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はい、こちらダンジョン捜索隊~自分はレッサーパンダだと言い張る相棒の♀タヌキが、うっかり記録用録画を配信してしまった件。  作者: 夢・風魔
5章

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99:雛兄と猫。

「インパクト!!」


 入り口を塞いでいた岩を、インパクトで砕く。その破片は通路の方へと飛んでいき、傍にいたモンスターを貫いた。


「行きますっ」

「おおぉぉぉぉぉぉ!」


 大塚さんが献身スキルを発動。

 彼の体から光る鎖が飛び出し、俺たちの体と繋がった。

 これで、俺がモンスターに攻撃されても痛みを感じることも、傷を負うこともなくなった。代わりに大塚さんがそれらを全部肩代わりすることになる。

 だから、可能な限りモンスターからの攻撃を受けない!


「インパクト! インパクト!」


 小部屋から飛び出して、すぐさまモンスターにインパクトを叩きつける。


「悟くんっ。悟くんっ」

「サクラちゃん? どうした!」


 サクラちゃんが大塚さんの肩の上だ。その隣にはヒーラーの女性がいて、彼女には魔力ポーションと、普通のポーションも複数渡してある。

 大塚さんの傍を歩く生存者にもポーションを渡していて、順番にポーションを彼に掛けてもらうよう打ち合わせをした。

 とにかく回復速度が要になるからな。


「悟くん。スキルを使わずに、普通にパンチして、キックするだけでいいと思うの」

「え? スキルを使わなくていい? でもそれだと――」


 それだと確殺出来なく……と思ったけど、俺のレベル、120を超えたんだった。

 この辺りの適正レベルは70ぐらいか?

 スキル使わなくても、いけるかも?


 そう思って拳を突き出した。

 モンスターが吹っ飛んだ。

 インパクトを使った時ほどじゃないけど、うん、これならいいか。


 インパクトは拳に力を溜め込んで打つから、ちょっとだけ時間がかかる。

 ただ殴るだけでいいなら楽だ。


 殴って殴って、時々蹴り上げて。

 少しずつ、少しずつ前進し、今も耐えてくれているみんなの下へ向かう。

 だがなかなか進めない。

 冒険者は六人。それと俺、ブライトが戦闘メンバーだ。

 後ろから迫るモンスターはもちろんだけど、前にいるモンスターも倒せば数が減る……わけじゃない。

 その奥の通路からもどんどん湧いて出てくるから、前進するのも簡単じゃない。


「献身がある! 多少強引でも進めっ」

「大塚さん……。大塚さんの言う通りよみんな! ここで時間をかけてる方が、大塚さんの負担が増えるだけだから!」

「クソッ。大塚さん、すんません!」

「構うな、行け!」

「後ろは俺が引き受けます。二人は前を」

「三石くん……わかった。行くぞ、アキラ」


 一緒に後方から押し寄せる冒険者二人を前に行かせた。この方が俺も戦いやすい。

 それに上からはブライトが――あ、あれ?


「ブライトがいない?」

「フ、フクロウでしたら、さっき前の方に飛んでいきましたよ」


 と生存者が教えてくれる。


 ブ、ブライト!?

 フェザーで後方のモンスターを攻撃する手はずになってたはずなのに。

 援護がないとなると、ちょっと厳しいぞ。


 殴って蹴って殴って。数が減らないのが辛い。

 たった百メートル。それだけ進めば十字路にたどり着くのに。

 あぁっ。ブライト、どこ行ってんだよ!


「悟うぅぅーっ!」

「ブライト!?」


 言ってる傍から戻ってきた!?


「受け取れ、悟っ」

「え? 受け取れって……ツララ!?」


 ブライトは足で掴んだツララを離した。

 落下してくるツララ。


「しゃとるにぃに~っ。チェンジッ」


 え、え、えぇぇーっ!?

 チェ、チェンジって、落下の途中で!?


「ウラアァァーッ」


 オラオラ系ヴァイスが現れる。一緒に宙から現れたのは、白黒ぶち模様の貫禄ある猫。


「ひ……秀さん!?」

「おうよ。加勢に来てやったぜ」

「か、加勢って、秀さん、攻撃系スキルも持っていたのか!?」


 猫だもんな。きっと手数の多い攻撃スキルがあるんだろう。それとも一撃必殺の猫パンチとか?


「あ? 持ってねぇよ」


 …………。


「え?」

「俺ぁな、防御と回復、それからスキル封じしかねーんだわ」

「回復!? それなら大塚さんにっ」

「あれはまだ平気だろ。それよかこっちの方がいいんじゃねえか。ほらよっ」


 秀さんは前脚をぱんっと合わせ、その手を床に突いた。


「絶対領域――」


 秀さんの声を共に、ドーム状の白い光が発生する。秀さんから半径五メートルぐらいか?

 通路を完全に塞いでいる。


「ぼぉっとすんじゃねえ。さっさと領域内のモンスターを倒してくれや。俺がここから一歩も動けねぇんだからなっ」

「あ、あぁ。ありがとう秀さん!」


 領域の向こうにいるモンスターは、光の壁に阻まれてこちら側に来れないようだ。

 完全防御壁か!


 領域内のモンスターを全部倒し終える。


「しんがりは俺にまかせな。お前ぇはあっちの加勢に向かえ」

「これ、効果時間は?」

「俺が手を突いてる間ずっとだ。まぁ魔力がなくなりゃ消えるが、そこは心配すんな。最長で三時間は持つぜ」


 三時間! 十分過ぎる時間だ。

 でも前方の加勢をするにしても、狭くてうまく戦えない。

 となったらやることはひとつ。


 懐にヴァイスを入れ、落ちないようベストのチャックをしっかり閉める。

 そして――壁走りで十字路まで行き、足を止めた。

 そのまま床に着地して、殴る、蹴る、殴る! ここでモンスターを足止めして、後ろへ流れるのを阻止。

 

「三石!」

「青山さん!」

「合流するぞっ」

「はい!」


 赤城さん、白川さん、青山さん、それから三人の冒険者が十字路近くまでなんとか後退していた。

 十字路に戦力が到着したことで、三方からのモンスターの進行を抑える。

 そして……。


「来たわよ、悟くん!」

「サクラちゃん! 大塚さんはっ」

「大丈夫だ。後ろからのモンスターの進行が完全に止まったからな。むしろ過剰な回復になったぐらいだ」


 合流した時、大塚さんは無傷だった。 


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