188:混ぜるな危険。
「あぁー、打撃系の攻撃はワームと相性が悪いね」
「……だよな」
「でもボクがいるから大丈夫だ」
「……そうだな」
オーランドがひとこと喋るたび、モンスターが真っ二つになっていく。
そこにモンスターがいることすら気にも留めない様子で、かるーく剣を振っているだけ。
クソォ。なんでこんな強いんだよ。
あ、そういえば真田さん……。
冒険者グループと同行してたけど、どうしたのかな?
そう思った矢先だ。これがフラグって奴なのか。
左手側で、物凄い轟音がした。
「ん? トール・ハンマーの使い手がいるのかな?」
「オーランド、トール・ハンマーを知っているのか?」
「もちろんさ。高威力スキルだからね」
「オレのお師匠だぜ! お師匠ーっ」
ヴァイスがバッサバッサと羽ばたき、宙を舞う。
だいぶん飛ぶのが上手くなってきてるが、ヴァイスはホバリングのせいでおかしな飛び方をする。
垂直に上昇し、羽ばたいてるのにその場で静止している。
「師匠?」
と首を傾げるオーランドに、ヴァイスもトール・ハンマー持ちだと告げた。
「うちのギルドに――」
「娘はもちろんだけど、息子もやらーんっ!」
「oh……」
ブライトに抗議されたからって、残念そうな顔で俺を見るなって。
「あっ。師匠、こっち来てる。おい悟! 師匠と合流だ、合流っ」
「え? いや別に合流しなくても……まぁ来てるならいいけど」
「ヴァイスくんの師匠は、人間?」
おいオーランド。人間じゃなくって動物だったら、勧誘するつもりなのか。
いや、相手が人間だったら――。
「動物だったらどうする?」
「引き抜く」
「人間だったら?」
「いらない」
こいつ……基準がおかしいだろ!
「ど、どうも、三石さん」
「真田さん、お疲れ様です。トール・ハンマー、やっぱり凄いですね。音で気づきますよ」
「あ……は……派手ですから」
派手――と話す真田さんは、どこかうんざりした様子だ。
派手という言葉がまったく似合わない人だもんなぁ。
「オーランド。この人がヴァイスの師匠の――」
「ユキヤ・サナダ。日本にいる、もうひとりのダンジョンベビーだ」
「あら、オーランド知ってたの?」
サクラちゃんの言葉に、オーランドは小さく頷く。
知ってたのかよ、お前。
いや。アメリカでもトップレベルのギルドに所属しているんだ。有能な外国人も引き抜くために、そういった資料なんかもあったりするんだろう。
で、真田さんの方は「誰この人?」な顔をしている。
「真田さん、こいつはオーランド。アメリカ人。俺と同じ日生まれって言えば、わかるかな?」
「三石さんと……あ、そういうことですか。ど、どうも、初めまして」
「君はサクラちゃん派か? ヨーコさん派か――ぐふっ。何をする、悟」
「真田さん。こいつのことは気にしないでください。ただの動物バカなだけなんで」
「バカとはなんだバカとは。動物をこよなく愛しているだけだ」
――[ダメだこのランカー]
――[これでTOP5に入るんだろ? マジか]
――[こんなんがアメリカ最強の一角にいるのか]
――[強いんだよなー強いんだけどなー]
――[無駄に顔がいいだけに残念すぐるww]
――[そこがまたいい]
――[ギャップ萌えってヤツだよねぇ]
――[どうせ女は顔で選ぶんだろ!]
――[顔だけじゃない。お金持ちだし動物に優しいってことは人間性もいい]
――[そこにギャップ萌えが加わるハイ最強]
――[勝ち組過ぎて何もいえん]
――[でも人間の女に興味ないんでしょ?]
――[いやあぁーっそれ言っちゃダメ!!]
――[今、全女視聴者を敵にしたからね]
――[すみません勘弁してください]
オーランド……弄られキャラなのか。
「――ですよね」
「あぁ。変だね」
ん? 視聴者の声聞いてる間に、何か話していたのか?
ダメだ。集中できない。
「佐々木さん、いますか?」
『――はい。どうしたの、三石くん』
「すみません。視聴者側の音声オフにしてください。集中できなくって」
『あはは。だよね。曽我さんとか赤城さんたちも、とっくにオフにしてるわよ。重要な案件はこっちで伝達するわね』
「お願いします」
――[ええぇー!?]
――[悟くん、やだ。お話しようよー]
――[まぁこっちが騒げば、当然、捜索に集中できないよな]
――[聞こえてる? 聞こえてる悟くんっ]
――『捜索隊の者です。すみません、隊員が集中出来ないので音声はオフにさせていただきました』
――[えええぇぇ!?]
――[まーしゃーない]
――[人命が大事だしなぁ]
「オーランド、真田さん。どうしたんだ?」
「オーランドさんと話してたんですが、この砂漠、明らかに生息しているモンスターのレベルがおかしいんです」
「ここは地下二階だ。二階でこのレベルはあり得ない」
まぁそう思ってはいたけど。でも君ら、平気な顔してワンパンしてるじゃないか。
「そこで思ったんです。どこかに下層へ直行する穴が開いたんじゃないかって」
……穴?




