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偽物の魔法使いは大魔法使いと魔法開発史を再現する  作者: 雲居 残月
第12章 カラクリ精霊

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12.1 学年主任

 ――一月下旬。


 その日、俺とグラノーラは魔法学校の先生に呼び出された。

 俺たち二人を呼び出したのは、一年の学年主任のパロス先生だ。波打った長い黒髪に黒いローブという、いかにも魔法使いといった姿の壮年男性だ。


 廊下を歩きながら、俺はグラノーラに言う。


「お嬢、話をするのは俺に任せろ。どんなぼろが出るか分からないからな」


 さらさらの金髪に美しい青い目のグラノーラは、首を縦に振る。


「分かったわ。アステルに任せるわ。それにしても何の話かしらね?」


「思い当たることが多すぎて、どれについて尋ねられるのか分からない」


 グラノーラは、あははは、と楽しそうに笑った。


 俺たちは、先生たちの部屋が並んでいる場所に来た。魔法学校の教師たちは、それぞれ個人の研究室を持っている。俺たちはパロス先生の部屋の前に行き、扉をノックした。


「どうぞ」


 部屋に入り、周囲を見渡す。壁が全て本棚で埋まっている。その棚にある本ははみ出して、床や机の上を浸食していた。


 俺は本の背表紙をいちべつする。どれも魔法関係の本だ。図書館では見たことがない古そうな本も数多くあった。

 精霊や人工精霊といった単語も見える。古い魔法に関心があるのか。王国の本流ではない魔法を研究しているようだ。


「何でしょうかパロス先生」


 俺が尋ねると、パロスは椅子に座るように促した。

 相変わらずの黒ずくめの服装だ。これまでじっくりとは見ていなかったが、肌も若干浅黒い。休日は菜園いじりでもしているのかもしれないと思った。


 俺とグラノーラが席に着くと、一通の手紙を渡してきた。


「匿名で届いたものだ」


 グラノーラの代わりに受け取り、内容を確認する。

 決闘代行の副業をしていること、そのために事務所を借りて、グラノーラとニーナと入り浸っていることが書いてある。


「剣は得意なのか?」


「ええまあ、嗜み程度には」


「なぜ決闘代行を?」


「短時間で稼ぎがいいんです」


「ここは魔法学校だが、その勉学との関連性は?」


「特にないです。お金に困っているんですよ」


 お金に困っているのは本当だ。何せ貧乏貴族だから。俺はどんな文句を言われるかと思い、身構えた。


「ダンロス家と対立しているそうだな」


「対立はしていません。目をつけられているだけです」


「降りかかる火の粉は払う方針なのか?」


「特に、そうしたことをしている覚えはないのですが」


「最近、一年生を中心に、一時的に魔法が使えない生徒がちらほら出て困っている」


「それは、困った事態ですね」


「魔法の勉強は順調か?」


「ええ、ぼちぼちです」


 俺は手紙を返す。パロスは受け取り、机の引き出しにしまった。

 パロスは椅子の背に体重を預けて、こちらを見てきた。


「二人とも、入学時よりもずいぶんと魔力量が上がったな。特にアステルは成長が著しい。何か特別な訓練でもしているのかね?」


「いえ、学校で定められた訓練を欠かさずしているだけです」


 これは本当だ。それ以上のことをしているのは黙っておく。


「アステルは、よく図書館を利用しているな」


「はい」


「蔵書には満足しているか?」


 どういった質問だろうと考える。


「王国ができてからの本は、よくそろっていると思います」


 それ以前の本がないことは、頻繁に利用していれば気づくことだ。そして、この部屋の本の背表紙を見る限り、パロスはそれ以前の魔法について関心がある。


「興味のある本があれば貸してやろう。そこで得た知見を共有してくれればいい。今の魔法は停滞しているからな」


 俺は警戒する。パロスの立ち位置や意図が読めない。


「あまり公爵家の面子を潰すな。向こうも引っ込みがつかなくなる。学生のあいだは、建前としては平等だ。しかし、そうではないことも分かるだろう。

 教師は、その点について手助けすることはできない。公爵家よりも身分の高い教師などいないのだからな」


 それはそうだろう。


「もう一つ、きみたちに頼みたいことがあって呼んだ。これは、アステルよりもグラノーラに言った方がよいだろう」


 グラノーラが、こちらに顔を向けてくる。話してよいかと確認を求めている。


「お嬢、どうぞ」


「何でしょうか?」


「きみたちは、何人か集まって小さな派閥を作っているそうだな」


「私たちにニーナを含めて三人なので、派閥ではなくただの友達関係ですが」


「一人、面倒を見てやってくれないか」


「えっ、友達になれってことですか?」


「そうだ。派閥に入らないのは構わないが、完全に孤立しているのはよくない」


 グラノーラは、俺に視線を向けて意見を求めてきた。俺は会話を引き継ぐ。


「誰ですか?」


 聞いてから考えてもいいだろう。


「ウルミ・カカラムだ」


 カカラムという家は知らない。貴族ではなく平民なのか。


「お嬢、知っているか?」


「時計職人の子でしたか?」


「そうだ。世間的には、野良魔法使いと言われる者だ。貴族になるつもりはないが、魔法を所有している。そういう家の人間だ」


 ニーナの家のようなものか。


「いいんじゃない。会ってみましょうよアステル」


「お嬢がそう言うならいいが」


 時計か。正直に言うと興味がある。これから人工精霊を作る段階に入っていく。細かな部品を組み立てて、一つの機構を作り上げていく。時計作りは共通点があるはずだ。


「それでは頼むよ」


 パロスの話は終わったようだ。せっかくなのでと俺は思い、パロスの部屋の本を見渡して、当たり障りのなさそうな本を一冊借りた。


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