24.11 挿話:単眼の魔法使い その2
記憶には二種類ある。もともと持っていたものと、新たに獲得したものだ。
もともと持っていた記憶には、魔法についての知識と、目指すべき目的があった。
――魔力を集めて魔法を作る。現代ではおこなわれていない魔法の創造をおこなう。
――多くの魔法使いたちが、次の世代の魔法を作っていく。そうした世界を実現させる。
実現の方法は示されていなかった。道標も与えられていなかった。自分で考えて解決していかなければならなかった。私にはそのために使える記憶が不足していた。
最初に入った体は子供のものだった。私は、子供の魔力が大人よりも多いことに気づいた。
私は、大人に目をつけられずに、子供を効率的に狩る方法を考えた。
子供だけの遊び場。霊体化による誘い込み。死体からの魔力吸収。少しずつ経験を積み、練度を上げていった。
しかし、子供狩りは唐突に終わってしまった。謎の剣士に襲われて、肉体から叩き出されてしまった。
子供の記憶だけでは限界がある。次は大人の死体を渡り歩いた。いくつかの死体を乗り換えることで、思考の幅が広がった。
お針子の体に入ったとき、一つの方法を思いついた。殺すのではなく魔力を供給させる領民を作る。糸を見ることで連想した。
もともと持っている記憶の中には、この国の魔法使いたちの手法もあった。知識があっても有効に活用するには経験がいる。
霊体の糸を人に縫いつけることにより魔力をかすめ取る。その魔力で人工精霊の部品を作り、魔法の創造をおこなう。
しかし、お針子の死体を使った領民作成は、唐突に終わってしまった。謎の剣士に襲われて、肉体から叩き出されてしまった。
どうやら私が活動すると、謎の剣士が現れて邪魔をするようだ。
なぜ彼がそんなことをするのか分からない。しかし二回も続けば、次もあるのだろうと想像する。次はもっとうまくやろうと反省した。
魔法を作るために必要な記憶は持っていた。いくつもの死体を乗り換えるうちに、どのような人間に入るべきなのか道筋が見えてきた。
初めから分かっていれば、苦労や遠回りなどはしなかった。しかし、最初から完璧な人間などいないものだ。経験を積むことで、自分の生き方を変えていくのが人間なのだ。
最終的なゴールを目指すためには、いくつかの段階を経なければならないと分かった。
まずは魔法作りに向いた死体だ。時計職人の死体に入り、詳細な魔法の設計図を描いた。
また、警戒心のない貴族を裏路地で襲い、魔法を奪って部品取りをした。
再び、あの謎の剣士がやって来るかもしれない。亡霊のように現れて、人の活動を邪魔する悪鬼のような存在。剣と魔法を携えて、私を滅ぼそうとする怪物のような少年。
魔法の部品は分散して保存した。いつでも逃げられる秘密の部屋で作業をした。
時計職人の家の地下室。壁紙で隠蔽した場所に、誰かがやって来た。
私は設計図を携え、床の穴から脱出して地下道へと逃げ出した。
隠れ家はいくつか用意していた。そこにいったん腰を据えたあとに、次の乗り移り先を考えた。複雑な魔法の完成には膨大な魔力がいる。そして、魔法を使う対象の選定には、転生神殿の情報がいる。
私はすでに魔法使いだった。数多の経験を経て、老練な賢者のようになっていた。
そろそろ会ってもよいのではないか、私を生み出した創造主に。私は密かに会い、教えを乞うた。そして必要なものを与えられた。
乗り移り先が決まり、天使教が誕生した。いよいよ目的への仕上げに入る。私は肉体を得て本物の人間になる。そして、同じような魔法使いを誕生させて、魔法の進化を再開する。
魔法王国ザラエルの貴族たちは偽物の魔法使いだ。彼らが全て本物の魔法使いになれば、止まっていた時間は動きだす。
創造主が望む世界を作る。この方法が、私がたどり着いた新しい魔法使いの時代の作り方だった。




