25.1 標的探し
単眼鬼は、自身が作った魔法で、ザラエル王国の貴族の肉体に転生しようとしている。その転生先として適しているのは、多くの転生者を肉体に受け入れている者だ。
ザラエル王国では、魔法を貴族の象徴にして発展を止めた。転生者の中には、魔法を理解している者もいるはずだ。しかし、ザラエルの意向に従い、子孫に仕組みは伝えていないのだろう。
その結果、現代を生きる人間で魔法をきちんと理解できる者はほとんどいなくなってしまった。
使用するだけの人間しかいないと、仕組みを理解した人間に出し抜かれる。学びを止めると、そうしたことが起きる。それが今の状況だと思った。
ガゼー地区の事務所に集まった者たちの前でマルは言った。
「なるべく多くの転生者に、自分の魂の席を明け渡している者がいい。それも若いほどいい。霊魂が馴染むための時間を多く取れるし、その後の人生も長くなるからだ」
俺は口をつぐんで腕を組む。自分が、単眼鬼の立場ならどうするか考える。
「魔法学校の生徒から選ぶのがいいんじゃないか? あそこには魔法を持った若い貴族が多数集まっている。そいつらの多くは、すでに転生者を受け入れている」
グラノーラもそうだった。入学前に転生神殿に行き、祖先の転生者を受け入れている。ほとんどの貴族がそうだろう。魔法の使用を祖先に頼っている者は全て、その身に転生者を宿している。
「敵の立場ならそうだろうな。次に必要なのは、それぞれの生徒が何人の転生者を身に宿しているかの情報だ」
「そんなの学校にあるのか? お嬢はどうだった?」
「何も聞かれていないわよ。書類なんかもなかった」
「俺もそうだ。どうやって調べればいいんだ」
「あの……」
ニーナが手を挙げる。
「どうした?」
「その情報は、もう単眼鬼は持っていると思います」
「どうしてだ?」
「全てありますよね、転生神殿に。この国の転生は、あそこで管理されているはずですから」
そうだった。俺という例外を除けば、この国の貴族たちは転生神殿で祖先の霊魂を受け入れている。転生神殿の上級神官の死体を乗っ取れば、容易に情報を得ることができる。
上級神官マイデル・モンパス。彼の肉体を乗っ取ったことで、転生者の多い者の情報を得たはずだ。
「これは、また転生神殿に行くしかないか」
「週末にね。連続して学校を休むなんて許しませんよ」
グラノーラに釘を刺された。
「それじゃあ、週末にお嬢と俺とで転生神殿に行くということでいいか?」
話はまとまった。俺たちは互いに情報を交換し合ったあと、それぞれ解散した。
◆◆◆
魔法学校での授業を受けながら週末を待った。
天使教の勧誘はまだ続いている。茸の集積場所だったモンパス家は、火事騒ぎと、当主マイデルの死亡で閉鎖されている。いったいどこに茸を集めて交換しているのだろうと思った。
「別の場所も用意していたのかな」
「かもしれんな。何度も、おまえに邪魔されているからな」
マルが俺だけに聞こえるように答えた。
面倒だ。また追跡して壊滅させるか。いや、それよりも週末に転生神殿に行って、単眼鬼の標的を特定する方がいい。
モンパス家の火事と死体発見が俺に関連付けられてもおかしくなかった。あまり派手に動き続ければ、俺の方が反社会的活動をしているということで衛兵に捕まりかねない。
俺は、週末になるのを大人しく待つことにした。




