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はい、こちらダンジョン捜索隊~自分はレッサーパンダだと言い張る相棒の♀タヌキが、うっかり記録用録画を配信してしまった件。  作者: 夢・風魔
7章

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195/197

195:日本に帰って来たぞい。

「ただいま」

「おばさま、ただいま~」

「お土産ないの、ごめんなさい」

「はぁ~、やっと落ち着けるなぁ」

「えぇ、本当に」

「たっだいま~」

「オレ、眠い……」


 帰ってきた。時差の関係で何日ぶりなのかもよくわからない。

 いや、たぶん三日もいなかったんじゃないかな。どうだろう?


「あらぁ、いらっしゃ~い」

「「お邪魔します」」


 帰ってきたのに「いらっしゃい」とは――いるからだ。


「なんで俺ん家なんだよ」

「ママさんの日本食が美味しいから」

「え? め、迷惑でしたか? オーランドさんが当たり前のように着いて行ってるから、いいのかと思って」

「あら、迷惑だなんてとんでもないわ。悟のお友達が増えたんだもの、大歓迎よ。それも事前に連絡受けてるから、こっちも準備しちゃってるし」


 空港に到着後、現地解散ではなくいったん冒険者含めて本部ビルへと移動。

 そこで解散式を行って――まぁ協力してくれた冒険者にはカード番号を控えて、うちの製品を割引特価で購入できるPINコードを配布するってんでそれの手続きをやっただけ。

 捜索隊社員の方には、明日からの勤務スケジュールのこととか少し話が合った。


 ビルへと向かうバスにも、オーランドは当たり前のように乗車。

 この時点でこいつはうちに来るつもりだろうなと思って、母さんに電話をしておいたんだ。

 サクラちゃんが。


「さぁさぁ、上がって頂戴。晩御飯までまだ時間があるし、交代でお風呂入っちゃってね」

「やぁ、いらっしゃい。時差ぼけは大丈夫か?」

「あー……どうだろう? 結局、救助活動中もずっと寝てないし」

「飛行機の中じゃ、みーんな寝とったばい」


 そう。帰りの飛行機では行きとは違う意味で静かだった。

 ほとんど全員、ぐっすり眠っていた――と、金森さんから聞いた。

 まぁみんな俺たちと同じで、不眠で救助活動していただろうからなぁ。


「今夜、ちゃんと眠れるのかい?」

「ど、どうでしょう」

「飛行機の中じゃちゃんと眠れていないだろうし、たぶん大丈夫じゃないかな」

「人間は羊を数えると眠れるっていうね。僕には理解できないけど」

「ネズミの数なら眠れるのかしら?」

「お腹が空くだけだと思うよ、僕は」


 それもそうね、とスノゥが笑う。

 人間は羊の数を数えたって空腹にはならないよ。


 荷物を置いて、風呂に入って、テレビを点ける。

 未だにアルジェリアのニュースが流れているが、ダンジョンの入り口は軍によってしっかり閉鎖されている。

 どうやら入口周辺をコンクリートの壁で囲うそうだ。他の国でもそうしているように。


 ダンジョン保有個数の多いアメリカや日本なんかが、今後、ダンジョンの管理について助言をするらしいこともニュースで言っている。

 そのうちギルドのような組織も出来るだろう。


「悟、悟ー」

「はーい。なんだい、母さん」

「これ、お布団ね」

「……買った?」


 見慣れないマットレスがある。


「うふふ。だって悟のお友達が頻繁に来てくれるじゃない。布団だけじゃ腰が痛いでしょ?」


 頻繁……頻繁なのか……そうかもしれない。

 ちょっと前までは、誰かがうちに泊まりに来るなんてなかったのにな。


「お布団二階に運んだら、夕食にしましょうね。今日はね、蟹鍋なのよ」

「え、蟹!?」

「そう。北陸の親戚から、ちょうど昨日、蟹が送られてきたのよぉ」


 おおぉぉ!

 母さんの親戚が、北陸で漁師をしている。その親戚が年に一度、こうして蟹を送ってくれるんだ。

 ちょっとサイズが小さめだったり、足が取れていたり。市場に出すと安くなってしまうからって。


「今年は五杯も送ってくれたんだけど、ちょうどよかったわ~」

「あ、サクラちゃんたちはどうなんだろう? 蟹って食べるのかな」

「蟹? どうかしらぁ。動物園では頂いたことなかったし」

「ウチは食べるばい」

「僕らも食べるよ」


 そうか。基本は肉食だし、食べるのか。

 じゃあ、足を何本か味付けしないで、軽く茹でただけのやつを出してやるか。


「母さん、何本か足貰うよ」

「いいわよ、お湯沸かしておくわね」

「カニっちぇなぁ~に?」

「ん? ツララは蟹を知らないのか。ほら、これが蟹だよ」


 まだ足を取ってない状態の蟹をツララに見せてやる。

 すると、予想外な反応はヨーコさんからだった。


「か、蟹!? それが蟹なん? え?」


 全身の毛を逆立て、かなり驚いている様子だ。

 他にもブライトとスノゥも少し引いている。


「な、なんだいその赤い奴」

「さ、悟くん。そ、それが蟹?」

「そうだけど」

「大きいじゃないか!」

「そうばいっ。ウチが知っとる蟹って、こんなんやけん」


 ヨーコさんが両手を揃えて、パーにして見せる。


「悟。ヨーコさんたちが知ってる蟹って、川蟹じゃないかしら? さすがに海で捕れる蟹を、野生で食べるなんてことないでしょうし」

「あ、あぁ~なるほど」


 川にいる蟹か。そりゃアレと比べたらこっちはデカいよな。


「はっはっは。ヨーコさん、海にはもっと大きな蟹もいるんだよ」

「お、おじさん。これより大きい蟹?」

「あぁ。タカアシガニといってね、足を広げると、なんと……」

「な、なんと?」


 水族館にいるあのデカいのかな?

 確かに大きかったな。


「なんと、三メートルにもなる巨大な蟹なんだよ」

「さ、三メートル!?」

「それモンスターじゃないのか!?」

「さ、三メートルにもなる蟹って……あの蜘蛛と一緒ばいっ」


 く、蜘蛛……いやサイズ感はそうかもしれないけど、でもなんか違う。

 いや、違ってて欲しい。


 ちょっと嫌なものを想像してしまったけど、送られてきた蟹は今年も無事に美味しくいただくことが出来た。

 蟹初体験のサクラちゃんやヴァイス、ツララも、川蟹なら食べたことのあるヨーコさん、ブライト、スノゥも満足してくれたようだ。


 はぁ……日本に戻ってきたんだなぁ。


蟹・・・食べたい

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