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はい、こちらダンジョン捜索隊~自分はレッサーパンダだと言い張る相棒の♀タヌキが、うっかり記録用録画を配信してしまった件。  作者: 夢・風魔
5章

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97:親方! 天井から悟が

 狭くなっている通路を抜け、その先も大渋滞していたのでそのまま壁走り。

 すぐの所にあった『3』と書かれた扉から中に入って床に着地した。


「うわっ!? み、三石? な、なんで天井から落ちて来たんだっ」

「いや、壁走りで天井を走ってきたです」

「……は? お、おい山岡、大丈夫か? 顔色悪いぞ」

「ジェ、ジェットコースターに乗ったかと、思った……」


 ジェットコースターほど早くなかったと思うけどなぁ。それにたった五十メートルしかないし、まともに走ったらあっという間に通り過ぎてしまう。

 壁走りのスキル、ゆる~く走る程度でもちゃんと効果があるから助かった。


「秋山さん、重傷者を雛たちのチェンジで運んでもらいます」

「あぁよかった。待ってたんだ。この人たちを運び出せないから、ここから撤退も出来なくてな」


 怪我人をここの上映場で寝かせているのは、あの狭くなっている通路部分のせいだ。

 抱えて通れる幅ではないと思う。山岡さんみたいに肩に担げばいいだろうけど、怪我人にそれは無理だし。


「そういえば赤城さんたちは?」

「しんがりだ。駐車場がなくって、代わりに隣の映画館がこっちにあってな。まぁ見ての通り、だいぶ空間は歪んでいやがるが」

「タイミング悪く、今日から人気アニメの上映が始まったってんで、かなりの人数が入っていたようだ」

「橋本さんっ。みんな無事なんですか?」

「あぁ。今のところは。だが下層からモンスターがどんどん上がって来てるから、いつまでもつか」


 なんでスタンピードが発生したんだ?

 どこかに資源が埋蔵されていたのか? だとしても過剰採掘しない限り、スタンピードは起きないはず。


「ツララァ。ツララはどこだぁ」


 ブライトだ。彼が戻って来たってことは、冒険者の援軍が到着したのだろう。


「とっとぉ」

「ツララ! おぉ、ツララァ。父ちゃん心配した……元気になったか?」

「あぁ、ブライト。山岡さんに魔力を分けてもらったんだよ。山岡さんは魔力の譲渡が出来るからさ」

「へぇ。そいつぁ凄ぇや。お、怪我人が多いな」

「あぁ。ツララとヴァイスに頑張ってもらわなきゃいけない。ごめんな、ツララ」


 ツララはにへぇっと笑うと、トテトテと怪我人の方へ向かった。

 意識のない人、意識はあるが朦朧としている人、ちゃんと意識はあるが無理に動かさない方が良い人、他にも中程度の怪我人と、その数は食品フロアの比ではない。


「生成に巻き込まれた他の建物や外にいた人たちが、全員この階層とその下の階にいたようなんだ」

「え、そうなんですか?」

「映画館以外の所にいたって人も多くてな。この先の通路をしばらく行くと、ダンジョンらしい構造に変わるんだが――」


 映画館以外の場所で巻き込まれた人たちは、全員そっちのエリアで発見されたらしい。

 三十分ほど歩くと下層へ続く階段を見つけ、赤城さんのチームとAランク冒険者のパーティーが下りて行った。

 そこでも生存者を発見したが、同時に奥からモンスターの群れが迫って来ていた……と。


「まさかスタンピードが起こると思ってもみなかったし、生存者を一旦スクリーンのある部屋で休ませていたんだ。水と軽い食事をしてもらってな」

「スタンピードが起こるとわかっていたら、順次、上の階に誘導したんだが……」

「我々の判断ミスで、この大渋滞だ」

「仕方ないですよ。ここから地上まで、普通の人の足だと数時間かかるんです。空腹のまま歩かせるわけにもいきませんし」


 ツララとヴァイスのチェンジが始まった。

 が――。


「え、ベッドの空きがなくなった?」

「どうした、三石」

「ヴァイスが手紙を咥えてて、安虎の病院が満杯だから別の病院に移動するって」


 安虎病院から救急車でひとり、ないしは二人ずつ運ぶより、雛たちを別の病院に移動させてからチェンジを再開した方が早いって。

 確かにそうだけど、二十分ほど待機しなきゃならなくなる。


「山岡さん、ヴァイスを頼みます。俺、前線の方に手伝いに行きますので」

「わ、私もいくわっ」

「僕も行くぜっ。ヴァイス、山岡と一緒にいるんだぞ」

「ケッ。ボクはヘーキだぜ」


 ほんとにこの子は……いい子なんだけど口が悪い。天邪鬼め。

 俺とサクラちゃん、ブライトは通路の奥を目指した。

 だいぶん生存者の数もまばらになっていて、壁走りしなくてもよさそうだ。


 分かれ道があるたびに、冒険者がそこを塞いでモンスターが流れ込んでくるのを阻止している。


「回復必要なら言ってくださいっ。サクラちゃんが大量に持っているのでっ」

「じ、じゃあ魔力ポーションをっ」

「待ってて、すぐ取り出すわ」


 ポーションを配って更に前進。

 そして激戦区へ到着したが、厄介なことになっていた。


 モンスターで溢れた十字路。左右の通路からモンスターが押し寄せ、正面の通路はモンスター越しに赤城さんたちの姿が見えている。

 その赤城さんたちの奥にはモンスターがいて、つまり挟み撃ち状態と。


「右か左、どっちでもいい! モンスターの進軍を止めろ!!」


 倒しても倒しても、左右の通路からモンスターが押し寄せる。

 十字路がモンスターに塞がれているせいで、赤城さんたちが戻ってこれない。

 どうする……どうする……。


「た、助けてぇぇーっ」


 悲鳴!?

 ぎょっとなって声のする方を見た。右の通路の先!?


「僕が見てくるっ」


 バサっと翼を広げて飛んでいくブライトは、直ぐにUターンして戻って来た。


「右の通路、百メートルぐらいの所に小部屋があって、そこに冒険者が!」

「なっ」


 モンスターが通路一杯にひしめくこの状況で、途中の小部屋に冒険者が!?


「クソッ。先行していたパーティーか」

「生存者の捜索を分散してやっていたんだ。スタンピード発生前にこの通路を通過したんだろう」

「右の通路から来るモンスターに攻撃を集中しろ! 絶対助けるぞっ」


 あぁ。絶対に助ける。絶対に!



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