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偽物の魔法使いは大魔法使いと魔法開発史を再現する  作者: 雲居 残月
第6章 お買い物

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6.2 街めぐり

 学校の入り口で外出申請を出して外に出た。最近は、放課後すぐに学校を飛び出して事務所に行っていたので、新鮮な気分になる。


「それでは私が案内しますね。生活雑貨、アクセサリー、テイクアウトできる飲食店の順で回っていきます」


 ニーナが明るい顔をしているので安心した。


 生活雑貨は、卸値で買えるところが中心だった。街の各所に並んでいる店ではなく、外縁部にある問屋街の店だ。


「マジで安いんだな」


「王都は広いですからね。物流の拠点は辺鄙な場所にあります。だから、あまり好んで来る人はいないんです。お店という感じの入り口ではないですから、知らない人は前を通っても気づかないですし」


 グラノーラは、お茶会に使えそうな小物を買った。荷物持ちは俺が引き受けた。

 家具や食器など、よさそうなものが多くあった。いろいろと買いたかったが、もう少しお金に余裕ができるまで我慢しようと思った。


「次はアクセサリーです。職人街に行きますね」


 俺も王都をいろいろと回ったが、職人街はじっくりと見ていない。


「ニーナは、職人街にもよく行くのか?」


「うちは調度品をあつかっていますから、出入りの商人ですよ」


 職人街では、露店を見て回った。まだ駆け出しの若手職人たちが休憩時間などに作った品物が並んでいる。

 まだ半人前だから値は安い。だからといって質が悪いわけではない。中には将来凄腕の職人になるだろうなと感じさせる商品もある。購入しなくても見て回るだけで楽しかった。


「いっぱい買っちゃった」


 グラノーラは、ほくほく顔だ。そのグラノーラの荷物は、俺が全て持っている。予想できたことだが、けっこうな量になっている。

 俺たちは最後の目的地、安くてうまい食べ物が買える場所へと向かった。


  ◆◆◆


 ああ、ここは知っている。ニーナに案内された場所に来て俺は思った。

 ガゼー地区だ。グラノーラも来たことがあるから気づいているだろう。


 そういえば最初の依頼があったパン職人の夫婦も安くてうまいパンを提供していた。他にもそうした店が多数集まっているのだろう。


「ここは、人気店で売り上げがすごいんですよ」


 ニーナが案内してくれたのは喫茶店だった。

 看板メニューは、飴湯と薄焼きのセットだ。軽食として人気があり、街の若者たちのあいだで流行っているという。


 こうした流行は、貴族の多い魔法学校では分からない。俺たちは店内の席に着き、休みながら食べることにした。グラノーラはお腹が空いていたのか、大量に注文して机の上に並べてご満悦の顔をしていた。


「おい、アステル」


 名前を呼ばれて足元を見た。緑髪に緑目の幼女、マルだ。そういえば今日は、ほとんど姿を現していなかったなと思った。


「どうした、何かあったのか?」


「今店内に入ってきた数人が、武器を隠し持っている」


 俺は意識を向けて霊魂の目で見る。ニーナの姿を確認したときと同じ技だ。

 服や持ち物は完全に消えて見えるわけではない。それらにも、人間ほどではないが霊体が宿っている。


 服の下に短剣が見えた。大きめの鞄には小型のクロスボウが入っている。胸甲も着けている。

 人数は六人。遊びに来たというわけではなさそうだ。いつでも対応できるように椅子の向きを調整した。


「金を出せ!」


 男の一人が短剣を出して、店員に向けた。麻袋を出して、その中に金を入れるように要求する。

 残りの男たちは鞄からクロスボウを出して、店内の客に向けた。一人が引き金を引き、腹に矢を受けた青年が床に転がった。


 強盗か。現金商売でこの時間だ。人気店ならかなりの金があるのは想像がつく。

 この地区はラパンの縄張りだが、どうなっているんだ。あの老人の配下ではないだろう。ラパンは、脅すより育てて金を取るタイプだ。そうなると、別の地区の悪党か。育成より収奪を好む集団があってもおかしくはない。


 強盗は顔をさらしている。それに、すでに一人射抜いている。この場でさらに何人か殺してもおかしくはない。

 グラノーラとニーナの安全だけは確保しなければならない。六人を一気に制圧するのは難しい。俺は、どうすればよいか考える。


 どうにかして店員を一人逃がす。周囲に襲撃が伝われば、ラパンの配下が増援として来る。

 時間はどれぐらい稼げばよいか。武器は腰に下げた剣だけだ。飛び道具を持っている強盗の方が圧倒的に有利だ。


 男の一人がこちらに目を向けた。グラノーラの服は高価すぎる。金を持っていると目をつけられた。危害を加えられる可能性がある。

 強盗の一人が、クロスボウの矢を向けたまま、こちらへと近づいてきた。


「持っている金を全て出せ」


「あなたにあげるお金はありません! それよりも、あの青年を助けなければなりません!」


 グラノーラがぴしゃりと言って、腹を刺された青年を指差した。


 俺は背筋が凍りついた。そうだ、グラノーラはこういう性格だ。そして、こうした場合の尻ぬぐいをするのは俺なのだ。

 俺は店内に全神経を張り巡らせながら、どうすればグラノーラを守れるのか考えた。


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