15.5 お詫びの品物
数日が経った。魔法学校で授業を受けたあと、俺は宿舎に戻った。入り口で管理人から来客があることを知らされた。
管理人室の椅子には一人の老紳士が座っていた。俺が部屋に入ると立ち上がり、慇懃に頭を下げてきた。
「フロア家の者です。先日はこちらの手違いでご迷惑をおかけしました」
思ったより早かったな。フィーの工作が功を奏したのか。
「いえ、お気になさらずに」
俺は爽やかに応じる。ここでもめて、こじれさせたくはなかった。
「こちらはお詫びです」
立派な箱を渡された。何か分からないが、笑顔で受け取っておく。老紳士は去った。俺の手元には箱だけが残された。
家の名前を出して持ってきたものが罠のわけはないよな。最近俺は疑り深くなっている。霊魂の目で中身を探る。さすがに罠はない。中身は宝飾品のようだ。
俺は廊下に出て、グラノーラの部屋の前に行く。ノックして扉を開けて、中に入った。
「何、アステル?」
両手を挙げて構えている。どうやら魔法の修行をしていたようだ。大量の霊体の糸を周囲に伸ばしていた。
「何を探っていたんだ?」
「他の生徒たちの様子」
「盗み見かよ」
「情報収集よ。小さい集団が身を守るためには必要でしょう」
グラノーラは俺とは違い、策謀家のところがある。
「ほれ」
俺は、フロア家からもらった箱をグラノーラに渡す。
「何?」
「宝飾品だろうな。フロア家が詫びを入れてきた」
「万事解決というわけ?」
「だろうな。そうあって欲しいところだが」
「それで、その箱を私に渡してどうしたいの?」
「プレゼントだよ。俺が持っていても仕方がないだろう」
「そう」
グラノーラはにっこりする。
「それじゃあ、せっかくだし、いただいておくわ」
箱を受け取り、蓋を開ける。宝石で飾られたネックレスが出てきた。
「あら、素敵なデザインじゃない。アステルいらないの?」
「俺が着けてどうするんだよ」
「私がもらっていいの?」
「他に誰にやるって言うんだよ」
「ふーん。じゃあ、私が使うわね」
グラノーラはご機嫌だ。たまには、喜ばせておくのもいいだろう。
「ああ、あと、ニーナとウルミに連絡しておいて欲しいんだ。今週末の事務所での修行はなしにする」
「何かあるの?」
「ああ、交換条件だよ」
俺はことの顛末を説明する。
「なるほどね。いちおう保険をかけてから教えるのね」
「そういうことだ。それじゃあ、俺は行くから」
俺は引き返そうとする。
「もう少しゆっくりしていきなさいよ。お菓子を出すから」
やれやれ、付き合うか。俺はグラノーラの部屋で、それから一時間ほど談笑した。




