25.5 対策魔法
パロスは学校から消えていた。職員室で確認すると休暇届を出して休みを取っているということだった。
単眼鬼が使った『人間化』の魔法の、反転魔法の開発を始めた。最初におこなったことは、パロスの研究室に行き、大量の本を自分たちの部屋に運ぶことだった。
俺たちは本を片っ端から読んでいく。
設計図を解析して、魔法の仕組みを理解するのは、ニーナが力を発揮した。
昔から大量の本を読んでいるニーナは、本を読むのも理解するのも速かった。いち早く立体的に構成された人工精霊の組み合わせを読み解き、二日ほどで部品の意味を解読した。
寝ずの作業を俺たちは続ける。グラノーラの魔法で疲労を飛ばしながら、反転魔法をどのように作るのか議論を戦わせた。
「私の魔法の構造が参考になるんじゃないですか?」
ウルミが自分の魔法の模型を持ってきた。『取り外し』の魔法だ。ウルミの魔法は、霊体ではなく物体の取り外しをおこなう。霊体と物体の違いはあるが、仕組みは応用できそうだ。
肉体から異物である霊体を取り外す。本を何冊も参考にしながら、そうした人工精霊をどのように組み立てるのかを検討していく。
やっつけの作業だ。効率などまるで考えていない。エレガントさの欠片もない。しかし、何とか機能しそうな人工精霊の素案ができた。
「くそっ、部品点数が多すぎる」
今から全てを作っていたら到底間に合わない。
「あの、こんなことができるのかどうか分からないのですが」
ニーナがおずおずと手を挙げる。
「この機会だ、何でも言ってくれ」
「魔法って、人工精霊に魔法再現器をくっつけますよね」
「ああ」
「そこにさらに追加して、別の人工精霊をくっつけることもできるんじゃないですか? 寄生虫のように」
「うん、まあ、できるんじゃないのかな。精霊って生き物のようなものだしな」
「ウルミさんの『取り外し』の魔法に、追加の機能を持った人工精霊を無理やりくっつけるのはどうですか?」
「むきゃー! そんな改造をしたら、私の魔法が今後使えなくなるじゃないですか~!」
ウルミがぷんぷんと怒る。まあ、そうだろう。それで壊れてしまうかもしれないわけだし。
ニーナは、すみませんでしたと言いながら、ウルミに頭を下げる。
「いや、そのアイデア、使えるかもしれないぞ」
「えええええ~、アステルさんまで! 私の魔法をいじくらないでくださいよ!」
ウルミがドタバタと暴れる。
「いや、ウルミの魔法を直接使うんじゃない。俺の『張りぼての物真似』で、ウルミの『取り外し』の魔法を真似て、そこに追加部品を加えるんだ」
「でも、それだとアステルさんの魔法がおかしなことになってしまわないですか?」
ニーナが、このアイデアは忘れてくださいと体を小さくする。
「いや、マルに聞いたんだ。俺の『張りぼての物真似』は、もともと『複製』の魔法だったそうだ。
俺の魔法が変化して真似ているわけではない。似た魔法を一時的に作り出しているんだ。それを改造しても、俺の魔法自体には何の影響もない」
全員の顔に希望の光が宿る。既存の魔法に、少ない部品数の人工精霊を重ねる。魔法の基礎から学んで、仕組みを知っているからこそできる方法だ。
その方針でニーナが部品を考えて、ウルミが図面を書いていく。
俺たちは手分けをして部品を作る。その部品をウルミが素早く組み立てていく。魔力湧出口は、ガラス瓶に保管してあるものを使った。足りなくなると、予備の精霊瓶をばらして利用した。
四日目、五日目と過ぎていく。そして、単眼鬼が指定した対決の日の朝陽が窓から差し込んできた。




