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はい、こちらダンジョン捜索隊~自分はレッサーパンダだと言い張る相棒の♀タヌキが、うっかり記録用録画を配信してしまった件。  作者: 夢・風魔
5章

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91:ダンジョンにビル。

「二階へ下りる階段を見つけました。俺たち、どのくらい走ってましたか?」

『十分ほどです。三石さん、一度、オートマッピングされた地図を見せてください。こちらでデータ化します』


 同行するドローンは一機。それに向かって俺が手にしている地図を広げて見せる。

 一階は普通の迷路状になった構造で、さすがに全力疾走は出来ない。たぶん、普通の人の全力疾走並みの速さだ。

 十分で階段を見つけたんだから、ここまで意外と近かったな。


『地図画像の取り込み完了しました。三石さん、先に冒険者を転送します』

「え、冒険者を?」

『東京本部のギルドマスター柳だ。一階の残りエリアは冒険者の捜索させる。階段から出入口までのルートの安全も確保しなきゃならんだろうし、君はこのまま二階に下りてくれ』』

「それは助かります。こっちへ来る冒険者は、病院の方へ?」

『あぁ。七十人ほど行ってる』


 川口さんと兄妹で冒険者の転送開始。

 まずヴァイスを広い場所に下ろす。壁際に立たせたとき、転送されてくる人が位置的に壁の中だったらと考えると恐ろしかったから。

 そして俺とサクラちゃん、ブライトもヴァイスから離れ、且つモンスターが来ないよう警戒する。


「病院、誰かいますか?」

『私よ、悟くん。こっちは準備できたわ。一度に送れるのは八人が限界みたい』

「わかったよ。じゃあ兄妹には交互にチェンジしてもらおう」


 合図を送るとヴァイスが消え、同時に円陣を組んだ人たちが現れた。


「うおっ。本当にダンジョン内だっ」

「あの、ツララいますか?」

「あ、えぇ、ここに」

「ツララァァ」

「とっと」


 まだ飛べないツララはえっほえっほと歩いて、人の足元をすり抜け出て来た。


「俺たちは周辺の安全を確保しに来ました」

「すぐ次の転送に取り掛かってくれって」

「じゃあツララから離れて貰っていいですか? ツララ、さっきの場所に立ってくれ。周りが広いところでチェンジした方がたぶん安全だと思うから」

「いえっちゃー」


 えっほえっほとツララが歩き、チェンジで転移してきた場所に戻る。冒険者たちはツララの傍から離れ、左右後方の通路の前に立った。通路からやって来るモンスターは、彼らに任せられる。

 ここまでやって来る間に見たモンスターは、西区の地下五階あたりのモンスターと同格だと思う。

 一年も冒険者をやれている人なら、苦戦しないだろう。


『三石さん。川口さんも行きます。三石さんは握手した手をいっぱいまで伸ばして、広い場所にいてください』

「了解です」


 通路の真ん中に立って右手を伸ばす。


「OK。川口さんどうぞ」


 やや間があって、伸ばした右手に感触があった。

 すると川口さんと、六人ほどの冒険者が現れる。


「すぐ次に行きます」


 それだけ言うと川口さんはまた消えた。左手は病院側で待機してる人と握手しているから、すぐに戻れるんだろう。

 冒険者はスマホ片手にダンジョンの入り口側の通路へと向かった。

 雛たちと川口さんが往復して、冒険者第一弾全員がやってきた。

 何人かがタブレットを持っていて、俺のスキルで書かれた地図データを受け取っているそうだ。そのデータに自分たちが歩いた場所を直接描き込んでいくらしい。


「ではみなさん、よろしくお願いします」

「あぁ、一階は任せてくれ」

「捜索隊のお兄さんたち、気を付けてね」

「ありがとうございます。みなさんも気を付けてください」


 冒険者と別れて二階へと下りた。

 ここも迷路構造だ。さっきと違って剥き出しの土じゃなく、石畳構造だ。


「よし、走るぞ。サクラちゃん、しっかり掴まって」

「オッケーよ。悟くんにしてはゆっくり走ってるのもね。このぐらいのスピードなら、私が自分で走った方が早いぐらいよ」

「まぁそうだけどさ、スピード出し過ぎると、角を曲がれなくなるから」

「壁がぶち抜ければいいんだけどよぉ」

「あー、それは以前、確かめたことがあるんだよ、ブライト」


 結果は、無理だった。

 オブジェの破壊は出来るんだけど、ダンジョンの構造物自体の破壊は出来ない仕様。


「やったことあるのかよ……」

「さ、さすが悟くんね」


 なんでドン引きしてんだよ。言い出したのそっちじゃん。


 二階を走り回る事三十分。

 俺たちはついに見つけた。


「うそ……だろ……」

「ダンジョンの中に、ビル?」

「ぼ、僕が見たのはこのビルだ。ダンジョン生成の時に吸い込まれた、あのビルだぜ!」


 上野駅近くのショッピングモール……それがなんでダンジョンに!?


 い、いや。生成に巻き込まれた建物は、ダンジョンの中に吸い込まれて存在する。

 必ずじゃない。中にはダンジョンの壁の中に……というものもあった。

 都内の三カ所にあるダンジョンは、どれもビルなんてない。生成時、そこにはビルが建っていたはずだけど、中にはなかった。

 ビルは階層をぶち抜く大きさだし、だから存在しないんだろうって。


 でもこれは、どう、なんだ?


「本部、見えますか?」

『あ、ああ。見えている……ビルが存在しているなんて、初めてだ』

「これ、ほぼ屋上に近い位置だと思いますが、入りますか?」


 ショッピングモールだ。お客や従業員が中にいるはずだ。

 たぶん……。

 店内の空間が歪められていたら、バラバラの場所に転送されている可能性もあるけど。

 

『三石、いったん捜索隊を全員そっちへ送る。捜索はそれからだ』

「了解しました」


 十数分かかって全員が集合した。中には冒険者も混じっている。


「よぉし、全員聞けぇーっ」


 後藤さんの声が響く。

 俺が捜索隊に入社する前に、後藤さんは現場を退いている。

 一緒に捜索するのは、初めてだ。


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