェスは、ムジカと一緒に、アステル・ランドールという同じ学年の生徒を呼びに行った。黒髪黒目の神経質そうな男で、どこの派閥にも属していない。


 いったい何のために魔法学校に来ているのだろうと思った。貴族ならコネを作らないといけないはずなのに。こいつは同郷のグラノーラ・フルールとしか行動を共にしていない。

 新興貴族だから、貴族としての振る舞いが分からないのかもしれないと思った。


 最終的にその日は、ムジカとともに昏倒させられて終わった。それからしばらくのあいだ、魔法が使えなくなって焦った。

 ムジカは、いつかアステルにやり返すと言っていたが、サンチェスは違う感想を持った。君子危うきに近寄らず。あれは、触れてはいけないたぐいの人間だ。無茶をやって、危険を自分のもとに引き寄せるタイプの男だと思った。


 ムジカがアステルの尾行を続け、魔法を奪われたという話を聞いたとき、自分の考えは正しかったと確信した。

 その後、アステルが何やら怪しい犯罪者とやり合っているという話を聞いて、やはり近づいてはいけない相手だと確信した。


 その後、メザリアが、記念館のダンロス家の部屋にアステルを連れてきた。サンチェスはアステルを見て、関わらない方がいいのにと思った。

 アステルは終始横柄な態度を取って帰っていった。メザリアから、鍵を届けて欲しいと言われたときは、何で俺がと思った。


 しかし、メザリアの命令は絶対だ。サンチェスは仕方がなく鍵を持って、アステルの部屋に行った。簡単に言葉を交わして、鍵を渡して立ち去った。


 アステルとは距離を置く。昏倒させられたことも気にしないようにする。


 俺は貴族としては二流だが、宮廷サバイバルだけは一流になりたい。そのために、行動を縛る執着は持たないようにしている。

 俺の体は小太りで鈍重だ。しかし心は違う。俺は軽やかなサンチェスと呼ばれたいと常々思っている。


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