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はい、こちらダンジョン捜索隊~自分はレッサーパンダだと言い張る相棒の♀タヌキが、うっかり記録用録画を配信してしまった件。  作者: 夢・風魔
7章

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190/197

190:雄叫び。

「サクラちゃん。しっかりボクに捕まっているんだよ」

「いいから早く行って」

「ヨ、ヨーコさん、失礼します」

「いっくわよ~!」


 オーランドがサクラちゃんを抱え、真田さんがヨーコさんを抱える。

 俺はヴァイスが入ったリュックを背負い、ブライトが肩、スノゥは抱きかかえた。


 そして……渦巻く砂へダイブ!


 あ……待って。


「これ、下層まで一気に落ちるなんてオチじゃないよな?」


 冒険者、及びハンターの二人を見る。


「「さぁ?」」

「うわあぁぁぁぁぁぁっ」


 落下死なんてことが脳裏に浮かんだ。

 だが、砂の渦の中心まで来ると覚えのある感覚に見舞われる。


 これ、ダンジョン入口の渦巻ゲートに入った時と同じだ。もしくは技術部開発の転移装置……。

 と思った瞬間、視界が暗転して再び砂漠に立っていた。

 立って?


 そう、立っていた。


「ん?」


 傍には渦を巻く砂が見えている。

 さっき飛び込んだよな?


「着いたようだ」

「こ、こっちは見渡す限り、砂の砂漠なようです、ね」

「え、着いた?」


 どこに――と思ったが。なるほど、さっきとは違う砂漠・・だ。

 さっきまでは数メートルの距離に硬い土で構成された荒野があった。だけどここにあそれがない。

 遠くに見えていたはずの、あの大きな岩山もない。


「悟! この階層に人間が来てるぜ」

「え?」


 頭上からブライトの声が聞こえた。あと砂が落ちてきた。


「少し先にピンク色の布が落ちてるよ。人間の物だと思うね。ま、モンスターが服を着ていなければ、だけどね」

「本当か!? どこっ」

「こっちだっ」


 足場の悪い砂の上を、俺たちは進む。神速を持つサクラちゃんだけは、普段と同じようにポテポテと軽やかに歩いている。


「あれだわっ」

「おいバカッ!」

「サクラちゃん! ひとりで先に――」


 先に行くなと言いかけて、直ぐに砂を蹴る。

 砂にダイブしながらサクラちゃんを抱きかかえ、そのままズサー。

 背後からすさまじい威圧感を感じたけど、うん、オーランドだな。

 俺ごと斬るつもりかってぐらいの圧で、サクラちゃんの進行方向から現れたカマキリを真っ二つにした。


「ナイスだ、悟」

「だ、大丈夫すか三石さん」


 真田さんは優しい。それに引き換えオーランドめ。


「君が飛び込むのはわかっていた。だからボクが処理した」

「あぁあぁ、信頼してくれてありがとう。サクラちゃん。辺り一面が砂だけど、意外と高低差があるからね」

「ご、ごめんなさい。坂になってたのね」


 正面にピンク色の布が見える。

 だけどその手前は砂の丘。真っ直ぐ歩けば布が落ちている所に行けそうに見えるけど、実際には下って、また登っての距離。下った先が見えないから、そこに潜んでいるモンスターにも気づけない。


「ブライト、スノゥ。上空から安全かどうか教えてくれ」

「了解だ。下った先にさっきのと同じヤツが二匹だ」

「じゃ、ボクが片付けるよ」


 オーランドが先に進んで、俺たちはそれに続く。

 砂の丘を登ると、カマキリが気づいてこちらへとジャンプしてきた。


 うわっ。こいつら飛ぶのか?

 と思ったけど、ジャンプだ。上に高くは飛ばず、前進タイプの跳躍。

 けどそれは、飛んで火にいるなんたらでしかない。


 オーランドが剣を一閃しただけで、二匹のカマキリは二つに割れた。


「悟くん、右後方の砂の中から何か来てるわっ」

「ワームか!?」

「じ、じゃあ俺がやります」


 真田さんが?

 彼が空手の構えのようなポーズをとると、パチパチと何かが爆ぜる音が聞こえ始めた。

 同時に真田さんの全身が青白い、可視化された小さな稲妻を纏い始める。


 砂が盛り上がった――

 真田さんが拳を天に突き上げ――


 砂の中からサンドワームが飛び出してくる。


「トォォォォォル・ハンマアァァァァァーッ!」

「うぇ!?」


 普段の大人しそうな真田さんからは想像も出来ない雄叫びが、その口から洩れる。

 突き上げた拳から青白い雷光がほとばしり、彼はその雷光ごと拳を振り下ろした。


 まるで雷の鞭だ。

 その雷の鞭がワームに振り下ろされる。

 バリバリバリバリバリっと感電し、ワームが青白い光に包まれた。

 

 ハンマーって……鞭だったっけ?


 放電が収まり、残っていたのは焦げ臭いニオイと黒煙を上げるワーム。


「ト、トール・ハンマーカッケー!!」


 いつの間にかリュックから出てきたヴァイスが、ピョンピョン跳ねて目をキラキラさせる。

 な、なんてド派手なスキルなんだ。


「ふぅ……あ、他はいませんか? 大丈夫そう? あ、そうですか。よかった」


 いつもの大人しーい真田さんに戻ってる。


 さっきの雄叫びは、なんだったんだ……。


 そ、そんなことよりも布だ。


 拾い上げたピンクの布には、縫い目にタグがついてあった。外国語だから何を書いているかわからないけど、たぶん洗濯表記やサイズが書かれているアレだ。

 つまり人が着ていた服だってこと。


 生命の有無はわからないが、ここに落ちた人がいる。


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