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偽物の魔法使いは大魔法使いと魔法開発史を再現する  作者: 雲居 残月
第21章 大深度のテラリウム

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21.3 案内人

 受付事務所の入り口にいた子供に声をかけると、バナシュを紹介してくれた。もっさりとした黒髪の、ガタイのいいおっさんだった。


「バナシュです。よろしくお願いします」


 一ヶ月という約束で金額の交渉をして先に金を払った。夏休みが続く八月いっぱい、有能な案内人を確保できた。


「まずは、予定表の書き方を教えていただきたいんですが」


 俺は、受付事務所でもらった用紙をバナシュに見せて尋ねる。


「分かりにくいですよね。俺が書きますので、どういった計画か簡単に教えてください」


 責任者は俺の名前、案内人はバナシュの名前、それ以外に洞窟に入る全員の名前を書く。そして、初日にどこまで行く予定なのかを、洞窟内の目印をいくつか書いて予定としていく。


「地図で書くのではないんですね」


「傾斜の多い洞窟ですからね。平面に地図は書きにくいんですよ。まっすぐな道や、地面に平行な道はほとんどないですから。

 千枚皿とか、大地の槍とか、洞窟に慣れた人が共有している場所の名前があるんです。その名前を書くことで、どこまで潜るのか共有するんです」


 俺は、宿屋の主人に感謝する。これは案内人なしで予定表を書くのは、不可能だったなと思った。


 宿屋の主人に聞いた話だと、バナシュはこの仕事が長いということだった。いろいろと相談できそうだ。


「洞窟の中で、他の場所から環境が切り離されている、少し変わった場所はありますか?」


 バナシュは、戸惑う表情を浮かべる。


「どういった目的で、そうした場所を探されているのでしょうか? それによって、どこがよさそうなのかが変わりますから」


 それはそうだよな。切り離されているといっても、洞窟の行き止まりを紹介すればいいというわけでもないからな。

 ここは素直に目的を言った方が早そうだなと思った。


「俺たちは魔法の研究に来ているんです。原始的な魔法について調べていて、特殊な現象が起きている場所を探しているんです。

 それも周囲の影響を受けず、なるべく小さな空間で、環境が独立しているところを。


 最終的に、ガラスの小瓶にその環境を移して、持ち帰ることを目的としています」


 俺は魔法と精霊について、概略だけバナシュに説明した。バナシュは驚いた顔をしたあと、沈黙して考える。


奇房(きぼう)と呼ばれる場所があります。ブドウの房のような形状になっていて、小さな部屋がいくつもある場所です。

 それぞれの部屋に特徴的な自然現象があり面白いのですが、冒険者が行くことはほぼありません。


 冒険者にとって収益に繋がるような素材が出てこないからです。希少動物や、鉱石や宝石といったものがあるわけではありませんから。

 そして危険はそこそこあります。そのため冒険者にとっては割に合わない場所です。あとは単純に深いところにあるという理由もあります」


 俺はマルを呼び、意図に沿う場所か尋ねる。


「そういう場所を探していた。案内してもらえ」


「分かった」


 俺はバナシュに案内を頼む。バナシュは申し訳なさそうに、首を横に振った。


「今日はやめた方がよいです。最初の数日は洞窟自体に慣れるように、安全な場所まで行って、そのまま帰ることをお勧めします。奇房に行くのは四日目から、それなら安全に案内できます」


「それでいいです」


 俺はバナシュと話し合い、細かな探索計画を詰めた。


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