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偽物の魔法使いは大魔法使いと魔法開発史を再現する  作者: 雲居 残月
第8章 魔獣狩り

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8.3 精霊と架け橋

 俺たちは、王都近くの森に一泊二日の修行に来ている。俺は、両手を縛ったココルとともに、森の奥へと入っていく。


 人の手の入っていない森は、自分の居場所を見失いやすい。人間にとって目印となる場所が乏しく、似たような景色が続いていると錯覚してしまうからだ。


 何となくマルの意図が分かった。魔力量を感じ、霊魂の目で見る。目に頼らない感覚を研ぎ澄ます。それが精霊を見つける第一歩なのだろう。


「うわっ」


 ココルが露出した根に足を取られて転んだ。俺は素早く手を出して地面にぶつからないように支えてやる。


「アステル、ココルを助けるな」


「いや、マル、助けるだろう」


「これも修行だ」


「大丈夫です、アステル様!」


 ココルは真剣な顔をしている。仕方がない。ココルが納得しているのなら、俺が手を出すべきではない。


 鳥の声、獣の声、虫の声が聞こえる。木々のざわめきが周囲を満たしている。目と耳に頼らないように周囲を探る。どこかに潜んでいるはずの精霊の姿を見つけようとする。

 索敵範囲を広げる。その分、精度が落ちる。近距離、中距離、遠距離と切り換えながら変化を探る。それらしいものを発見することはできなかった。


「ふうっ」


 俺は歩きながら呼吸を整える。こうしたときには発想を変えた方がいい。

 闇雲に探して見つかるようなら、マルは自分で考えるように促してはいない。マルの修行は似た傾向がある。自分でたどり着くことを重視している。


 発見するという固定概念を捨てよう。現代魔法は人工精霊に魔法再現器を組み合わせたものだ。

 俺はその魔法を、霊魂の目で見たことがあるだろうか。いや、見たことはない。魔法が起こした現象だけを見ている。そこから考えれば、精霊は霊魂の目では見えないのだろう。


 さらに俺は考える。俺は見える人と、見えない人があるケースを知っている。マルの霊魂の姿は、俺には見えるが他の人には見えない。

 マルは縁がどうこうと言っていた。俺には縁があり、他の人には縁がない。精霊が希薄な霊魂ならば、同じような条件が適用されるのではないか。


 俺は周囲を見渡して、最も大きな木に触れる。マルがわずかに口の端を上げた。

 俺は魔力を霊体化して、俺の霊魂と木の霊魂を繋ぐ架け橋を作る。俺の霊魂ではなく、木の霊魂を通して周囲を見ようとする。


 木からは細い架け橋が出ていた。その先には何かがあった。俺はその何かを認識する。

 森は霧のようなもので覆われていた。それは著しく希薄な霊体だった。そして途切れなく続いていた。それは視界を覆うほど大きかった。


 一つの精霊のサイズがどれぐらいなのかは分からないが、数十本の木よりも大きい。そして、その範囲内にあるそれぞれの木と縁を持っている。


 俺が自身の魔法『張りぼての物真似』を安定して使えなかった理由も判明した。魔法の人工精霊と、縁をうまく結べていなかったからだ。


 俺は精神を集中して自身の魔法を意識する。架け橋を作り、縁を結ぼうとする。

 架け橋が繋がった。その瞬間に、魔法の姿が見えた。

 無数の工具を持った多腕の何かが、自分のそばに寄り添っている。髪の毛のような無数の糸が伸びて、風に揺らいでいる。これが『張りぼての物真似』という魔法の姿なのか。

 人工精霊は、非常に希薄な霊体でできていた。肉体を持たない霞のような精霊を再現している。その様子は、ガラス細工の精緻な機械を思わせた。


 俺はマルに視線を向ける。マルは満足そうにうなずいた。


「精霊を探せたようだな。ついでに、自分の魔法の人工精霊も見えたようだな」


「ああ、見えた」


 俺は自信にあふれた顔を、マルに向けた。


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