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はい、こちらダンジョン捜索隊~自分はレッサーパンダだと言い張る相棒の♀タヌキが、うっかり記録用録画を配信してしまった件。  作者: 夢・風魔
3章

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48:ヨシ!

「上空からの見張りは、僕に任せな!」


 なんの見張りだ?


 リュックを前にし、背中にはおんぶ紐を装着したサクラちゃんが。後輪側のカゴにタオルケットを敷き、そこにはスノゥと卵が鎮座する。

 で、ブライトは上空だ。


「右よぉーっし! 左よぉーっし! 後ろも異常なぁーっし! 変質者、悪党なぁーっし!」


 変質者ってお前……。


「ママァー。フクロウさんが喋ってるよぉ」

「しっ。見ちゃダメっ」


 むしろ俺たちが変質者だと思われてないか!?


「おいブライト、静かに飛べよっ。周りの人に迷惑だろ」


 主に俺が迷惑だ。

 その後もブライトは、交差点の度に右だ左だ前後を警戒してはヨシヨシ言っている。

 関係者だと思われたくないが、サクラちゃんとスノゥがいるから無理だ。

 結局、会社に到着するまで注目を浴び続けた。

 

 いや、社内でもそうだ。


「僕ぁブライトだ。よろしく! 妻はスノゥだ。よろしく!」

「よろしくお願いします。よろしくお願いします」


 こんな調子だから、目立って仕方がない。

 自己主張が激しすぎるんだよ。


 待機室に入ると、後藤さんが待っていた。


「よく喋るフクロウだな……。お前たちが遠くから来るのもわかる音量だったぞ」

「ブライトだ」

「あぁあぁ、聞こえてた。嫁さんはスノゥだってんだろ? はいはい」

「後藤さん、何かありましたか?」


 後藤さんはUSBメモリを持っていて、それを俺に見せてくれた。


「連絡が取れた。というより、向こうから連絡が来たんだ。北海道の野鳥観測グループからな」

「じゃあ、スノゥの発信機がやっぱりあったんですね」

「マイクロチップだそうだ。フクロウの飛行速度じゃあり得ないスピードで日本に来てたから、驚いてたぞ」


 そりゃそうだ。二羽は飛んで来たといっても、自力じゃない。飛行機だ。

 後藤さんが持っていたメモリには、スノゥの移動記録が入っているという。

 パソコンに差して確認してみると、地図上にスノゥが移動した記録が線となって記されていた。

 線は動画再生もでき、それを見てみると……。


「あれ? 線が消えましたね」

「あぁ。日付を見てみろ」


 日付――四月十八日……二カ月前!?

 そうか。この日、ダンジョンの生成に巻き込まれたんだな。

 再びスノゥが観測されたのは十日後。この二羽は十日もダンジョンにいたのか。大変だったろうな。


「止まった? もしかしてここが研究施設ですかね?」

「あぁ。調べてみたが、ロシアの軍事施設だった」

「軍……また余計なことして、これ以上人口を減らさなきゃいいんですけどね」

「だな」


 ロシアは率先してダンジョンベビーの研究を行った国の一つ。

 ダンジョンベビーを人工的に作り出そうとする研究だ。

 そして……都市部が壊滅した国でもあった。


 生まれながらにして何かしら優れた部分があるダンジョンベビー。それを人工的に生み出せれば、貴重な戦力になる。

 そう考えて実験を行った国は、実は少なくはない。

 アメリカ、そして日本でも実験を行おうとしたけど、倫理観だなんだで安全性をしっかり確認してから――ってことになってて、それを確かめる前に他の国で大惨事になったから中止になっただけ。


 手っ取り早く実験するために、臨月を迎えた妊婦をダンジョンで出産させるというもの。

 だがそこで生まれたのは人ではなく、むしろモンスターに近い容姿の生き物。

 それは人を襲い、さらにはダンジョンを抜け出し町へと下りると、次々に人を襲った。

 食べたら食べただけ肥大化し、記録にあるものの中で最大サイズは、全高七メートル。

 当時、ロシアの人口は一億五千万人ほど。

 それが今じゃ、八千万にも満たないんだから、ずいぶんと減ったことになる。


 一度じゃ飽き足らず、何度も何度も繰り返し実験を行った結果だ。

 何度やっても同じ。人工的にダンジョンベビーを生み出すことは出来ず、生まれるのは異形の怪物だけ。

 他の国もそうだ。


 異形の怪物を倒すのは難しく、何か特殊な電磁パルスを発しているようで、軍の兵器も動かなくなってしまう。

 そのせいで討伐が遅れ、被害が尋常じゃない規模になってしまうんだ。

 ダンジョンで出産させる――悍ましい実験を行った国は、実験を行う前と後とでは人口が三割から五割減少している。


 あれで懲りただろうに、まぁだやってるのか。


「じゃ、マイクロチップの摘出手術に行ってもらおうか」

「取るんですか?」

「あぁ。観測グループの人の話だと、そこのサーバーが何度も外部から侵入されてるそうだ」

「ロシアですか……」

「まぁここも追跡されてるだろうが、このまま追跡されっぱなしじゃ嫌だろう?」


 その話をすると、スノゥはぜひ取ってくれと訴えた。

 そういうことなら。


 摘出はすぐに終わって、局部麻酔なのもあってすぐ退院。

 獣医さん曰く――


「普通の子は局部麻酔なんて絶対無理。だって言葉が通じないから、暴れないでって言っても無駄だからね。ほんっと、スキルを持った子たちはいいわぁ。こっちの言葉も、その子たちの言葉も分かるから」


 とのこと。


「私も昔はそうだったわぁ。獣医さんって、すっごく怖い人間って思ってたもの。いつも痛い針を刺したり、無理やり口の中見たりしてたから」

「獣医さんはみんなのためを思って診てくれているんだけどね。でも言葉が通じないと、そういう誤解が生まれても仕方ないのか」

「えぇ。今ではすっごく感謝してるの。もふもふさせてあげたいぐらいよ」


 だからサクラちゃん、さっきの獣医さんの頬をペタペタ触っていたのか。

 ただの変質者みたいだから止めさせようと思ったけど、獣医さんが喜んでいたしいっかって。

 サクラちゃんなりのお礼だったんだな。


「さて、じゃあ本部に戻るか。スノゥを休ませてやらないとな」

「大丈夫ですよ。ちょっとチクチクするだけで」

「まぁいつ出動がかかるかわからないし、戻らなきゃいけないってのが本音だけどね」

「あっ。そういうことだったのですね。私のために、すみません」

「気にしないキニシナイ。ね、悟くん」

「そうだぜ、スノゥ」

「がおぉーっ」

「な、なんだよまったく! なんで僕だけ」


 ブライトがブツブツと文句を言う。

 今のがおーはスキルじゃなくって、レッサーパンダ風のがおーだな。


 そう言えばこの二羽、いったいどんなスキルを手に入れたんだろう?




*******************

ブライトのイメージは、ゼルダの伝説ブレスオブワイルド(ゼルダ無双厄災の黙示録)に登場するリーバル・・・のテンションを高くしたような・・・


を目指しているのですが目指せていないそんな感じです。

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