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偽物の魔法使いは大魔法使いと魔法開発史を再現する  作者: 雲居 残月
第13章 精霊博物館

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13.3 挿話:ウルミ・カカラム

 人生は、時計がカチコチと動くように規則正しくは、進んでくれない。

 人間という歯車が加わり、急に針の速さが変わったり、向きが変わったりするものだ。


 ウルミ・カカラムは時計職人の娘として生まれた。カカラム家は、そこそこ大きな工房を持っており、そこそこ多くの職人を抱えている。

 工房で作っているのは時計だ。歯車とゼンマイで動くカラクリの道具は、時間を計測して知らせてくれる便利なものだ。

 非常に有用なものだが、世の中に数は少なく、貴族や富裕な商人ぐらいしか所有していない。


 時計を作るのには、多くの時間がかかる。そのため、職人やその家族の生活費を稼ぐために高価な宝石で飾り立てる。

 美しい箱に収めて、表から見える部品には金や銀や宝石をちりばめる。そうすることで高い価格にして納品する。


 ウルミは小さい頃から、時計作りを見て育った。玩具代わりに部品を自作して、ゼンマイで動く車や人形を組み立てて遊んだ。

 知識も貪欲に吸収した。図面の描き方、歯車やゼンマイの計算法、木材や金属のあつかい方も学んだ。新しい知識を吸収するごとに、ウルミの周りには試作品が大量に作られていった。


 十歳になった頃には、大人の職人たちとほとんど変わらない仕事ができるようになった。そんなウルミを父親は呼んだ。そして、カカラム家で所有している魔法を受け継ぐ気はないかと尋ねた。


「どんな魔法なの、お父さん」


「『取り外し』の魔法だ」


「めっちゃ、面白そー!」


 ウルミは魔法を受け継いだ。それからしばらくは工房は無茶苦茶になった。ウルミが片っ端から、さまざまな道具の部品を取り外していったからだ。


 幸いなことに、そのいたずらもすぐに収まった。魔法を使うには魔力を消費する。だから連続して使うことはできない。

 それに、ウルミは成功率が低いから、魔法をかけようとすると何度も失敗する。大人たちはその段階でウルミを捕まえる方法を身に付けた。カカラム家の工房は、バラバラ地獄から解放された。


 十二歳になった頃には、ウルミは大人に混じって時計作りをするようになった。年齢は子供だったが、大人としてあつかわれた。

 十四歳になったウルミは、再び父親に呼び出された。


「なあ、ウルミ。魔法学校に行く気はないか?」


「行くと何があるの?」


「うーん。何があるのかな。お父さんは魔法学校に行ったことがないから分からないなあ」


「ふーん。それって面白いの?」


「どうだろう。確定的なことは言えないが、おおむね面白いのではないかと推測する」


「じゃー、行くよー!」


 それからしばらく経ち、ウルミは魔法学校に行くことになった。大量の道具を木箱に入れて、その木箱を背負って宿舎へと行った。


「へー、自分の部屋があるんだ。すごいね、魔法学校! これで三年間、いろいろなものを作りたい放題だ!」


 ウルミは、何を作ろうかなと思った。魔法学校には、外にはない珍しいものもあるらしいので、それを複製すると面白いかなと思った。


 宿舎に入って数日後に入学式があった。部屋で工作をしていたら、先生が呼びに来て、出席するようにと言われた。自分も出るのかと驚いて、式典会場の講堂へと向かった。


 一年生が集まって、それぞれ席に座っていた。建前では貴族も平民も同列ということだったが、席には序列があるようだった。

 前の方が高い身分の貴族で、後ろの方がウルミのような庶民だ。


 ふーん、面倒そうだなと思いながら、後ろの方に座った。周囲を見渡したウルミは、庶民が座る場所に紛れ込んだ、どう見ても貴族の男女を見つけた。


 一人は、長く美しい金髪に、吸い込まれそうな青い目の美少女だ。もう一人は、黒髪黒目の神経質そうな少年だ。


「見て、アステル。ここからなら、入学式の会場が一望できるわよ。戦のときに、高い丘に陣取るようなものね。誰が私を殴りに来ても、すぐさま対応して撃退できるわよ!」


「あのなあ、お嬢。入学式の日に、他の生徒を殴りに来るやつがいるわけねえだろう。生徒はそれぞれ、自分の身分に応じた席に座っている。だから、もっと前に行って座れ」


「えー、それじゃあ、アステルと並んで座れないじゃない。ここでいいわよ」


「はあ。お嬢が和を乱したツケは、俺に来るんだぞ」


「いいじゃない。アステルだって嬉しいでしょう。私が隣に座っていて」


「まあ、嬉しくないことはない」


「えー、それ、どっちよ!」


 何か、めちゃくちゃ仲がいいなあ。幼なじみだろうか。ウルミは周囲を見渡してみる。当たり前だけど知っている人は誰もいない。


 うーん。もしかして三年間、前途多難?


 まー、いっか!


 ウルミは、その場でぴょんぴょんと飛び跳ねながら、入学式が始まるのを待った。


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