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はい、こちらダンジョン捜索隊~自分はレッサーパンダだと言い張る相棒の♀タヌキが、うっかり記録用録画を配信してしまった件。  作者: 夢・風魔
5章

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96:忍者。

「後藤さん!? うわっ、なんだこれ」


 階段を駆け下り、駐車場へと出たつもりだった。だがそこに駐車場はなく、赤い絨毯が敷かれた廊下が続くだけ。

 なんか……なんか見覚えのある光景だけど……どこで見たっけ。


 廊下の途中の曲がり角から、次々に人が駆けてくる。

 先頭の人が俺を見て一瞬立ち止まるが、すぐにまた走り出し大声で叫んだ。


「た、助けてくれ! 奥からモンスターがたくさんっ」

「たくさんっ!? ブライト、飛びにくいのはわかってる。でも上に戻って冒険者を何組か連れて来てくれっ」

「わかった。任せとけっ。ツララを頼むぜっ」

「とっと、がんばえ」


 一瞬デレっとしたブライトは、すぐさま翼を広げて飛び立った。

 今なら食品フロアまで同行してくれた冒険者も、まだショッピングモール内にいるはずだ。

 一階の人たちも残っているかもしれない。


「こっちです! ここから上の階に上がれますっ」

「う、上?」

「ショッピングモールの食品フロアです! 今仲間が上の階に飛んでいって、冒険者を呼びに行ってもらってます。すぐ駆け付けてくれるはずなので、とにかく階段を上ってっ」

「わ、わかりました。まだ通路の奥に生存者と救助の人たちがいますっ」


 上の階にモンスターがリポップしているかもしれない。そんな不安もあったけれど、上の方から犬の声が聞こえ、それが近づいていたから大丈夫だろう。


「サクラちゃん、俺の肩に」

「えぇ」


 サクラちゃんを肩車し、奥へとはし……走れない!

 駆けてくる人がまだまだいて、波に逆らうのもやっとだ。駐車場にこんな大勢いたのか?

 そんなバカな。


 角のところまで来ると、曲がった先で後藤さんを発見。


「後藤さん、お手伝いにきたわよっ」

「お、おおぉ、サクラと悟か」

「後藤さん、なんですかここ?」

「ここはショッピングモールの隣に併設されていた映画館側だ。まったく、ぐちゃぐちゃに空間をねじりやがって」


 映画館……そうだ。母さんと前に行った映画館でも、こんな感じだった。

 赤い絨毯が敷かれた通路。

 だけど映画館の通路はこんなに長くない。内装構造だけ似せたのか。


 厄介なことに、本来広いはずの通路が一部で狭くなっている。ダンジョン本来の構造が侵食しているのだろう。

 その狭い部分は人がひとりがやっと通れる程度の幅しかなく、そこで大勢が詰まってしまっているんだ。


「後藤さん、他の人たちは!?」

「奥だっ。スタンピードが発生して、こっちに流れてこないよう赤城たちと冒険者が食い止めているっ」

「スタンピード!?」

「ヴァイスかツララはいるか!?」

「はい、ツララが。でも疲労が」


 食品フロアで揉めていた間も、ツララは休息していた。それでもあれからまだ三十分も経っていない。使えたとして一回が限度だろう。

 だけど後藤さんと一緒に、秋山さん、橋本さん、そして山岡さんがいるはずだ。

 山岡さんなら――。


「山岡! ツララにマジックポイントチャージを頼むっ」

「りょ、了解! すみません、ちょっと通してください。通して――」

「ツララ。山岡さんに魔力を分けてもらうんだ。スキルが使えるようになるから」


 山岡さんは自分のMPを他人に譲渡出来る。譲渡すれば当然、彼の魔力が減るが、そこはポーションで補える。

 ツララやヴァイスは人間じゃなく動物だ。傷を治すポーションはいいけど、魔力を回復するポーションがどう影響するかまだわからない。雛ってこともあるし。

 それで無闇に魔力ポーションは使わないようにって、化学研究チームにも言われている。


「悟。この先、五十メートルほどの所に三番スクリーンがある。そこに重傷者を寝かせてある。Aランクの冒険者が部屋の出入り口を守っているが、このままじゃ運び出せない」

「わかりました。ツララをそこへ連れて行けばいいんですね」

「頼む。ツララ、ちっちゃいお前に無理をさせて悪いな」

「おひげのおじちゃま、チュララだいじょーぶ」


 山岡さんが合流し、ツララに魔力を譲渡。途端に元気になったツララは、翼を広げてパタパタと羽ばたいた。もちろん飛べやしない。


 問題はあそこの狭くなっている部分だ。

 山岡さんが人の流れに沿ってこちらにやってこれたけど、流れに逆らうとなると……。


「みなさん、止まってください。俺がそちらへ行きますからっ」


 とお願いしても、止まる気配がない。むしろ聞こえていないんだろう。

 みんな悲鳴を上げ、青い顔をして前に進むことしか頭にないんだ。

 一刻も早く向こう側に行かなきゃならないのに。


「悟くん、壁を走ればいいじゃない」

「壁? 走れるわけないだ――走れたんだった!」

「悟っ。山岡も連れていけっ。ヴァイスの回復もしてやらなきゃならねぇだろっ」

「はい! 山岡さん、失礼します」

「え、え? み、三石いぃぃぃっ」


 山岡さんを抱き上げ、一旦後ろの方へ下がった。少しでも人がバラけている場所で、一気に駆け出し壁に足を着ける。


「三石いいいぃぃぃぃ。おち、落ちるうぅぅぅぅっ」

「大丈夫です。山岡さん。壁は走れますから!」


 ただし歩けない。

 側面の壁を走ると、あの狭くなっている部分で頭をぶつけるな。

 よし、天井だ。天井を走ろう。

 落ちないよな?


 実際に天井を踏みしめると、落下することなく走れている。

 そして問題の狭くなっている部分では、山岡さんを肩に担ぎ直して――。


「サクラちゃん、しがみつけ!」

「ついてるわあぁぁぁっ」

「山岡さん、腹筋の要領で頭を低く!」

「ひいぃぃぃぃっ」


 無事、突破した。



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― 新着の感想 ―
つららちゃんそんなに頑張んなくてもいいんだよってなる(T_T)
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