24.1 信者接触
ニーナがもらった茸は、霊体を充填した箱に収めて封印した。その上でニーナには、茸を渡した学生と接触して天使教の情報を集めてもらった。
相手に不審がられない工夫もした。生気を失った風の化粧をして、茸に影響を受けているようにした。
天使教の名前の由来は、茸が天の御使いから授けられたことに由来するそうだ。
何だそりゃ、と思った。おそらく適当に作られた由来だなと想像する。清廉で輝かしいイメージを与えるために選ばれた言葉なのだろう。
ニーナに茸を渡した学生は、同じクラスの子爵の娘だそうだ。彼女は茸を周囲の者に積極的に渡していたという。
「あいつか」
廊下で遠巻きに見ながら俺はこぼす。貴族らしく身なりの整った長髪の女子だ。都会らしい優雅な振る舞いをしていた。
グラノーラに聞いたところ、領地経営は地元の有力者に任せて、家族で王都に住んでいるそうだ。こうした貴族界隈の情報には疎く、俺はグラノーラに頼りっぱなしになっている。
「それなら、家族全員が茸にやられている可能性が高いな。お嬢、王都にある屋敷の場所は分かるか?」
「調べればすぐに分かるわ」
この方面は任せた。俺はニーナから少し距離を取って、ニーナと子爵の娘の会話を聞く。子爵の娘が一方的にニーナに命令をしていて、聞いていて気持ちがよいものではなかった。
どうやら集会に行くのでニーナも行けと言っているようだ。ニーナは場所や時間を聞き出している。また、茸を他の人にあげるにはどうすればよいのか尋ねている。
「集会に行けば茸はもらえるわ。今ある茸を持っていき、新しい茸をもらうの。そのときに誰にあげたいか話せば、実績に合わせて茸をくれるわ」
信者歴や勧誘数などが関係しているのだろう。集会自体は、毎日おこなわれているそうだ。
話が終わったようだ。ニーナは、子爵の娘と別れてこちらに来た。そして、離れたところから聞いただけでは分からなかった細かな話を教えてくれた。
「どうも、集会に行っても、上層部の人には会えないそうです。おそらく末端の信者は、組織の中央には到達できないようになっているのだと思います」
「宗教団体というよりも秘密結社みたいだな。それに、王国内に存在しない茸を使っている。単眼鬼のこれまでの雑なやり方とはずいぶん違うな。背後に入れ知恵をしている人間でもいるんだろうか」
「そうですね。より洗練されているというか、知識量の違いを感じますね」
単眼鬼ではないのか。しかし目的や行動原理は、単眼鬼そのものだ。
「なあ、ニーナ。お父さんに頼んで、茸の出所を調べられないか? ニーナがもらった茸は、壁に霊体を充填した箱に入れている。箱の中に手を入れなければ安全なはずだ」
「父自身は分からないと思います。出入りの商人に聞いてもらうのはできると思います」
「まあ、駄目元だけどな。頼む、ニーナ」
ニーナはうなずき、箱を持って部屋の外に出た。




