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偽物の魔法使いは大魔法使いと魔法開発史を再現する  作者: 雲居 残月
第22章 魔法創造

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22.1 新しいやり方

 夏休み。

 俺たちは、タタカ洞窟前の集落にある宿屋に泊まっている。マルに言われた精霊瓶を作り、ガラス瓶の中に精霊を回収してきた。一晩寝て朝早くに、俺はマルにたたき起こされた。


「起きろ、アステル!」


「何だ、マル……」


「全員起こして、精霊瓶を持ってアステルの部屋に集合させろ!」


 何だよ、こんな朝早くにと思い、仲間たちの部屋の扉をノックして、全員を俺の部屋に集めた。


「おはようございます」


 全員目がまだしょぼしょぼしている。マルは机の上に乗って腕を組んでいる。


「ガラス瓶の霊体はどうなっている?」


「どうって……」


 薄くなっている。俺たちは慌ててガラス瓶に、魔力で霊体を充填した。


「もしかして、数時間おきに補充しないといけないのか?」


「いや、魔力湧出口を加えれば維持できる」


「ここには豚の解体を毎日おこなっている肉屋はないぞ」


「その代わり、木が切り倒されているだろう。木こりが働いている場所に行けばいい」


「えっ、動物ではなくて植物でもいいのか? 植物の方が、動物の霊魂を使うよりも心理的な負担は軽いよな。なぜ動物で作らせたんだ?」


 俺は疑問に思ったので尋ねる。


「歴史的な経緯をたどった。もともと精霊に、生贄を捧げる習慣はあった。フルール領で、魔獣を狩ったときに話しただろう。そうした習慣から、動物の霊魂の利用方法として、圧縮を思いついた。

 植物でもできることにたどり着くには、それから十年ぐらいかかった。アステル、おまえも動物で作るものと考えて、疑っていなかっただろう?」


「まあな。それにしても十年か」


 そんなに時間がかかったのかと驚いた。発明などもそうだが、最初に考えつくのは、前例がないから大変ということか。


「樹木で作れるんなら、草や虫でもいけるんじゃないか?」


 より、楽な方法もあるのではと思って尋ねる。


「草や虫だと小さすぎるな。魔力湧出口にはならない」


 ある程度の霊体の大きさが必要だということか。


「ついでに、魔力湧出口を保管しておくためのガラス瓶も作れ。これから複数の部品を作っていくから、魔力湧出口が多数必要だ」


「どれぐらい必要なんだ?」


「十個ぐらいあれば足りるだろう」


「多いな。五人で五十個か。木こりは、そんな数の木を、一度に切らないだろう」


「木は、切り倒した直後でなくても大丈夫だ。

 木こりに切られた木は、不本意に身体が切断されている。死んではいるが、地面の下に根が丸ごと残っている。

 切り株が残っている場所には、たいてい生前の形のまま、木の霊魂が残っているぞ」


 ニーナの髪の毛が切られたときと同じようなものか。切り株でよいのなら、どうにかなりそうだ。


 俺たちは精霊瓶の霊体を補充したあと、宿屋の主人に木こりについて聞いた。主人は、木こりが作業をしている場所を教えてくれた。


 山に入って、木こりの親子に挨拶する。切ったあとの切り株を使いたいと話した。好きにしてくれてと言われて、とりあえず了承を得た。


 さて、どうするか。豚の霊魂を圧縮するのに模型を使って数日かかった。そのペースで作業をしていたら、時間がいくらあっても足りない。

 そもそも樹木は、豚よりもはるかに大きい。五分の一ずつ縮めていくと、かなりの時間がかかってしまう。

 前回、魔力湧出口を作るときは、一日ずつあいだを置いた。同じペースだと、自力で圧縮できるところまで縮めるのに、何日もかかってしまう。


「何を考えているの、アステル?」


 グラノーラが木に登りながら話しかけてきた。やはり山猿だと思いながら声を返す。


「いや、前回豚の霊魂を使って魔力湧出口を作ったんだが、同じ方法では難しそうだなと思って」


「前に話していた、徐々に小さな模型に移すやり方?」


「ああ」


「模型自体が、自動で小さくなっていけばいいのにね」


「そんな模型、あるはずが……」


 自動で小さくなっていく? 確かにそういう模型があれば短時間で魔力湧出口を作れるかもしれない。


「よし、試してみよう」


 俺は木の霊魂に重ねて、魔力の物体化でスカスカの煙のような木の模型を作る。

 マルが姿を現すときと同じような半透明の木だ。豚の模型のときと異なり、霊魂に直接重ねているから形はぴったりだ。その半透明の木を、五分ほどかけて馴染ませる。


 馴染んだことを確認したあと、物体化させた木の形を縮めていく。霊魂もつられて小さくなっていく。あまり速く縮めると追随しなくなるので、ゆっくり小さくしていった。


 十分ほどで魔力湧出口ができた。やった、このやり方なら十五分で一つ作れる。


 最初の一つは、作った魔力湧出口を保管するためのガラス瓶に利用した。ガラスに霊体を充填して、魔力湧出口を埋め込む。これで魔力湧出口を保管可能になった。


「何だよ、こんな簡単な方法があるのかよ」


 俺はマルに愚痴を言う。


「大切なのは、おまえが自分でたどり着いたことだ」


 そうかもしれないが、もう少し楽をさせてくれてもいいのになあと思った。

 俺はさっそく、新しいやり方を仲間たちに教える。


「みんな、このやり方で、十五分で一つ魔力湧出口が作れるぞ」


 それから三時間ほどかけて、魔力湧出口を作ってはガラス瓶に入れていった。最終的に、各メンバーが十個ずつの魔力湧出口を作ることができた。


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