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はい、こちらダンジョン捜索隊~自分はレッサーパンダだと言い張る相棒の♀タヌキが、うっかり記録用録画を配信してしまった件。  作者: 夢・風魔
7章

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192/197

192:叫ぶ者と叫ばない者。

「トオォォォォォール・ハンッマアァァァァァーッ!!」

「ラァァァイトニング・スラァァーッシュ!」


 え、何それ。なんでスキル名叫ぶんだ?

 なんでオーランドまで?

 あとなんで俺を見る?


 蜘蛛の糸から脱出するために、二人はスキルを使って糸を焼ききった。

 俺は……インパクトは打撃攻撃。切ることも焼くことも出来ない。そもそも腕が動かせないんじゃ意味がない。

 ストーン・ウェーブ。宙に吊るされている状況じゃ使えない。


「あのー。俺の糸ぉ」


 オーランドは手にした剣で、他の子たちの糸を切っている。

 真田さんは集まってくる蜘蛛に、なんか光の槍を振らせて片っ端から殲滅していた。いや、これまた派手なスキルだな。しかも「スラァァァァライトォォォォォ」とか叫んでるし。

 もしかしてあの人、二重人格? 派手なのは恥ずかしいとか言っていながら、めっちゃノリノリで必殺技叫んでるじゃないか。


「あのー、俺の糸ぉ」


 ……ガン無視かよ!

 クソォ。クソォ。


「ふぬ……ぬあああぁぁぁぁぁぁっ」


 力任せ押し広げようとしたら、これが……ブチブチと音を立て、糸が切れたじゃないか!


「よぉっし、脱出!」

「地味だな」

「うるさい。助けようともしないくせに」

「助けが必要だったか? 君は自力で抜け出したじゃないか」


 そうだけどさぁ……はぁ、まぁいいや。


「ヨーコさん。妖狐モードで吊るされている人を下ろしてやってくれ。オーランド、ヨーコさんを手伝ってくれるか」

「もちろん」

「大きくなるわよぉ~。コォン」

「下ろした人たちは一カ所に集めてくれっ。ヴァイス、準備だけしておいてくれよ」

「ヘッ」


 それからスノゥには、最初の転移で一緒に地上へ戻ってもらう。こちらの状況を伝えてもらうためにだ。

 全員を救出する間、俺とブライト、真田さんで防衛ラインを築く。


「サクラちゃんは救出後の人たちを頼む。もし蜘蛛が近づいたら、威嚇で注意を引き付けつつ俺たちの方に来てくれ」

「わかったわ」


 しかしいるわいるわ。いったい何百匹いるんだこの蜘蛛は。

 それに、オーランドと真田さんが言った女王蜘蛛ってのが見当たらない。たぶんデカい奴だと思うんだけどな。


 そうこうする間に一回目のチェンジが行われた。

 チェンジでやって来たツララはこの状況に驚く。


「ピヤァァーッ。おっきな蜘蛛ぉ。食べれりゅ?」

「食べちゃダメよツララちゃん!」

「ツララッ。ポンポンペインだから止めなさいっ」

「ちゅーん……」


 そうか。お腹を壊すかもしれないのか。モンスターだし、毒があるかもしれないもんな。






 宙づりになっている人たちは全員、気絶しているようだ――というかそうであって欲しい。

 一度のチェンジを送れる人数が少ないのもあって、全員を地上に送るのにかなり時間がかかりそうだ。

 糸を切るオーランドの所にも、天井から糸を伝って下りて来る蜘蛛が来ているし作業が捗らない。


 もう一度こっちに戻ってきたスノゥの話だと、冒険者は全員、ダンジョン内に入って援軍がないという。


「今対策を考えているようだから、もう少し頑張ってっ」

「大丈夫。蜘蛛の攻撃はそう警戒するレベルでもないから」


 というか、真田さんが強すぎる。

 トール・ハンマーは思ったより広範囲攻撃ではないけれど、スターライトとかいう頭上から光のシャワーを降らせるスキルは結構な範囲で蜘蛛を殲滅していた。

 スキルの間をぬって接近して来た奴ぐらい、俺が――と思ったが。


「ふおおおぉぉぉぉぉっ。炎舞!」


 拳に炎を纏わせ、蜘蛛をぶん殴っている。

 炎の軌跡のせいで、まるで踊っているように見えた。

 なんでこの人のスキルは、いちいちド派手なエフェクトを出しているんだ。


 メイン火力を真田さんに任せ、俺はサクラちゃんの方へと向かう。

 宙吊りから解放され、寝かせられている人の護衛だ。

 ブライトもいつの間にかこっちに来ていた。真田さんがいるから、自分の活躍の場がないと思ったんだろう。


「あとどのくらい残ってそう?」

「うぅん。奥の方にもいるみたいなの。少しずつ移動しながら救助しているわ」

「飛んで行って調べてやりたいが、あいつら壁やら天井から糸を吐いて来るんだ。捕まったら僕は飛べなくなるからね」

「わかってる。ブライト、それにスノゥ。俺たちから絶対離れるなよ」


 特にスノゥだ。彼女は攻撃スキルを持っていない。

 持っていないが――。


「地面の下なら暑さも和らぐと思ったけど」

「えぇ。暑いわね」

「あら。じゃーアイスフィールドしようかしら?」

「お願いスノゥ~」


 暑さが和らぐどころか、蒸し暑くすら感じる。

 そこへスノゥのアイスフィールドが展開し、ひんやり涼しくなった。

 まぁ彼女やブライトからしたら、まだ暑いのだろうけど。


「ふぅ、快適だ。さ、ガンガンやるぞ」


 と拳を構えると、何故か蜘蛛たちが後ずさり。

 ん?


「あ、こいつら」


 ブライトが前進する。


「こいつら、体温が高いんだな。僕のサーモセンサーで見ると、スノゥのアイスフィールドの外側まで下がっているんだ」

「寒さに弱いってことか」

「だと思うね」


 それはいい。スノゥにはこのまま、救助した人の所でアイスフィールドを展開してもらおう。

 これで少しぐらい離れても安全だ。

 アイスフィールドの外周であたふたしている蜘蛛を拳で殴る。

 殴る。

 殴る。


 帰ったら石鹸一個全部使って手を洗いたい……。


「こっちくるなでしゅーっ!」


 え?


 聞こえたのはツララの声。方角は背後。

 スノゥのアイスフィールドの中心部だ。


「母ちゃん、いじめちゃメッー!!」

「やめなさい、ツララッ」


 振り返ると、天井から巨大な蜘蛛が、ツララとスノゥ目掛けて飛び掛かっていた。


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