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偽物の魔法使いは大魔法使いと魔法開発史を再現する  作者: 雲居 残月
第9章 派閥と闘争

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9.1 派閥への招待

 ――十二月初旬。


 その日、俺たちは魔法学校の宿舎にあるグラノーラの部屋に集まった。

 机の上には、食堂から持ってきたクッキーやクラッカーがある。また、ニーナが持ってきた茶葉を使ったお茶もある。


 机を囲む席には、さらさらの金髪に美しい青い目のグラノーラ、青色の短い髪で眼鏡をかけているニーナ、そして黒髪黒目で陰気な顔の俺が座っている。

 また、姿は俺にしか見えないが、机の上にはマルも立っている。緑髪と緑目の、幼女の姿の大魔法使いだ。


「さて、今日の議題よ……」


 グラノーラが、クッキーを口に運んだあと話し始める。


「アステルの周りが、ハーレム化していることについて話し合いたいわ」


「ぶっ!」


 グラノーラの言葉に俺は思わず噴いた。


「ハーレム化って何だよ?」


「文字通りの意味よ。私、マル先生、ココルちゃん、ニーナ。あなたの周りには女性しかいないでしょう。

 名前ではなく、属性で言おうかしら。金髪碧眼の美少女、幼女先生、日焼け健康少女、知的眼鏡っ娘。これが由々しき事態でないと言えようか。いや言えまい!」


 グラノーラは立ち上がり、拳を振り上げる。


「いや、由々しき事態ではないだろう。周りに女性ばかりってのも違うだろう」


「それじゃあ同年代の男友達が、王都に来てから一人でもできたの?」


「うっ」


 転生神殿のおっさん、パン職人のおっさん、ラパンのじいさん。男の知り合いは、どれも同年代ではない。


「このペースで行くと、アステルは卒業するまでに、女性に囲まれて一大王朝を築くまでになると思うの。この事態を防ぐには、適切な指導が必要よ。どう思う、ニーナ?」


「わ、私は分かりません」


 男女関係には疎そうなニーナが、もじもじとして下を向いた。


「マル先生はどうですか?」


 マルが机の上に姿を現す。


「アステルは独善的だからな。友情など育めんだろう」


「おいっ!」


 俺が突っ込むと、マルはグラノーラの近くに逃げた。

 三対一かよ。まあ、魔法修行に忙しくて、学校内で人脈を作る暇などなかったのは事実なのだが。


 俺がぶすくれた顔をしていると、マルが声をかけてきた。


「純粋魔法と精霊魔法を習得して、魔法の基礎は身に付けた。家の魔法との接続もできた。当初の目的だった、魔法の使用にも目処が立ったわけだろう。学生としての活動に、少し力を入れてもいいと思うがな」


「マルが言うなら、そうなんだろう。まだ安心できないが、入学当初よりは、ましな状態だな」


「もう少ししたら、おまえの魔法についても教えてやる。そのときまでは青春を満喫しろ」


「何だよそれは」


 何か隠していやがるな。体を共有しているが、俺はマルの思考を読めない。転生者が肉体を共有している状態も、万能ではないよなあと思った。


  ◆◆◆


 グラノーラとニーナとばかり一緒にいては、他の友人ができるはずもない。

 仲良し同盟の会合を終えたあと、俺は図書館に行くために、一人で宿舎の外に出た。

 魔法学校の敷地内を歩きながら図書館へと向かう。


「ところでマル。俺にさんざん言っていたが、おまえは友達はいたのかよ?」


「友達? いるわけがないだろう。弟子はたくさんいたぞ。基本的に年下ばかりだったがな。

 能力がある者のもとには人が集まる。他人との関係を作る努力などする必要もない。相手が勝手に頭を垂れてくれる。凡人は大変だな。手探りで人と繋がっていかなければならない」


「はいはい」


 適当にあしらって周囲を見渡す。俺に話しかけようというやつは一人もいない。まあ、仕方がない。最初のうちに友人を作らなかった。すでにグループが固まっている。今さら、縁のない相手を誘う者はいないだろう。


「アステル・ランドールだな」


 知らない男子生徒に名前を呼ばれた。二人の男が俺に近づいて来た。知らない相手だ。

 高圧的だなと思った。友好的な態度とは言いがたい。面倒事に巻き込まれそうだ。警戒しながら「そうです」と答えた。


「俺はムジカ・フロアだ」

「俺はサンチェス・テレスだ」


 どうせ、どこかの派閥の下っ端だろうと俺は思った。

 ムジカは態度の横柄な筋肉質の男だった。サンチェスは小太りで背が高かった。二人とも、他人を威圧するのに向いていそうな体をしている。


「メザリア様が呼んでいる。来い」


 ムジカが俺に高圧的に言った。メザリア・ダンロスの派閥か。二人は俺がついてくることを前提に話を進める。


 ああ、どう考えても面倒事だ。ろくなことにならないと想像がつく。

 行きたくはなかったが、無視をすると、あとでもっと困ることになる。


 俺がグラノーラと一緒にいないタイミングを狙ったのだろう。伯爵家にちょっかいを出すよりは、男爵家にちょっかいを出す方が簡単だ。

 グラノーラに波及しないように、俺のところで止めるべきか。ここは素直に従おうと思い、二人について行くことにした。


 魔法学校には、校舎や宿舎、食堂や図書館以外にも建物がいくつかある。講堂や記念館、競技場などはその代表的なものだ。

 男たちが歩いて行く先には記念館があった。確か、高位貴族の中には、記念館に部屋を持っている者もいると聞いた。そこを派閥の連絡所などにしているという。

 俺は、やれやれと思いながら、ムジカとサンチェスに従って記念館に入った。


 石造りの建物は、内部がひんやりとしていた。石材については詳しくないが、地元では見ない美しい風合いなのは分かる。

 きっと高価なのだろう。壊して弁償するようなことがあれば破産しかねない。

 喧嘩にならなければいいんだが。穏便に済んでくれればいいなと思った。


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