7.2 捜索依頼
俺とココルは、ラパンとともに被害者の家を訪れた。そこで死者と体面して、魔力の量を調べた。
家から少し離れたところまで歩き、ラパンが尋ねてきた。
「何か分かったか?」
「魔法を使うのには魔力というものが必要です。魔力は誰もが持っていますが量の違いがあります。
死んだ子供は空になっていました。あの家族の子供たちは、ふつうの子供たちよりも多く魔力を持っていました。そこから推測できることは、誰かが子供を殺して魔力を奪ったということです」
「生きたまま奪えないのか?」
「殺すか気絶させる必要があります。寝ている状態では駄目です。
犯人は、気絶させるよりも殺した方がよいと考える者でしょう。顔を見られたり、逃げられたりする可能性を考えれば、殺した方が後腐れがないでしょうから」
ラパンは顔をしかめる。
「犯人は見つけられそうか?」
「王都の人の数は多いです。藁の山から針を探すようなものです。ただ、手口が同じなら罠を張ることもできます。これまでの情報から、相手の姿や素性を絞り込むこともできます」
俺は少し黙ったあと、自身の考えを口に出す。
「裏社会の人間が誰も特定できていないことから、犯人は一人で、背後の組織はないのでしょう。
方々に出現していることから、王都に対する土地勘はあるはずです。王都で生まれたか、王都に来てから数ヶ月以上は経っている人でしょう。
王都の各地区に狩りに行き、容疑者として名前が出てきていないことから、人間関係は希薄だと思われます。周囲との交流は乏しく、正規の仕事には就いていないと思われます。
目撃例がないことから、身なりは貧しく、貧民街で目立たない姿をしているはずです。紐を使って絞殺していることから、体は小さく非力であることが推測されます。
魔力を集めているのならば、貴族ではなく野良の魔法使いのはずです。
魔法を仕事に使っていれば、いずれかの裏組織に属するはずですが、その兆候はありません。魔法は仕事に使わずに秘匿しているのでしょう。
急に魔力を集め始めたということは、何らかの必要に駆られているのでしょう。魔法を使いたいのか、魔力で何かをしたいのか、そこまでは分かりません。
そして、これは推測なのですが、犯人は古い魔法の知識を持っています」
俺は、ちらりとマルを見る。俺にしか見えない霊体の姿でついてきている。
魔力を奪うやり方は、マルに聞くまで知らなかった。文献でも見たことがない。それならば犯人は、マルと同じ時代の知識を持っているということになる。
「あの、アステル様」
ココルが決意を込めた声で呼びかけてきた。
「何だ?」
「私が囮をします。私は小柄ですし、アステル様の修行で魔力量は増えています。出没しそうな場所を絞り込めれば、犯人と接触できる可能性が高いです」
「駄目だ」
即座に否定する。相手についての情報がなさすぎる。どんな危険があるか分からない。
「では私が依頼しよう。仕事なら文句はあるまい。調査は約束どおりこちらでおこなう。おまえたちで犯人を捕らえるか殺すかして欲しい」
ラパンに言われて反論を飲み込んだ。
俺は小声でマルに話しかける。
「ココルに危険がおよぶようなら、俺の体を使って助けてくれ」
「いいだろう。かわいい孫弟子を守るためだ。協力してやる」
これで最悪の事態は防げる。しかし、ココルが危険であることに変わりはなかった。




