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はい、こちらダンジョン捜索隊~自分はレッサーパンダだと言い張る相棒の♀タヌキが、うっかり記録用録画を配信してしまった件。  作者: 夢・風魔
2章

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40:ほわぁ~。

「え、えぇ~い、チャームッ」


 会社に戻って来て、サクラちゃんが新しく手に入れたスキルを試した。

 試したと言うか、みんなが「見たい」と言うのでやってるようなものだ。


「「ほあぁ~……サクラさまぁ……ほあぁぁ~」」

「……七……八……九……十」

「は、はいっ!」

「ふむ。十秒ぐらいか。ノーマルなチャームだな」

「そうですか。十秒間、相手の動きを封じられるならかなり有用ですね」


 チャームにはいくつかタイプがある。

 チャーム=魅了というだけあって、対象を虜にすることが出来るって点は共通。

 そのうえで、命令が出来る、出来ない。効果時間が長い、短いなどの違いがった。


 サクラちゃんの場合――。


「よし、次の実験だ。サクラ、チャームした後、上田に命令してくれ」

「め、命令ですか? いったい何を言えばいいかしら」

「そうだな。椅子から立ち上がらせるとか、そんなものでいい」

「あの後藤さん。僕限定ですか?」

「わかりました。えぇ~い、チャームッ」

「ほわぁわぁ~ん……サクラさまぁ……」

「上田さん、お座りっ」


 だが事務処理担当の上田さんは、ぽぉっとした顔でサクラちゃんを見ているだけ。

 魅入らせて行動不能にするだけっぽいな。

 その効果時間は十秒。長くはないが短くもない。後方支援スキルとしては優秀なスキルだ。

 命令形の場合、それはそれで悪くないんだけどデメリットもある。

 なんと……術者を追従するのだ。

 つまりついて来る。

 捜索や救助のために出動している時だと、邪魔でしかない。


「ただいま。サクラちゃんが新しいスキルを手に入れたんだって?」

「あ、赤城さん白川さん、青山さん。おかえりなさい。運よくスキル書を手に入れたもんで」

「へぇ。で、何のスキルだったんだい?」


 パトロールに出ていた赤城さんたちが戻って来て、さっそくサクラちゃんのスキルに興味を持ったようだ。


「チャームだ。お、そうだサクラ。赤城にもスキルを使ってみてくれ」

「えぇっ……」

「へぇ、見てみたいなぁ、サクラちゃんのチャーム」

ショウの場合、スキルを使わなくてもチャームされるだろ」

「翔は動物好きだからな」

「なんだか恥ずかしいわ。ほんと……かわいいって罪なのね」


 ……サクラちゃん……謙虚なのかそうじゃないのか、ときどきわからなくなる。


 サクラちゃんは赤城さんたちに向かってスキルを発動させた。

 俺と違って一発で成功出来るなんて、羨ましい。

 サクラちゃんのチャームは、魅了したい対象と、その対象を中心にした狭い範囲内の生き物に効果があるようだ。

 赤城さんを対象にし、左右に白川さんと青山さんがいる。


 ……かかったのか?


 ……どっち?


「あぁあぁ。赤城はいつもニコニコしてるから、かかってるのかどうかもわかりゃしない」

「ははは、そうでしたか」

「どうせかかってなかったんだろう」

「チャームできなかったの?」

「僕はいつでもサクラちゃんに魅了されてるよ」

「きゃーっ。もうっ、やだわ赤城さんったら。もふもふしてもいいわよ」

「やった」


 ……もふもふ?






「えぇ~。サクラちゃん、新しいスキルを覚えたの? ね、どんなの? どんなの?」

「チャームっていうの、おばさま」

「ちゃーむ! って、何?」

「母さん。チャームっていうのは、魅了っていう意味だ」

「あぁ。さすがお父さんね。魅了、魅了。サクラちゃんはかわいいものねぇ。ね、チャーム見せて。見たいわぁ」


 ……母さんはスキルがなくても、サクラちゃんのチャームにかかってそうだ。

 それより。


「かあさん、ご飯」

「あらぁ、忘れてたわ」


 はぁ……。

 会社でサクラちゃんのチャームのテストをして、帰宅したのは普段より少し遅い時間。

 お腹空いた……。


 母さんは楽しそうに鼻歌を口ずさみながら食事の用意を始める。

 やっとご飯だ。


「そうだ。明日は休みなんだけど、サクラちゃん、何か必要なものあるかい?」

「買い物? いいわねぇ。あ、悟。ひんやりパットを買って来て。これから暑くなるから、サクラちゃん用にね」

「わかった。じゃ、明日は買い物だ」

「お買い物ね。楽しみだわぁ」

「ん? 着信音が鳴ってるぞ。悟、職場じゃないのか?」


 着信? あぁ、なんかメロディーが鳴ってる。

 でも俺のスマホじゃない。


「私のだわ」


 椅子からピョンと飛び降りたサクラちゃんが、リビングのテーブルに置いてあったスマホを取りに行く。

 

「まぁ、久保田さんだわ」

「久保田?」

「飼育員の久保田さん。はい、サクラです」


 飼育員。ってことは、サクラちゃんがいた動物園のかな?


 サクラちゃん……なんで自分はレッサーパンダって思っているんだろう。

 その飼育員なら知ってるのかな。


 サクラちゃん、いったい何の話をしているのかな。

 

「えぇ~、久保田さんも配信を見てるの? やぁ恥ずかしいわ」


 見てるのか。


 暫くサクラちゃんは楽しそうに話しをし、それからスマホを切った。


「サクラちゃんが動物園にいたころの飼育員さん?」

「そうなの、おばさま。懐かしいわぁ。園のみんな、元気かしら」

「会いにいかないの?」

「私がいたのは宮城県なの。気軽に里帰り出来ないわ」

「あらぁ、ちょっと遠いわね」


 里帰り、か……。スキルを手に入れてから一度も里帰りしてないのかな?


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「買い物? いいわねぇ。あ、悟。ひんやりパットを買って来て。これから涼しくなるから、サクラちゃん用にね」 涼しくなるのにひんやりパット? 時系列を確認してないけど、暑くなるからの間違いでは?
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