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偽物の魔法使いは大魔法使いと魔法開発史を再現する  作者: 雲居 残月
第6章 お買い物

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6.3 強盗との戦い

 ガゼー地区の人気喫茶店に強盗がやって来た。たまたま居合わせた俺たちは、窮地に陥っている。


 視界の隅で動きがあった。店員の一人がこっそりと裏口から出て行った。俺たちに強盗の注意が集まったからだ。

 店の外で助けを呼んでくれたら、ラパンの配下が駆け付ける。この辺りの治安を守るのは、彼らの仕事だからだ。何とかして、それまでの時間を稼がなければならない。


「アステル。今のおまえの実力なら、霊撃は敵のところまで届くぞ」


 足元のマルが声をかけてきた。敵は俺の剣が届かない距離にいる。霊撃が届くのならば、どうにか戦いようはある。手持ちのカードが一枚増えた気分だ。


 俺は呼吸を整えて意識を集中する。いつもより魔力を凝集させて霊体の刃を作る。

 霊撃は、俺から離れて制御を失うと徐々に拡散する。一定の距離を超えるとばらばらになる。

 マルが言っていた人工精霊は、何百年も形を保っている。その技術差は圧倒的だ。俺はそこまで到達できるのだろうかと考える。


 グラノーラに矢を向けている男を狙って霊撃を放った。同時に腰から剣を抜いてグラノーラの前に立ちはだかる。

 男の一人が急に倒れて、クロスボウの矢が発射された。倒れた拍子に引き金を引いたのだ。店内に悲鳴が上がる。矢は壁に刺さり、怪我人はいなかった。


 危ない。誤射は想定していなかった。残り五人。どうやって増援が来るまで持たせるか考える。


 背後から背中を触られた。ニーナだ。俺の耳に、ニーナの声が大きく響いてきた。


「『音声伝達』の魔法です。小声で情報を送り合えます」


「分かった。お嬢から離れないでくれ。お嬢のそばにいれば、たとえ怪我をしてもすぐに治してもらえる」


「分かりました」


 俺は敵の注意を引くために、声を上げながら強盗に駆け寄る。

 強盗たちのクロスボウが俺の方に向けられた。少し斜めに走り、射線がグラノーラたちに重ならないようにする。


 真正面から飛んでくる矢なら、叩き落とせる自信がある。問題は、敵の倒し方だ。敵は服の下に胸甲を着けている。胴に攻撃をしても無力化できない可能性がある。


 クロスボウの矢が飛んできた。剣で弾いたあと、柄で頭を殴って気絶させる。殺してもいいが、あとで衛兵にあれこれと詮索されるのは避けたい。決闘代行と違い、正当防衛を証明するのが面倒だ。


 残り四人。撤退してくれればいいがと思ったが、敵はまだやる気のようだ。


「敵がグラノーラさんを狙っています」


 ニーナの声が耳に届いた。敵の一人のクロスボウが、あらぬ方を向いている。先ほどグラノーラとニーナがいた場所とは違う。


「治療です」


 ニーナの言葉で状況が分かった。最初に倒れた青年を治療するために、グラノーラは移動していた。


 敵は引き金を引いた。声のおかげで振り向くより早く確認できたが、それでも時間が足りない。矢とグラノーラのあいだに割って入る時間はない。剣を投げても間に合わない。

 詰んだ。

 全身の毛が逆立った。


 ここからどうにかする方法はない。手札の中で有効なものは一枚もない。


 本当にそうか?

 まだ試していないカードがあるのではないか?


 俺は全神経を集中する。剣を伸ばし、その先端が指し示す場所に魔力を集める。飛ばすんじゃない。直接その場に顕現させる。できると信じて実行する。


 矢の軌道がわずかにそれた。グラノーラの横を通過して壁に刺さる。矢を放った男が驚く。空中の何かに当たって、矢の向きが変わったように見えたからだ。


 俺はきびすを返して、矢を放った男を切り殺す。グラノーラに矢を撃ったやつは容赦しない。残り三人、そう思ったところで一瞬、意識が飛びかけた。魔力を使いすぎた。それも初めての方法で。


 俺がおこなったのは、魔力の物体化だ。ぶっつけ本番だが何とかできた。ただ、ほんのわずかの物体を作るために、ほとんど全ての魔力を消費してしまった。


 俺は膝を突いて荒い息をはく。駄目だ、まだ安全は確保できていない。立ち上がるんだと自身を叱咤する。


「どうやら息切れのようだな」


 警戒しながら男たちが言う。こちらが魔法を使っていることは察しているだろう。その上で魔力切れであることも気づかれている。


 もう駄目だ。そう思ったときに、裏口から人影が飛び込んできた。小柄な体が素早く動き、男たちの脚を斬り付けて床に転がしていく。


 目が合った。赤い髪のココルだ。事情は分からないが助かった。


「殺しますか?」


「無力化しろ」


 ココルは剣の切先を下に向けて、男たちの利き手の甲を貫いていく。悲鳴が上がり、強盗たちは完全に無力化された。


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