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偽物の魔法使いは大魔法使いと魔法開発史を再現する  作者: 雲居 残月
第13章 精霊博物館

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13.1 王立博物館

 どうやら、いろいろと学年主任のパロスにばれている。それに、対立しているメザリア・ダンロスの派閥にも、にらまれている。さて、どうしたものか。


  ◆◆◆


 ――二月上旬。


 その日、俺は仲間たちと一緒に学校を出て、ガゼー地区の事務所へと移動した。今日は、ウルミが初めて事務所に顔を出す日となった。


 事務所の机を囲んでいるのは、黒髪黒目の俺と、俺の主筋である金髪に青い目のグラノーラ、俺の弟子である赤髪のココル、商人の娘で青髪眼鏡のニーナと、時計職人の娘で橙髪に橙目のウルミの五人だ。


「王都の中に秘密のアジトを持っているとは、お見それしました」


 ウルミが敗北感を顔に浮かべて俺に言う。机の上に、マルが半透明の姿を現すと、幽霊が出たと言ってウルミは椅子から転げ落ちた。


「ひあーっ、ひあーっ、幽霊ですよ、幽霊!」


「騒々しいな、この娘は」


 マルが冷めた目でウルミを見る。


「えええええ! みなさん、幽霊が怖くはないんですか?」


 ウルミに言われて、そういえば幽霊と言ってよい存在だなと一同思った。

 俺はウルミに、マルのことを紹介する。


「こいつはマル。本名はマルテシア・マルルマール。五百年前の大魔法使いだ。俺たちの魔法の師匠をしている。

 本当は俺に転生したんだが、独自の霊体の体を所持していて、姿を現したり消えたりすることができる」


「あの、情報量が多すぎるのですが」


 ウルミは混乱した顔をしながら、椅子の背に隠れて言う。


 まあ、確かにそうだな。これまでのことを一気に伝えたら、意味不明の妄言と思われるのがオチだろう。

 俺は、これまでにあったこと、教えてもらったことをウルミに伝えた。


「なるほど~! 魔法というものは突然誕生したものではなく、先人の積み重ねによって一つ一つ発展したものだったのですね!」


 ウルミはメモを取りながら聞く。


「驚かないのか?」


「逆に腑に落ちました! 私は時計職人の娘ですよ。時計の全ての部品が、ある日いきなり誕生したと言われて信じられますか?」


「無理だろうな」


「そうですよ。一つ一つ技術が積み重なって今の形になったと言われた方が、よほど納得できますよ!」


「なるほど」


 ウルミはすごい勢いでメモを取っている。そういえば、これまでのメンバーで、会話の内容をメモする者はいなかった。知識を学ぶという意味では、ウルミの態度の方が適切だと。


「それで、今日はみんなで集まって何をするんですか、マル師匠!」


 劇的な環境変化のはずなのに、ウルミはもう適応している。茫然自失になるより、目の前の課題に取り組む方が落ち着くタイプなのかもしれない。


「そうだな、精霊に触れる機会を得たい」


「おい、マル。森の精霊を見に行っただろうが。また森に行くのか?」


「アステル。おまえが見たのは、精霊の中の一つにすぎない。この世界には、何千、何万、何億という精霊がいる。それらは全て異なる姿や能力を持っている。

 より多くの精霊を見て、その特徴を研究することは、人工精霊を作る第一歩になる。自然に学べというやつだよ」


 なるほど、言わんとしていることは分かる。しかし、そんなにたくさんの精霊を見て回れるほど人間の寿命は長くはない。


 ニーナが挙手して発言を求めた。


「マル先生、世界各地を巡るというわけではないんですよね」


「そんな暇はないだろうな」


「それでは、世界に集まってもらった方がよいですよね」


「何か、考えがあるのか?」


「はい。博物館に行けばよいと思います。王国中のさまざまなものや動植物が集められていますから」


 ニーナは、王都にある王立博物館について説明する。広い敷地の公園があり、その中に施設が建っていて、動物園や植物園もあるという。


「行ってみる価値はありそうだな」


 マルは興味を持ったようだ。


「それじゃあ、みんなの予定を確認して、特に問題がなければ今週末に行くってことでどうだ?」


 俺の提案に全員が同意した。集合場所は、魔法学校の入り口を出たところにした。


  ◆◆◆


 土曜日の朝に魔法学校の入り口で合流した。ウルミが外出届を出したことがなくて手間取った以外は、特にトラブルはなかった。

 王都の朝の大通りは、馬車や人が多く行き交っている。世の中のほとんどの人は、魔法とは関係なく生きている。


 王都は初期の頃から徐々に拡張されているために、三重の壁に囲まれている。古い家ほど中央に近い場所に土地を持っている。

 外部との接触が多い大商人などは、外縁近くに土地を持っていることが多い。物流拠点などを作るには、どうしても広い土地が必要になるからだ。


 ――王立博物館は、外壁の外にある。もともと王都に住む人たちの余暇のための王立公園としてスタートした。そこに国内の珍しい物を集めて展示したのが王立博物館の始まりだ。

 動物の剥製、巨大な角や牙、美しい貝殻、華麗な工芸品、美しい鉱物や宝飾品、そうしたものを並べて、見て回れるようにした。

 この企画は大当たりして、年に数回のペースで開催されることになった。十年後には常設展示されるようになり、王都の住人の、週末の行き先の定番となった。

 その後、増えてきた収蔵品を収納するために分館が作られていった。生きたままの動植物を展示するための動物園や植物園も併設された。


 事務所でココルと合流した俺たちは、最も外側の街壁を出てしばらく歩き、広々とした王立公園にたどり着いた。


「初めて来るなあ」


 俺とグラノーラは王都出身ではない。だからここに来るのは初めてだ。ココルも、こうした娯楽施設には来たことがないそうだ。


「ニーナは、王都出身だから、何度も来ているよな」


「はい。小さい頃はよく家族で来ました。でも、最近は来ていないですね。だから懐かしいです」


「ウルミは?」


 俺は、新しく加わった仲間に声をかける。


「何度か見に来ていますよ。主に工芸品や宝飾品を見学に」


 あまり精霊とは関係のなさそうなものを見ているなと思った。


「それでマル。どの建物に行くんだ?」


 看板の前まで行って、マルに確認する。


「動物園に行こう。動物由来の精霊がいるかもしれないからな」


 俺たちは、ニーナを先頭にして、ぞろぞろと公園内を歩いていった。


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