11.3 研究施設
俺とグラノーラとココルとニーナの四人は、洞窟の中へと入っていく。
少し下ったあと平坦になった。幸いなことに足元は乾いている。天井は俺の身長の一・五倍ほどで、歩くのに不都合はなかった。
「どれぐらい広いんだろうな」
俺は松明をかざしながらつぶやく。マルが他の人にも見えるように姿を現す。
「そんなに広くはないだろう。上が居住空間なら、下は魔法の研究をする場所があればいいだけだからな」
「そりゃあ、そうだよな。無駄に広く作ると、時間も金もかかるし、維持も大変だし」
石造りの扉が見えてきた。苔むしている。かなり重そうで人力で開けるのは大変そうだ。
「不便そうな扉だな。魔法で開くようになっていたりするのか?」
俺はマルに尋ねる。
「どこかに魔力を流し込む場所があるのかもしれんな。物を動かす人工精霊と簡単な魔法再現器があれば作れる。人工精霊の魔力の供給は、周囲の生物を使えばいい」
マルが、自分ならこうするという話をする。
「なるほど。魔法を使えば、こういう扉も動かせるのか」
「ねえ、アステル。この出っ張ったところ、穴が空いていて棒を刺せそうなんだけど」
グラノーラは、壁から突き出た四角柱を指差す。四角柱には穴が空いている。
グラノーラは周囲を見渡し、少し離れた場所から金属の棒を拾ってくる。そして棒を穴に刺して力を込めて、扉を開けた。
「魔法なんていらないじゃない」
グラノーラに言われて、俺とマルは黙り込んだ。
俺たちは、扉の奥の部屋に入る。壁の素材は崩れて土が露出している。荷物や調度品は、残っていないように見える。魔法の道具が、どこかに残っていればよいのだが。
俺は霊魂の目で調べる。しかし、それらしいものは見当たらない。次に、髪の毛のような架け橋を周囲に伸ばして精霊探知をおこなった。
「……あった」
「何があったの?」
グラノーラが振り向いて尋ねる。俺は、壁際の土の塊を指差した。
「そこの土の山に、人工精霊らしきものが重なっている」
俺以外には、まだ分からないようだ。人の形のような人工精霊が見える。剣を抜いて、土の山を崩してみると、中から錆びた立方体が出てきた。
「何だこれは?」
大きさは手のひらに載るぐらいだ。霊体の一部、腕と思われる場所に重なっている。その腕の肩の位置に、立方体はあった。
俺は、説明を求めてマルを見る。
「魔像番兵の部品だろうな。これは、おそらく腕だ。腕二つ、足二つ、胴体一つで、五つの部品でできていたんじゃないかな。かなり雑なものだが、いちおう魔法の道具だ」
魔像番兵は、文献でしか見たことがない。岩や金属などでできていて、遺跡などを守っていると書いてあった。はるか昔に魔法使いによって生み出されたものと言われている。
「番兵というぐらいだから、戦ったりするのか?」
「構造の単純さから見て、ただの荷物持ちだろうな。魔像人夫といったところか」
「この立方体を持ち帰ればいいのか?」
「ああ、それでいい。試しに持ち上げて歩いてみろ」
俺は立方体を持って数歩移動してみる。魔像番兵の腕の形をした霊体は、立方体と重なったままだ。持ち帰るのに問題はなさそうだ。
「それじゃあ帰るか?」
「その前に、馬車でお食事をしましょう」
グラノーラが提案した。
「お菓子を持ってきています」
ニーナの言葉に、女性陣が喜びの声を上げた。
俺は洞窟を見渡したあと、グラノーラたちとともに遺跡の外に出た。
◆◆◆
その日は、王都に戻ったあといったん解散した。明日の日曜日に事務所に集まって、手に入れた魔像番兵の部品について研究する約束をした。
部品の立方体は俺が預かることになった。部屋に戻った俺は、表面を洗って、落とせるだけの錆を落としてみた。まだ汚いが、手に入れたときよりはましになった。
「こいつに本当に、これから魔法を学ぶ上での重要なヒントが隠されるのか?」
俺はマルに尋ねる。
「ヒントになるかどうかは、おまえたち次第だな」
俺は肩をすくめる。その日は、立方体を机の上に置き、就寝した。




