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偽物の魔法使いは大魔法使いと魔法開発史を再現する  作者: 雲居 残月
第15章 裏社会の暗殺組織

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15.1 精霊命名

 パロスの研究室に呼び出された週の週末、俺たちは貧民街の事務所にいつものように集まった。

 メンバーは、黒髪黒目の俺と、緑髪に緑目のマル、金髪に青い目のグラノーラ、赤髪で剣士のココルと、商人の娘である青髪眼鏡のニーナ、時計職人の娘である橙髪に橙目のウルミの六人だ。


 今日は俺が作った『そよ風』の人工精霊を披露することにした。小さな箱に収めて、『そよ風』の人工精霊を持ち込んだ。蓋を開けると、俺以外の全員が箱の辺りを凝視して精霊の存在を感じようとした。


 箱の周りでは微かな風が起こり、ぐるぐると回っている。俺が霊餅(れいへい)を『そよ風』の人工精霊に与えて、回るように指示したからだ。


 最初に反応したのはココルだった。


「見えました、アステル様、大師匠。とても小さいですが、確かに精霊がいます」


 ココルは興奮気味だった。

 次に声を出したのはグラノーラだった。


「あー、いるわね。なんかビクビク動いているやつが。これが『そよ風』の人工精霊なのね。本物の風の精霊とは、だいぶ形が違うわね」


 マルが嬉しそうに補足する。


「人工精霊は、必ずしも本物の精霊を完全に模倣する必要はない。目的の機能を果たせればそれでいい。そして、オリジナルが存在しない人工精霊を作ってもよい」


 それは、俺の模倣が不完全だったということなんだが。


 マルの話を聞き、ウルミが素早く手を挙げた。


「それって、マル先生。自由な発想でカラクリを作るように、人工精霊を創造していいってことですか?」


「ああそうだ。好きにしろ」


 ウルミは下を向いて、ぶつぶつとつぶやきだす。いろいろと案を考えているのだろう。


「それで、おまえは見えたのか?」


 マルがウルミに突っ込む。ウルミは慌てて箱の周囲を観察し直す。


 ニーナが、控えめに手を挙げた。


「目の大きな魚みたいですね」


「その目の部分が、魔力湧出口だ。アステルが作った最初の人工精霊は部品が雑で大きい。だから見分けがつきやすい」


「雑で悪かったな」


 俺はマルに文句を言う。俺としては、完璧なできだと思っていたのだが、他人の評価はそうではないようだ。


「むむむ、何となく、ぼんやりと、微かに見えるのですが、薄すぎてしっかりとした形は分かりませんね」


 ウルミがメモ帳にスケッチを描いて見せてくる。


「きちんと見えているじゃないか」


「見えないですよ! 部品が全然分からないですし!」


「だから、部品一つの人工精霊だ」


「そ、そうでした!」


 ウルミを相手にするのは疲れるなと思った。


「よし、少し休憩しよう。みんなでタラバルさんのパンでも食べよう」


 箱に『そよ風』の人工精霊をしまって休むことにした。


「ああ、アステル」


「何だ、マル。人工精霊は箱の外に出しておけ。おまえの武器として、いつでも使えるようにしておけ」


 俺は、少し考えて返事をする。


「人工精霊を使い慣れろということか?」


「そうだ。全自動魔法は強力で誰でも使えるが融通が利かない。おまえはもう、いっぱしの魔法使いだ。人工精霊を従えて操る術を身に付けろ。その操作の経験が、魔法再現器を作る土台になる」


「なるほど。ふだん慣れていることを、自動でできるようにするわけだな」


「そうだ。あと、その『そよ風』の人工精霊に名前を付けろ。より親密になれば、命令をよく聞いてくれるようになる。それに、命令を与えるときに、『そよ風』の人工精霊と毎回呼ぶのは長すぎるからな」


「うーん、名前か」


 俺が悩んでいると、グラノーラが身を乗りだしてきた。


「風の人工精霊だから、カゼーとか」


「センスゼロだな」


「ふぎゅう」


 グラノーラは殴られたように目をつむった。

 今度はココルが口を開いた。


「手下一号とかは、どうですか?」


「長い、却下」


 マルに一蹴されてココルは撃沈した。


「はい、はーい。大回転つむじ風」


「だから、長いのは駄目だと言っているだろうが」


 ウルミがマルに駄目出しされた。

 他の人の意見が出たあとにニーナが提案してきた。


「絵本や昔話の風の精霊はシルフと言いますよね。さらに一文字縮めて、シフとかどうですか?」


「なるほど。いいんじゃねえのかマル?」


「要件は満たしている。あとはアステルがよいと思えばそれでいい」


「じゃあ、ニーナ案のシフで」


 命名者になったニーナは嬉しそうだった。俺は『そよ風』の人工精霊にシフと呼びかける。俺の周りで風がぐるぐると回った。精霊の感情は分からないが喜んでいるようだった。


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