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はい、こちらダンジョン捜索隊~自分はレッサーパンダだと言い張る相棒の♀タヌキが、うっかり記録用録画を配信してしまった件。  作者: 夢・風魔
7章

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187/197

187:何しに来た。

 目の前で盛り上がった砂。そこから出てきたのは――。


――[うげっ]

――[ワームじゃん]

――[砂漠でワームとか最悪な組み合わせだろ]

――[つか二階で出てきていいモンスターなのか?]

――[デカいしネームドじゃね?]

――[悟くん、ワンパンだ!]


 大きな口を開き、真っ直ぐこっちへ突っ込んできた。

 何百本あるんだよっていう、鋭い牙が見える。

 あれに齧られたら、ひとたまりもないぞ。


 咄嗟に後ろへ跳躍し、サクラちゃんとヨーコさんを乗せた抱っこ紐のベルトを外した。

 

「ヨーコさんは妖狐に! サクラちゃんを乗せて硬い土の方に避難っ」

「わ、わかったたいっ」

「悟くんは!?」


 あれを倒さないと先に進めない。

 インパクトで倒す!


 俺を噛みつきそこねたワームが、一度砂に潜る。

 ぼこぼこと砂が弧を描くように移動し、再びこちらへやって来る。

 直前でまた砂からワームが出てくる。


 口を開け、俺を頭からすっぽり頬張ろうってことだろうな。

 でもな。それはサイドステップで躱せる!

 躱して、その横っ腹にインパクトを叩きこむ!


「っらぁぁぁぁーっ!」



――[いけぇー!]


 ぼすんっと、なんとも鈍い音がした。

 同時に、拳がめり込む。


 え?


――[え?]

――[利いてない?]

――[なんかぶるんぶるんしてね?]

――[もしかしてこれ、脂肪で打撃ダメージ吸収した?]


 し、脂肪?

 腕を引き抜いて一度下がる。


 し、脂肪……確かに弾力がある。いや、弾力しかない。

 え、打撃攻撃が利かない!?

 

「どうしたの悟くん?」

「利いてないんじゃない?」


 一度下がって考えることにした。


「僕がやってみようか?」

「ブライトのフェザーか。利くかな?」

「任せておきな!」






「あんな奴、倒さなくたって飛んでれば平気さ」


 ブライトのフェザーも効果がなかった。


「ツララも、パタパタする?」

「ツララも? パラライズかぁ」


 ツララの麻痺羽は直接的な攻撃じゃないけど……問題は魔力の羽が奴に刺さるかだ。

 ブライトのファザーも刺さらず、皮膚の表面でポロっと落ちたぐらいだし。


 まぁ本人がやる気なので、俺が抱える→ワームの突進を回避してツララを掲げる→ツララがパラライズ・フェザー。

 っていうのをやってみた。


 結果。


「ツララ、役に立てなかった……」

「ツララは頑張ったぞ。うん、偉いっ」

「そうよツララ。どんなことにも向き不向きがあるの。あいつは物理やそれに近い攻撃が利かないのよ」


 というスノゥの言葉は、モロに俺へと刺さる。

 ぶ、物理攻撃しかない……どうしよう。


「あっ」


 ん? ツララが何かに反応した。


「ツララ、バイバイちゅるの~」

「え、バイバイって――あ」


 チェンジか。

 ツララが消え、代わりにヴァイスと、そのヴァイスを抱えた男が現れた。


 金髪碧眼。やたらイケメンな、


「はあぁぁ? オーランド!?」

「Hi、悟」

「な、なんでお前がここに!?」

「なんで? 決まっているだろう」


 オーランドが歩いて来て、跪く。


「はじめまして、ヨーコさん。ボクはオーランド」


 そう言ってヨーコさんの手を取った。

 な、なんてキザな奴。


「な、なんなん、この人間?」

「ヨーコちゃん。彼がオーランドよ。久しぶりねぇ、どうしたのこんな所まで?」

「レディに挨拶をしに来たんだよ、サクラちゃん。冬毛でもふもふになった君は、更に魅力的になったね」

「やっだー、魅力的だなんて」


 ……キザだ。

 だがサクラちゃんに比べ、ヨーコさんの反応は少し違う。


「こういうのがチャラ男っていうんやね。けどウチ、人間の男には興味ないたい」

「チャ、チャラ男? ボクがチャラ男?」

「うちの今の推しは、北のきつね王国にいる銀ギツネのカツオくん。はぁ……カツオくん、かっこいいばい」


 誰、それ?

 いやオーランド、泣きそうな顔して俺を見るなよ。

 

「ボクが……ボクがカツオに負けるなんて」


 その時、オーランドの背後にある砂漠の砂が盛り上がった。


「オーランド、後ろ!」


 危ないぞ――と言おうとしたけど、無意味だった。

 

 オーランドを丸のみにしようと砂から飛び出してきたワームは、次の瞬間――オーランドが手にした剣によって真っ二つ。


 ……いいな、斬れるって。


――[アメリカ勢?]

――[救援?]

――[キツネにフられたアメリカランカー]


「ぶふっ」

「ん? なんで笑っているんだい、悟」

「いや、なんでもない」

「なんでもなくはないだろう」

「なんでもないって」


 なんか面倒くさい奴だ。


「で、なんでお前がここに?」


 まさか本当にヨーコさんに挨拶をするために来た?


 オーランドは倒したワームを見ている。

 それから振り返り、


「手伝いに来た」


 と、眉ひとつ動かさずに言った。



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